ここでは、平成元年(1989)、平成10年、20年、30年に焦点を当てて、港区立中学校の資料に即して、学習指導要領の変化に区立中学校がどのように対応してきたのか、その傾向を整理する。
平成元年度告示の学習指導要領は、それまでの知識や技能の習得を重視する教育から、問題解決能力や思考力を重視し、個性を生かす教育の充実への転換を図った。
平成元年度から5年度までの各校の指導目標を概観すると、半数以上の学校が「基礎学力の充実を図る」「基礎学力を確実に身に付けさせる」「自ら学ぶ意欲や態度を育てる」を指導の重点とし、「一人ひとりの能力や適性に応じた指導を図る」といった生徒の個性を重視した教育を目標に掲げる学校は少なかった。
平成10年度も、平成元年度の学習指導要領改訂の趣旨を受け、基礎学力を身につけることや自ら学ぶ意欲を指導の重点にする学校が大半を占めた。一方で、「個に応じた指導方法の工夫・改善」「一人ひとりの能力や適性に応じた指導の充実」など、生徒の能力や個性、状況などに応じてきめ細かな指導を重視する学校も増えていった。
平成20年度は、平成10年度改訂の学習指導要領で「個性を生かす教育の充実」が求められたことを受け、半数以上の学校が「個に応じた指導方法の工夫・改善」と「基礎学力を確実に身に付ける」を指導の重点とし、個に応じた指導を多くの学校が意識していることがうかがえる。また、「指導体制や指導方法を工夫・改善し、個に応じたきめ細かな指導の充実に努める」ことも、半数近い学校で重要だとしている。
平成30年度では、次期学習指導要領の改訂に対応して「主体的・対話的で深い学び」「アクティブ・ラーニング」の充実を、ほとんどの学校が指導の重点に挙げた。また、「思考力・判断力・表現力を高める授業」も半数以上の学校が重点を置いている。