部活動は戦前から実施されており、その歴史は古い。学習指導要領は、教科以外の特別活動として、学級活動、生徒会活動、学校行事、クラブ活動を位置づけているが、ここでいうクラブ活動は、授業時間に実施される課内活動であり、学習指導要領には長きにわたり部活動の記述はなかった。
部活動が最初に学習指導要領で位置づけられたのは、平成元年(1989)改訂であった。「部活動への参加によりクラブ活動を履修した場合と同様の成果があると認められるときは、部活動への参加をもってクラブ活動の一部又は全部の履修に替えることができる」との記述がある。これにより、生徒が部活動に入っていれば、クラブ活動の授業を実施しなくてもよいこととなり、さらに平成10年の学習指導要領改訂では、クラブ活動の記述は姿を消した。
平成20年改訂の学習指導要領では、部活動は「教育課程外」として改めて位置づけられた。「生きる力」を育む観点から、「部活動については、(中略)学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること(後略)」との記述により、部活動がより明確に位置づけられた。この点、平成29年改訂時も大きな変更はない。
■生徒の参加状況
[図4]に平成13年度(2001年度)から開始された「港区保健福祉基礎調査」のデータをもとに、港区在住の中学生の部活動参加率の推移を示した。また、昭和後期に区立中学校の在校生を対象に実施された「港区子ども生活実態調査」によると、当時の中学校生徒の部活動参加率は6割台である。平成期には、港区在住の中学校学齢期の半数前後は私立中学校など、区立以外の学校に在籍しているため、単純な比較はできないが、平成13年には81・5パーセント、平成22年には78・9パーセント、平成28年には85・5パーセントとなっている。数字上は参加率は増加傾向にあるように見えるが、実態は必ずしもそうではないと推察される。なお、参考までに全国のデータを[図5]に示した。
[図4] 部活動参加率の推移(港区在住)
出典:『港区保健福祉基礎調査報告書』平成23、29年より作成
[図5] 部活動参加率の推移(全国)
出典:NHK放送文化研究所『NHK中学生・高校生の生活と意識調査2012』NHK出版(2013年)より作成
港区在住中学生の部活動参加者の活動状況の推移を[図6]に示した。平成13年の調査では、週1~2日の回答が43パーセントと最も多くなっている。平成22年、平成28年の調査では、週3~4日の回答が週1~2日の回答を逆転し、多数を占めるようになったが、週1~2日の回答も3割前後を占めている。
[図6] 部活動状況の推移(港区在住)
出典:『港区保健福祉基礎調査報告書』平成23、29年より作成
各校が毎年発行する学校要覧を見ると、平成元年にはほとんどの学校が「クラブ活動」と「部活動」を区別して双方の活動を記載しているのに対し、平成7年前後からは区別せずに「クラブ・部活動」と統合して記載する要覧が大半を占めるようになった。実際、区立中学校においては、クラブ活動は特別活動の一つで必修・正課(いわゆる「必修クラブ」)であり、部活動は課外活動であるが、「部活動への参加をもってクラブ活動の履修に替えることができる」と記されている(※1)。さらに、平成10年ごろからは、「クラブ・部活動」と表記する学校と「部活動」と表記する学校が混在するようになり、平成14年ごろには「クラブ・部活動」の記載はほぼ姿を消し、「部活動」だけの活動状況が紹介されている。
クラブ活動が部活動に吸収または衣替えしたことにより、生徒の参加を義務づけた学校もあった。平成13年以降の調査で部活動参加率が上昇しているのは、そのような背景があり、必ずしも昭和後期や平成前期よりも部活動に参加する生徒が増加したとはいえないと考えられる。
■開設部活動数と活動状況
平成元年学習指導要領改訂前の平成元年度(1989年度)と、学校要覧に「部活動」と「クラブ活動」を統合し、「クラブ・部活動」の表記が多数を占めるようになった平成7年、学校要覧から「クラブ・部活動」の表記がほぼ消え「部活動」の表記が一般的となった平成14年、さらに平成20年改訂の学習指導要領が実施された平成24年の開設部活動の種類の推移を、港中学校(平成14年度からは三田中学校)、朝日中学校、城南中学校(平成14年度からは六本木中学校)、高陵中学校、赤坂中学校の5校の学校要覧から概観する。
[図7]に前記5校の部活動開設数の推移を示した。開設数は平成元年の学習指導要領改訂後には増加傾向を示し、学校要覧記載上も実際の活動においても、部活動とクラブ活動が統合されていった時期に当たる平成7年から、部活動とクラブ活動がほぼ統合された平成14年までの間にピークを迎え、その後、徐々にその数を減らしている(※2)。
[図7] 港区立中学校5校の部活動開設数の推移
出典:各校『学校要覧』各年度版より作成
■外部指導員、部活動指導員の活用
平成30年(2018)にスポーツ庁は「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を、文化庁は「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定した。両庁のガイドラインに則り、東京都も部活動に関する方針を示している。
これを受け、港区は、平成31年3月に「港区立学校部活動ガイドライン」を策定した。適切な運営のための体制を整備するとともに、児童・生徒が過度な部活動により疲労、負担を感じず、学業にも取り組めることを目指し、週当たり2日以上の休養日を設定すること、また平日の活動時間は2時間以内(週休日、祝日、長期期間中は3時間以内)などと規定した。
また、教員が部活動に過度の負担を感じることなく活動するための取り組みとして、文部科学省は平成29年4月に「部活動指導員」の制度を施行している。これにより、地域の専門家らが部活動外部指導員として、教員と連携・協力しながら指導に携わることができるようになった。
部活動指導員の制度の創設を受け、平成30年度より全区立中学校で部活動指導員による指導が導入された。実技指導、部活動の管理運営(会計管理など)、学校外での活動(大会・練習試合など)の引率など、さまざまな役割を担っている。平成30年度の部活動指導員数は全校合計35人で、運動系はバスケットボール部、サッカー部、ソフトテニス部、文化・芸術系は吹奏楽部への配置が多い。
部活動は多くの生徒が所属し、生徒の自主的、自発的な活動として大きな成果を上げている一方で、学校の小規模化などに伴い、各校の開設部活動数が制約されたり、当該種目が専門ではない教員が顧問になったりする課題もある。そこで、港区立中学校PTA連合会は、平成27年度に区立中学校全生徒を対象に部活動アンケートを実施し、報告書『生徒の部活動に対する意識』を発行した。アンケート調査結果の概要は、[図8]の通りである。
[図8] 生徒の部活動に対する意識
出典:港区立中学校PTA連合会『港区立中学校部活動アンケート報告』平成27年度より作成
関連資料:【文書】中学校教育 区立中学校クラブ・部活動の状況(平成5年度~6年度)
関連資料:【文書】中学校教育 港区立中学校部活動アンケート報告~生徒の部活動にたいする意識~
関連資料:【文書】中学校教育 港区立学校部活動ガイドライン