学校行事

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 平成20年(2008)改訂の学習指導要領によれば、学校行事は「全校又は学年を単位として、学校生活に秩序と変化を与え、学校生活の充実と発展に資する体験的な活動を行うこと」とある。
 学校行事には、①儀式的行事、②文化的行事、③健康安全・体育的行事、④旅行・集団宿泊的行事、⑤勤労生産・奉仕的行事、の5点が挙げられている。
 
■儀式的行事
 儀式的行事は「学校生活に有意義な変化や折り目を付け、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと」とされている。
 御成門中学校の学校要覧(令和元年度)を見ると、主な儀式的行事としては以下が挙げられる。
 4月 始業式、入学式、新入生歓迎会、離任式
 7月 終業式(12月も)
 9月 始業式、開校記念日
 11月 開校50周年式典
 1月 始業式
 3月 3年生を送る会、卒業式、修了式
 ほとんどの儀式的行事が4月と3月に集中しているのが見て取れる。他校でもほぼ同様である。
 学習指導要領第5章第3の3には「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」とある。なお、どの行事に取り入れるかについては各学校が「行事の意義を踏まえて判断するのが適当」としている。東京都教育委員会ではこれに関連して、オリンピック・パラリンピック教育としても国旗・国歌を取り上げている。
 
■文化的行事
 文化的行事は「平素の学習活動の成果を発表し、その向上の意欲を一層高めたり、文化や芸術に親しんだりするような活動を行うこと」である。
 御成門中学校では、「心の教育」の中の「自国文化の理解」として伝統音楽教室、能・狂言・落語教室、百人一首大会による生きる力の育成を挙げている。
 御成門中学校の主な文化的行事は以下の通り。
 7月 身近な街のコンサート
 10月 音楽交歓会、合唱コンクール
 11月 邦楽鑑賞教室
 12月 能狂言教室(2・3年)、落語教室(1年)
 その他の特徴的な例としては、高松中学校では1月に「席書会」(1・2年生)、10月には、二大行事の一つとしてクラス全員での「合唱コンクール」が行われている。三田中学校では「もちつき大会」や、生徒主体での「合唱コンクール」が行われている。六本木中学校では創立以来、コンサートとしての「合唱発表会」、百人一首大会などがある。高陵中学校では二大行事の一つとしての「学芸発表会」が10月に、1月には校内書き初め展がある。赤坂中学校も1月に「書き初め展」「百人一首大会」(1・2年生)があり、お台場学園港陽小・中学校では1~9年生揃っての「学芸発表会」や「百人一首大会」(5~9年生)と、「百人一首大会」を挙げている学校は多い。
 ●合唱コンクール・展示会
 文化的行事には合唱コンクールや展示会などがあり、合唱コンクールと展示会は平成期を通して実施された。
 『おなりもん』の記述を読むと、合唱コンクールが生徒たちにとってクラスの絆を深くする重要な行事であったことがうかがえる。
 展示会は、全校生徒の絵画や書道、技術科、家庭科などの作品を展示する他、華道、模型、美術などの文化クラブの部員の作品も展示された。
 ●音楽鑑賞教室
 昭和40年度(1965年度)より継続して実施している区主催の行事で、中学校3年生が年1回、交響楽団の演奏を鑑賞する。
 平成11年度(1999年度)までは、日比谷公会堂または東京国際フォーラムを会場としていたが、平成12年度からは、赤坂のサントリーホールで実施している。
 出演団体は東京交響楽団または東京フィルハーモニー交響楽団で、平成19年度以降は東京フィルハーモニー交響楽団の演奏を鑑賞している。プログラムは楽曲鑑賞、楽器解説などで構成され、ビゼーの歌劇・カルメンが演奏されることが多い。
 ●観劇教室(四季劇場)
 第2節第3項(2)191ページを参照。
 
