港区では「未来型教育環境の整備」の一環で、小学校、中学校各1校をモデル校として在校生全員にタブレット端末を配布するなど、ICTを取り入れた教育にも熱心に取り組んでいる。しかし、ICT教育が進むと情報通信機器類の使用が増えることになる。
内閣府が平成30年度(2018年度)に発表した「平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査」では、[図56]のように小学生の電子機器(スマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレットなど15機種)の利用率は平成26年度から29年度の間に84・2パーセントから86・3パーセントの間を移行しており、高い利用率を示している。
[図56] 全国の児童・生徒におけるICT機器の利用率推移
出典:内閣府「平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査」より作成
文部科学省が平成26年に発表した「学びのイノベーション事業実証研究報告書」では、ICTを用いた学習効果などについて調査しているが、同時に学校、教員がこれらの機器の利用により児童・生徒の健康面へ悪影響を与えるものとして懸念していることについても記されている。上位3位に挙がったのは「ドライアイ」「視力の低下」「姿勢の悪化」であった。
平成28年度「港区保健福祉基礎調査」では、小学4~6年生の児童へのアンケートの結果、携帯電話・スマートフォンやパソコンでインターネットをやったことがあるかという設問に対して、26・4パーセントが「ほぼ毎日やっている」と答えた。その内訳は「インターネットゲーム」が34・0パーセントと、「ホームページを見る」を超えて最多になっているが、メールのやり取り(22・0パーセント)やメッセージをやり取りするアプリの利用(13・0パーセント)もそれなりの数がある。また、電話やメールなどのやり取りが多い相手は「家族」が81・1パーセントで最多だが、次いで数が多いのは「学校の友達」の37・7パーセントであった。
トラブル発生についての明確な割合は出ていないが、総務省が配布している「インターネットトラブル事例集」によれば、小学生もメッセージアプリ内の会話による悪口や仲間外れ、自撮り写真の交換に端を発した脅迫被害、SNSやネットで知り合った人による性犯罪などに巻き込まれるケースがあることがわかる。
港区では、インターネットトラブルを未然に防ぐために、情報モラル教育の推進に取り組んでおり、年1回区立小・中学校で実施している「セーフティ教室」(後述)などを通し、子どもたちのネットリテラシーの向上を図っている。