■家族構成と年収
平成28年(2016)に調査が行われた「港区保健福祉基礎調査報告書」によると、小学生のいる世帯では4人家族が45・6パーセントと最も多く、次いで3人家族が38・7パーセントとなっており、3~4人家族の家庭が84・3パーセントを占める。この内訳は、両親と子どもという構成がほとんどであり、小学生のいる家庭の大半が核家族化していることがうかがえる。
小学生保護者世帯全体の年収は1千万円以上2千万円未満が最も多い34・7パーセントを占め、次いで2千万円以上が17・9パーセント、750万円以上~1千万円未満が15・7パーセントとなっている。年収750万円以上が80・2パーセント(1千万円以上は64・5パーセント)と圧倒的多数を占めている。やや年度がずれるが、厚生労働省が平成21年に発表した、児童のいる世帯の平均年収745万9千円を大幅に上回っている。
■子育ての孤立
港区保健福祉基礎調査では、家族構成が3人(38・7パーセント)ないしは4人(45・6パーセント)の家庭が中心で、小学生本人から見た場合、その構成人員は両親ときょうだいである。祖父・祖母がいる家庭は2~4パーセントにすぎないため、ほとんどの世帯は核家族であると考えられる。
育児の主体は現在のところ母親が中心となっているが、核家族で父親が働きに出ている場合、ワンオペ育児を余儀なくされている母親も多い。「子育てに自信を持てないと感じることはありますか?」という同調査での小学生保護者世帯への設問に対して、平成25年(2013)は「よくある」が14・2パーセント、「時々ある」が49・2パーセントである。平成28年は「よくある」が14・3パーセント、「時々ある」が51・0パーセントに上っており、子育てについて悩みを抱えている人が半数を超えていることがわかる。
同調査には「子育てに関する悩みや不安をどなたに相談していますか」という設問があるが、平成28年の小学生の保護者からは「家族(配偶者、母親、父親、その他の家族・親戚)」が83・7パーセント、「友人・知人・職場の人」が66・7パーセントに上る一方で、「相談する相手がいない」という回答も1・6パーセント見られた。今後の推移に注目する必要がある。
また、平成28年の「港区子どもの未来応援施策基礎調査」では、①児童育成手当を受給しているひとり親家庭の保護者、②就学援助を受けている準要保護世帯の保護者、③子どものいる生活保護受給世帯の保護者(いずれも未就学児保護者)を対象にアンケートを実施している。ここでは、子どものことで困ったとき相談する人について、「誰もいない」と回答した保護者(小学生保護者、中学生保護者)が10・1パーセント、また、子どもを預けるような相手が「いない」保護者は59・1パーセントとなっている(いずれも有効回答数494)。周りに頼れる大人がいない保護者が多く、孤立している現状が垣間見える。
●家庭の貧困と子ども食堂
家庭の構成人員が3人の場合、相対的貧困層となる世帯年収は250万円未満となっている(※13)。港区では年間所得1千万円以上の富裕層が3分の2以上を占める一方で、年収50万円未満~250万円以下の世帯も11・3パーセントであり、必ずしも裕福な家庭ばかりではないことがわかる。
区は平成30年(2018)から子どもの孤食解消と保護者支援のために、民間事業者が展開する「子ども食堂」の支援事業を行っている。「子ども食堂」は、無料あるいは低料金で子どもに食事を提供する試みで、全国の自治体やNPO団体、民間事業者が運営する。
広尾のありすいきいきプラザで特定非営利活動法人「みなと子ども食堂」が毎月2回、水曜の午後に開催する他、令和元年(2019)9月、芝大門にも2カ所目を開所した。
いずれも、貧困のため食事ができないという子どもに対してばかりでなく、年収が高かったとしても両親が共働きの核家族のため、子どもが夕食を一人で食べる家庭に対する支援ともなっている。
関連資料:【文書】小学校教育 港区保健福祉基礎調査
関連資料:【文書】教育行政 港区子どもの未来応援施策の方向性について~すべての子どもたちが夢と希望を持って成長していける地域社会の実現を目指して~
関連資料:【文書】小学校教育 港区子どもの未来応援施策基礎調査 報告書