中学校の再編

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■中学校再編の背景―私立志向
 第2節で既述した港区立小学校の統廃合・新設と同時期に、区立中学校の統廃合も行われた。背景には港区の定住人口の減少があるが、加えて、区民の私立中学校志向が区立中学校生徒数の減少の大きな要因となった。
 平成12年度(2000年度)から令和元年度(2019年度)までの、区在住小学校卒業者の区立中学校進学率の推移を[図1]に示した。参考のため、同時期の区在住者の区立小学校進学率の推移も同図内に示した。

[図1] 港区立中学校進学率と港区立小学校進学率
出典:『公立学校統計調査報告書(学校調査編)』『学校基本調査報告書』各年度版より作成

 

*港区内在住の6歳・12歳の子どものうち、区立小・中学校に在学している割合
*各年齢の人口(当年4月1日時点)を基準(分母)として算出した
*平成25年度以降は、住民基本台帳に外国人を含む


 
 平成12年度から17年度ごろまで55パーセント前後で推移していた区立中学校進学率は、平成18年度以降、下降傾向を示し、平成27年度以降、ほぼ40パーセントにまで落ち込んでいる。これは平成期に区在住小学生とその保護者の私立志向が一層強まったことを示している。
 港区在住の6歳児の区立小学校進学率にも同様の傾向が見られ、平成20年度ごろまでほぼ80パーセントを超えていた区立小学校進学率は、平成25年度以降70パーセント近くまで落ち込んでいる。
 
■中学校の統合・新設
 昭和62年(1987)に「港区立学校適正規模等審議会」が発足、平成元年(1989)12月に最終答申を提出した。
 答申が示した区立中学校の適正規模は第2節第1項に既述の通りである。
 港区教育委員会は審議会の答申に基づいて適正規模・適正配置の基準を設定し、区立中学校の再編や教育環境などの整備を進めた。
 平成期の統廃合により閉校となった中学校、統合・新設され開校した中学校は[図2]の通り。

[図2] 平成期に閉校、統合・新設された港区立中学校
出典:『港区の教育』各年度版より作成

 ●港陽中学校(現・お台場学園)
 平成8年(1996)4月、台場地域に新設。詳細は第2節第1項(1)102ページを参照。
 
 ●六本木中学校
 六本木中学校は、城南中学校と三河台中学校を統合し、平成10年(1998)4月に開校した。
 統合前の城南中学校、三河台中学校は両校とも生徒数の減少が深刻な状況にあった。三河台中学校は昭和後期には300人前後の生徒が在籍していたが、平成期に入り在籍者数が減少し、閉校時の在籍者数は51人にまで激減した。城南中学校も昭和37年(1962)には1127人だった在籍者数は閉校時には188人にまで減少していた。加えて、両校とも校舎の老朽化が激しかった。
 こうした状況から、教育委員会は平成7年に「城南中学校・三河台中学校関係者による委員会」を設置し、翌年10月開催の第6回委員会で両校の統合を了解した。また、同年中に「新中学校の敷地は城南中学校の跡地とする」「新校舎の落成までは三河台中学校の校舎を使用する」ことなどを、さらに、平成9年に新中学校の校名を六本木中学校とすること、校歌・校章は一般公募することなどを決定した。
 新校舎は平成12年に落成し、三河台中学校跡地には警視庁麻布警察署の新庁舎が建設された。
 六本木中学校は、23区内では初の試みとなった教科教室型を採用した。教科別に教室を設け、時間割に従って生徒が教室を移動するシステムである。また、始業や終業を告げるチャイムを廃止するノーチャイム制も導入した。ねらいは生徒の自主性の尊重にあった。
 しかし、教員の異動などにより、建学時の理念の継承が困難になったことなどから、平成24年度から、教科教室型は廃止された。
 
 ●三田中学校
 三田中学校は、芝浜中学校と港中学校を統合し、平成13年(2001)4月に開校した。
 芝浜中学校は各学年単学級で、統合前の平成10年度の生徒数は79人だった。港中学校は各学年2学級で生徒数は207人だったが、教育委員会が設定した小規模校の基準を保つことは難しい状況にあった。また、両校とも校舎の老朽化が進んでいた。
 こうした状況から、平成11年5月に「三田地区の教育環境を考える検討会」が「三田地区の小・中学校の教育環境の整備について(案)」を教育委員会に提出、翌月、教育委員会は検討会を母体とした「三田地区の教育環境を考える協議会」を設置し、平成12年10月開催の第4回協議会で、両校の統合を了解した。新校舎は港中学校の跡地に建設することとし、新校舎落成までは旧芝浜中学校校舎を使用した。
 芝浜中学校跡地は土地交換により東京電力の所有地となり、令和2年(2020)1月現在、高層ビルが建設中である。
 
 ●白金の丘中学校(白金の丘学園)
 朝日中学校は、三光小学校、神応(しんのう)小学校と統合し、小中一貫教育校白金の丘学園の中学校として平成27年(2015)に開校した。詳細は第2節第1項(1)104ページを参照。
 
関連資料:【文書】教育行政 麻布地区(城南・三河台中学校区)の教育環境整備について
関連資料:【文書】教育行政 三田地区の教育環境の整備について(芝浜中学校と港中学校の統合について)
関連資料:【学校教育関連施設】