■健康安全・体育的行事
 健康安全・体育的行事とは「心身の健全な発達や健康の保持増進などについての理解を深め、安全な行動や規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責任感や連帯感の涵養(かんよう)、体力の向上などに資するような活動を行うこと」である。港区では、生徒会行事の運動会、球技大会と、区立中学校連合体育大会や水泳記録会への参加がある。
 御成門中学校の主な健康安全・体育的行事は以下である。
 4月 身体測定
 5月 運動会
 8月 夏季水泳教室
 9月 区水泳記録会
 10月 区連合体育大会(2年)
 3月 ダンス教室(3年)
 御成門中学校では「体力の向上と心の充実」を図る上でも、運動会やダンス教室をはじめとする健康安全・体育的行事への積極的な取り組みが感じられる。東京慈恵会医科大学との連携による救命救急教室や、オリンピアン・パラリンピアンを招いてのスポーツ教室も行われている。
 他校でも、体育祭や運動会は大きな学校行事として捉えており、六本木中学校の運動会では「ムカデリレー」が新たな伝統として行われている。三田中学校では生徒が主体となって運営し、学年縦割りの活動として行っている。高松中学校でも上級生が下級生を教える縦割り活動により、応援合戦に華を咲かせている。お台場学園港陽小・中学校では幼小中合同大運動会(幼~9年生)や持久走大会(1~9年生)など、小中一貫教育校としての特徴ある体育的行事が行われている。
 
 ●連合体育大会
 港区教育委員会と港区教育研究会の共催で毎年10月に開催し、全区立中学校の2年生全員が一堂に会して競い合う。昭和39年(1964)の東京オリンピックなど多くの大会、試合が実施された旧国立競技場(正式名称=国立霞ヶ丘陸上競技場)で開催されてきたが、同競技場の閉鎖にともない、平成26年度(2014年度)からは、世田谷区の都立駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で開催している。
 競技は全員参加の100メートル走と選択種目で、全員が2種目に出場する。
 
 ●水泳記録会
 区主催で毎年9月、港区スポーツセンターで開催している。同センターの改修工事が行われていた平成10年度(1998年度)、および11年度は、高松中学校で開催した。
 各校の代表選手が全20種目でタイムを競う。実施種目は以下の通り。
 50メートル自由形(学年別、男女別)、50メートル平泳ぎ(女子は学年別、男子は1年のみ)、100メートル平泳ぎ(女子は共通、男子は2年と3年)、50メートル背泳ぎ(男女別、学年共通)、50メートルバタフライ(男子学年共通)、100メートル自由形(男女別、学年共通)、200メートルリレー(男女別、学年共通)。
 原則、各学校全種目出場としているが、小規模校では代表を選出できない種目もある。
 
 ●運動会
 『おなりもん』22号の生徒の記事からは、平成2年度(1990年度)の運動会の目玉種目は3年生のムカデ競争だったことがうかがえる。ムカデ競争は、平成12年度には全校の種目となり、それは平成が終わるまで続いた。『おなりもん』の運動会の記事では、多くの生徒がムカデ競争の思い出を語り、それによってクラスの団結力が強くなったと記述している。
 
■旅行・集団宿泊的行事
 旅行・集団宿泊的行事は「平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるような活動を行うこと」である。
 御成門中学校の主な旅行・集団宿泊的行事は以下である。
 5月 修学旅行(3年)
 6月 移動教室(1年)
 8月 夏季学園(2年)、海外派遣
 11月 PTA自然体験教室
 2月 校外学習(2年)
 3月 校外学習(3年)
 他校でも、旅行・集団宿泊的行事はおおむね同様に行われている。
 
 ●修学旅行
 旅行・集団的宿泊行事を代表するのが修学旅行である。港区では第3学年の春または秋に、2泊3日の日程で実施している。大半が新幹線の団体専用列車を利用している。平成前期には東北と関西が行き先を二分していたが、東北地方は現地でのバス移動の利便性が低いなどの理由から、次第に京都・奈良など関西の古都が主流となっていった。
 現地での活動も、平成前期には団体行動が大半だったが、徐々に班行動を取り入れる学校が増加し、現在では主流となっている。班行動は見学地の事前学習を前提とするため、より主体的で積極的な学習活動といった性質が色濃くなった。
 平成期を通し、御成門中学校の修学旅行の行き先は京都・奈良であり、旅程は2泊3日でいずれも変更はなかった。しかし、現地での行動は、全体行動中心から徐々に班別行動中心へと変遷している。
 平成2年度(1990年度)は1日目に京都で班別行動を行った他は、すべて観光バスでの全体行動だった。平成12年度は、1日目が全体での京都観光、2日目が奈良での班別行動と全体行動、3日目が京都でタクシーを利用しての班別行動と、班別の活動の時間が大幅に増加した。
 平成22年度には、班活動の時間がさらに増加し、全体活動は1日目の奈良観光だけとなり、2日目、3日目はいずれも京都での班別の活動となった。そして、平成29年度の修学旅行では、全体行動は姿を消し、3日間とも班別で行動している。この年の『おなりもん』49号には、修学旅行の記事に、生徒の一人が「『自治・自由・自己管理』。この三つが修学旅行の目標だった」と記している。
 
