国際教育到達度評価学会(IEA)が平成15年(2003)に実施した国際数学・理科教育動向調査で、国際平均と比較して日本では「理科好き」な児童・生徒の割合が低いことが指摘された。こうした状況を背景に文部科学省は平成19年度より「理科支援員等配置事業」を開始している。
港区では、文科省の事業に先駆け、平成17年度から、独自予算で全区立小学校にサイエンス・アシスタント(SA)を派遣するなど、理科教育の環境を整備し、支援する理科教育支援事業を開始した。同年度の予算額は約2150万円であった。さらに、平成19年度からは、小学校理科支援員の巡回指導も開始した。
令和2年(2020)4月に開館した気象庁虎ノ門庁舎と港区立教育センターの複合ビルには、港区立みなと科学館も開設された。科学館にはプラネタリウムや、学校の授業では実施が難しい実験を行うことができる実験室・工作室など体験型の施設を設置し、理科の授業にも活用されている。
理科教育充実のために実施された主な支援事業は以下の通り。
■小学校サイエンス・アシスタントの配置
平成17年度(2005年度)より、全区立小学校に、理科の観察や実験の支援と理科室の整備を行うサイエンス・アシスタントの派遣を開始した。サイエンス・アシスタントは「小学校全科、中学校理科、高等学校理科のいずれかの教員免許状の取得者」「大学で自然科学にかかる単位を取得した人」「観察実験に関する知識・技能の知識を有し、熱意のある人」のいずれかに該当する人の中から採用し、勤務時間は1日6時間以内、週1回から3回程度である。
サイエンス・アシスタント配置の支援事業が開始された平成17年と翌18年、神応(しんのう)小学校は理科教育とIT活用教育で区研究パイロット校の指定を受け、研究を開始した。区立小学校の理科教育の現状を知るため、神応小学校は、平成18年に区立小学校教員を対象にアンケートを実施した。サイエンス・アシスタントの「よさ」についての質問には、「実験の準備」(36パーセント)、「実験の補助」(22パーセント)、「理科室準備」(22パーセント)などと回答があった。また、「専門的な知識を教えてくれる」「予備実験を行い、結果と傾向を示してくれた」などの回答もあった。
サイエンス・アシスタントの名称の経緯は第7節第1項(5)183ページ(通史編⑨)を参照。
■小学校理科支援員の巡回指導
平成19年度(2007年度)から、小学校教員の理科指導力を向上させ、理科教育を充実させるため、全区立小学校に理科支援員の配置を開始した。理科支援員には、理科教育の専門的な知識を持つ小学校の元校長らを採用する。支援員は全区立小学校を巡回し、観察・実験活動などについて教員やサイエンス・アシスタントに助言や指導を行う。
■理科実技研修会
平成19年度(2007年度)から、教員の理科指導力の向上のため理科実技研修会を開始した。理科実験・観察に関わる研修を年2回実施し、令和元年度現在も継続している。
関連資料:【図表および統計資料】学校教育 小学校サイエンス・アシスタント 配置日数と時間
関連資料:【図表および統計資料】学校教育 小学校理科支援員の巡回指導 配置日数と時間