「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義される(文部科学省)。
平成13年度(2001年度)に文部科学省が調査したところ、小・中学校とも平成3年度から9年度まで「不登校児童生徒」の数は増加傾向にあり、平成13年度には13万8722人に上っていることがわかった。これは過去最高の数字であった。その後の調査では、平成24年度にかけては減少傾向となったが、近年再び急激な増加傾向を見せ、平成30年度では16万4528人となった。
この問題への取り組みとして、文部科学省では同年、不登校の問題把握と対応のためのパンフレット「不登校への対応について」を発行するなどの取り組みを始めている。
[図54] 不登校児童生徒の推移
出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」平成30年度より作成
(注1)調査対象:国公私立小・中学校(小学校には義務教育学校前期課程、中学校には義務教育学校後期課程および中等教育学校前期課程を含む)
(注2)年度間に連続または断続して30日以上欠席した児童・生徒のうち不登校を理由とする者について調査。不登校とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童・生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあるもの(ただし、病気や経済的理由によるものを除く)をいう
港区の小・中学生について見てみると、平成13年度以降、小学校では不登校が19件を超える年度が増えている。中学校では、平成16年度の69件をはじめ、50件を超える年度が増加していることがわかる。
平成19年第6回港区教育委員会定例会会議録によると、件数が増加したことに教育委員会指導室が危機感を持ち、各学校におけるサポート会議の実施、スクールカウンセラーや関係諸機関との連携などを密にするようになった。その成果として、平成18年度以降の中学校では、当面40件程度に抑えられたと報告されている。
[図55] 港区の小学校・中学校における不登校件数の推移
※港区教育委員会事務局作成
*平成12年度は不明
*「不登校」とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童・生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるもの(ただし、「病気」や「経済的理由」による者を除く)をいう
■不登校の防止・解消への取り組み
港区では、文部科学省の「児童生徒理解・教育支援シート」を活用し、学校で継続的な指導を行うとともに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、関係機関と連携した教育相談体制をつくっている。
教育センター内では、さまざまな教育課題に対する理解と認識を深め、校長や全教員の資質・識見の向上をねらいとして情報交換や協議を行っている。さらに、各学校(園)への啓発を図り、かつ学校教育全体の充実に資するため、8協議会、12研修会および委員会を設置しており、不登校に関しては平成3年(1991)から学校不適応研究室を設けて研究・議論を行うなど、不登校児童・生徒への対応に取り組んできた。
また、平成11年からは適応指導教室「つばさ教室」を開設し、心理的な要因などで登校することのできない児童・生徒の指導に当たっている。つばさ教室には専門のカウンセラーが配置され、教育センターと連携を取りながら児童・生徒の指導に当たる体制が取られている。一人ひとりの希望・要望に合わせた指導や支援を行うことで、長期間不登校を続けていた児童・生徒が復帰する例も見られるようになっている。
区では、いじめ、不登校、引きこもりなどのそれぞれが関連する教育課題の解決のために「いじめセーフティネットコミュニティ事業」を通し、各総合支所管理課、障害者福祉課、健康推進課、子ども家庭課、子ども家庭支援センター、人権・男女平等参画担当、指導室が連携しながら対応に取り組んでいる。