 ●移動教室
 第1学年全員参加の3泊4日の学校行事。1学期から2学期にかけ、各校順番に実施する。平成14年度(2002年度)までは、小諸高原学園で実施し、登山、ハイキング、飯ごう炊飯、農業・林業実習体験などの活動を行っていた。
 平成15年度から26年度は長野県南牧村(みなみまきむら)野辺山の民間宿泊施設、平成27年度以降は、同県八ヶ岳周辺の民間宿泊施設も加えて実施している。
 また、「小諸長期移動教室」として、昭和56年度(1981年度)から平成9年度まで、希望する小学校が参加し、1週間から10日間の日程で実施していた移動教室がある。参加希望校が少なく、かつ参加校が固定化されたため、参加しない学校との公平性などに鑑み、平成9年度を最後に終了した。
 
 ●夏季学園
 第2学年の夏休みの恒例行事として、3泊4日の日程で実施。原則自由参加だが、大半の生徒が参加している。
 平成14年度(2002年度)までは、各校順次、小諸高原学園で実施し、東篭ノ登山(ひがしかごのとやま)、八島湿原でのハイキングなどを取り入れ、生徒らは宿泊訓練を楽しんだ。敷地内に体育館を新設した平成4年度以降は、1・2年生の部活動合宿を夏季学園という形で実施した中学校もあった。
 小諸高原学園閉園後は、各校で実施場所を選択することとなり、新潟県の上越市、十日町市周辺の農家や群馬県の尾瀬ヶ原周辺の民間宿泊施設を利用して実施している。
 なお、平成19年度は、同年7月に発生した新潟県中越沖地震の影響により、新潟県での実施は中止とされ、群馬県の尾瀬ヶ原周辺を予定していた3校のみの実施となった。
 夏季学園では多くの学校が、農家での宿泊体験を取り入れている。生徒を3人前後のグループに分け、受け入れ農家で一日、農家の仕事や生活を体験する。
 
■勤労生産・奉仕的行事
 勤労生産・奉仕的行事は「勤労の尊さや創造することの喜びを体得し、職場体験などの職業や進路にかかわる啓発的な体験が得られるようにするとともに、共に助け合って生きることの喜びを体得し、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるような活動を行うこと」とされる。
 平成10年(1998)告示の学習指導要領では、特別活動においてボランティア活動などの体験的な活動機会をできるだけ取り入れる旨の記述が盛り込まれ、平成13年からは、中央教育審議会生涯学習分科会でボランティア活動の義務化について議論が繰り返された。
 平成14年7月の中央教育審議会答申「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」によれば、ボランティアであれ、奉仕活動であれ、「自分の時間を提供し、対価を目的とせず、自分を含め地域や社会のために役立つ活動」として幅広く考え、無理なく定着させていく必要があるとした。
 御成門中学校が掲げる「心の教育」の多くは、勤労生産・奉仕的行事に相当すると考えられる。「心の教育」のねらいとして「人権尊重教育の充実と思いやりの心の育成」を挙げ、「いじめや学校生活全体に関する生活アンケートの実施」「いじめ防止に関するパネルディスカッションの実施」などを推進している。あいさつ運動、募金活動、校内美化といった「自治活動の促進」もこれに含まれると言ってよい。この他、「中学生による小学校での学習支援」「ボランティア清掃(2年)」「職場体験学習(2年)」などの活動も挙げられる。
 御成門中学校は、都教育委員会の平成28年度オリンピック・パラリンピック教育重点校に指定され、「ボランティアマインドの醸成」に取り組んだ。位置づけとしては特別活動だけでなく「総合的な学習の時間」にも関わるが、お台場学園港陽中学校も同様に「防災Jr.ティーム活動」で教育重点校に指定されている。その後、御成門中学校は平成29・30年度・令和元年度にわたり、オリンピック・パラリンピック教育アワード校の顕彰を受けている。防災Jr.ティームについては第3節第4項(2)350ページを参照。
 港南中学校では「運河学習」と称し、東京海洋大学教授・院生の協力を得て運河をきれいにする課題解決学習が開催されている。高松中学校では「美化ボランティア」が学年ごとに時期を分けて行われている。白金の丘学園白金の丘中学校では8年生による「伝統わらじづくり」が夏季学園で実施され、お台場学園港陽小・中学校は、公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団が主催する「東京ベイ・クリーンアップ大作戦」に参加している。
 
関連資料:【文書】中学校教育 夏季学園(小諸高原学園)
関連資料:【学校教育関連施設】