二人担任制

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 平成17年(2005)に港区教育委員会が改定した教育目標は、基本方針で新たに少人数指導を重視した教育内容・指導方法の改善を掲げた。改定に先立ち、研究奨励校の指定を受けた芝小学校では、少人数指導を先取りしたさまざまな取り組みを開始した。
 平成13年度と14年度には、ブロック担任制や教育ボランティアを導入した。芝小学校は各学年1学級の小規模校である。ブロック担任制は、小規模校の利点を活用し、①2学年を1ブロックとして各ブロックに専科担当教員を配置し、②担任と専科担当教員が連携して指導に当たる制度であり、ティーム・ティーチング(TT)による授業、合同授業、交換授業などを試みた。各教員は、学習だけでなく、給食指導、生活指導、教育相談など、児童教育全般にわたり連携して教育・指導に当たった。
 芝小学校は平成16年度と17年度にも研究奨励校の指定を受け、区費講師6人が配置された。そこでブロック担任制を進展させた二人担任制を導入し、研究奨励「よく考える児童の育成―複数担当制を取り入れた指導の工夫―」を実施した。
 この研究は、正規採用の教員と区任用講師の二人が協力して学級運営に当たり、きめ細かな指導を実現するモデルケースとなった。平成16・17年度港区教育委員会指定「個に応じた指導重視型研究奨励校」研究紀要は「複数の教員によるきめ細かな指導を充実させることで、子どもたちは自分に適した方法で基礎・基本を確実に身に付けるとともに、学ぶ楽しさを感じ、意欲をもって学習する力が育った」と成果を総括した。

[図37] 二人担任制のポイント
出典:『研究紀要 よく考える児童の育成~二人担任制を取り入れた指導の工夫~』より作成


 芝小学校の研究成果を受け、平成18年度から全区立小学校の第1学年、在籍児童数20人以上の学級に区費講師を派遣し、二人担任制を導入した。
 
■各小学校の創意工夫(芝小学校の事例)
 ここで、授業時数削減による学力低下を防止するために、学校を「だれもがワクワクする学校」にしようと独自の工夫を行った芝小学校の「芝小プラン」を紹介する。
 芝小学校では平成13・14年度に区研究奨励校となり、「よく考える児童の育成~芝小プランの編成と工夫~」に取り組んでいる。芝小プランの特徴は、①教育課程の工夫、②授業改善の工夫、③評価の工夫を行い、学力向上のための仕組みを作ったことである[図38]。この研究において芝小学校では児童に対してきめ細かい指導ができる体制を整えていた。その下地をもって、平成16・17年度に「個に応じた指導重視型研究」で区研究奨励校の指定を受け、全学級に副担任を配置する「二人担任制」(後に複数担当制と改名)の実施に取り組んだのである。
 芝小学校ではすでに平成13年度(2001年度)からブロック担任制(2学年を1ブロックとして、教員の組織編成を行う芝小プランの一つ。従来の担任制のよさに加え、低・中・高学年のブロックに担任と専科教師を配置し、3~4人の教員が連携して指導に当たるスタイル)を採用していた。さらに、スクールサポーター(SS)や、学生や地域の人々による教育ボランティアなどを導入しており、個々への細かい指導に取り組んでいたといえる。それでもなお、ブロック担任は必ずしもすべての活動に関われるわけではなかったため、常時担任と副担任が指導に当たる「二人担任制」を取り入れたのである。

[図38] 芝小プランの内容

 

出典:『研究紀要 平成13・14年度港区教育委員会研究奨励校〈よく考える児童の育成〉-芝小プランの編成と工夫-芝小学校』より作成


 「芝小プラン」の中でも、二人担任制は独自の取り組みであり、成果として、すべての子どもたちに教員の十分な配慮が行き届くようになり、学級は誰もが自信を持って自分を表現できる場所となっていった。
 また、個に応じたきめ細かな指導を行ったことで、児童の「基礎・基本の定着と技能の向上において成長が認められ、また興味関心に応じた授業や多様な学習体験から学ぶ楽しさを感じ、学習意欲も高まったとの報告がある」(『平成16・17年度港区教育委員会指定〈個に応じた指導重視型研究奨励校〉研究紀要 よく考える児童の育成~二人担任制を取り入れた指導の工夫~』より)。
 
関連資料:【学校教育関連施設】