教科指導計画の工夫

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■ティーム・ティーチング(TT)
 TTの概要は第2節第3項(1)175ページ以降に記述した通りである。TT導入のため各区立小学校がさまざまな研究を実施したのと同様に、中学校でも研究が実施され、研究成果を踏まえ、TTは各校で導入されていった。
 平成4・5年度に区研究協力校に指定された青山中学校は、「意欲的に学ぶ生徒の育成を目指した指導のあり方」を主題とする研究の一環として、3年生の「選択数学」(選択教科については289ページを参照)でTTを実践した。また、平成7・8年度には区研究奨励校に指定された高陵中学校で、「自ら学ぶ意欲を育てる指導法の工夫」を主題とする研究の一環で、英語科で外国人講師とのTTを実践した。その他、平成9・10年度区研究奨励校の赤坂中学校が英語と社会、数学と技術の2教科協同授業を実施する中で、異教科間のTTを実践、平成10・11年度区研究奨励校の港南中学校が社会、音楽、美術でTTを、平成12・13年度区研究奨励校の六本木中学校が国語、数学、英語でTTを実践した。
 
■少人数指導
 少人数指導の概要は第2節第3項(1)177ページに記述した。小学校同様、中学校でも平成前期から文部省(当時)中学校教育課程研究指定校、東京都教育委員会人権尊重教育推進校、区研究協力校・区研究奨励校等での実践・研究の成果をもとに、少人数指導が港区立中学校各校で導入されていった。
 平成8年度(1996年度)から10年度に都教育委員会人権尊重教育推進校の指定を受けた高松中学校では、数学で基礎コースと応用コースを設置し、生徒の習熟度に応じたコース別学習の実践・研究を実施した。
 ●青山中学校の事例
 平成9・10年度の文部省中学校教育課程研究指定校と区研究奨励校の指定を受けた青山中学校は「『考える楽しさ・分かる喜び・生きる力のあふれた学校の創造』―生徒の創造性を育てる学習指導をめざして―」を主題とする研究で、TTや教科内コース選択学習を導入し、少人数指導を実践した。
 学期とは別に1年を育成期(4月から6月)、充実期(7月から11月)、定着期(12月から3月)に設定。各期間と各教科の特徴や必要に応じて、1クラス2教員、1クラス3教員、2クラス2教員、2クラス3教員などの方式で教員を配置し、教科によっては、習熟度別のコース別少人数指導を実施した。例えば、数学では、1年生の授業の一部でクラスを二つのグループに分割し、2教員で指導するスプリット型の授業形態を導入して少人数指導を行った。また、2・3年生の授業ではスプリット型に加え、生徒の希望で基礎コースと応用コースに分割する習熟度別指導も実施した。
 ●芝浜中学校の事例
 この他にも、少人数指導の研究は盛んに実施された。平成9・10年度都教育委員会「東京の教育21」研究推進校の芝浜中学校は、英語と数学でコース別指導を導入し、基礎と応用の習熟度別授業を実施した。
 ●三田中学校・御成門中学校の事例
 平成15・16年度区研究奨励校の三田中学校は、英語、数学、理科でコース別指導を導入し、習熟度別の少人数制授業を実施、平成16・17年度区研究奨励校の御成門中学校は数学と英語で習熟度別少人数指導を導入、理科ではクラスを単純に2分割した少人数指導を実施した。
 
■選択教科
 学習指導要領は、中学校の教育課程は必修教科と選択教科、道徳および特別活動で編成すると定めている。選択教科は、地域や学校の実態、生徒の特性などの事情を考慮して設けることになっている。選択教科の幅は時代により変化し、詰め込み教育との批判が高まった昭和後期には実技教科を対象としていたが、平成元年(1989)の学習指導要領改訂で、主要教科も選択教科の対象とすることができるようになった。
 選択教科の実施状況は各校でさまざまだが、少人数指導やコース別学習の時間として活用する事例も見られた。前述の高松中学校が選択教科でコース制・少人数指導を導入しているのは、その一例である。
 平成9・10年度の文部省中学校教育課程研究指定校、区研究奨励校の指定を受けた青山中学校は、先述したように生徒一人ひとりの個性を生かすこと、自ら意欲的に学ぶ力を育てること、課題解決力を育成することなどを目指して、生徒自身による選択教科を拡大した教育課程の編成を研究・実践している。
 研究では、選択教科を必修教科で培った基礎や生徒個人の特性や能力を深める場ととらえ、「課題解決的学習の繰り返しにより生徒の課題解決能力と創造性を育成していく」授業を実施することを基本とし、2年生のカリキュラムに週1時間、3年生は週2時間の選択教科を導入した。生徒は原則として希望する科目を履修できる。
 各選択教科の履修内容は、教科書を主体とした必修教科の授業とは異なり、工夫とバラエティに富んだ内容となっている。平成9・10年度の事例から、3年生の選択教科の履修内容の一部を紹介する。選択教科については、コース別学習の時間として活用する事例も見られた。
 
 国語 書くことに慣れよう、書くことを楽しもう
 社会 ディベート、模擬裁判をしてみよう。株式の模擬購入をしてみよう
 数学 数学的な作業をしてみよう。関数を考えよう
 理科 実験、観察から研究発表をしよう
 音楽(器楽コース) 作曲、演奏発表
 
■総合的な学習の時間
 「総合的な学習の時間」は、平成10年(1998)告示の学習指導要領で新設され、中学校では平成14年度から開始された。新設を受け、港区教育委員会は平成11年3月に小冊子『生きる力につながる「総合的な学習の時間」』を発行した。小冊子は、授業のテーマを例示したり、授業の留意点を示したりするなど、教員が総合的な学習の時間を具体的にイメージし、授業を設計・実践する助けとする目的で作成された。
 また、実施に先立ち、平成11・12年度には、御成門中学校と港陽中学校が区研究奨励校として、総合的な学習の時間の試行と位置づけた関連の研究を実施した。
 御成門中学校は、研究主題を「国際化社会の中で、主体的に生きていく力を持つ生徒の育成」、副主題を「様々な活動を通して、他者を認め、自己を肯定し、互いに高め合う生徒の育成」に設定し、第1学年は移動教室、第2学年は鎌倉校外学習、第3学年は修学旅行を核として、事前準備、体験、事後報告・発表の体験学習に取り組んだ。
 港陽中学校は、研究主題を「主体的に取り組む生徒の育成―総合的な学習の時間を通して」とした。総合的な学習の時間の前提は各教科の基礎基本の定着であるとの考えから、授業改善を図るとともに、試行として「探究」の時間を設定し、①パーカッション奏者を招いての即興演奏体験、②港東清掃事務所(現・みなとリサイクル清掃事務所)の職員を招いての講演「東京のゴミはどこへ」、③お台場のテレコムセンタービル見学、など地域人材を活用した体験学習を実施した。
 
関連資料:【文書】中学校教育 ティームティーチング(中学校各校の実施状況)(数学科授業記録 青山中学校 平5)
関連資料:【学校教育関連施設】