区研究奨励校等における研究内容の変遷

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 区研究奨励校などの研究の意義・目的は、第2節第3項(3)195ページに記述した通りである。ここでは同様に、学習指導要領や港区教育委員会の教育目標の改訂・改定を踏まえつつ、平成期を便宜的に前期、中期、後期に大まかに区分し、その期間に実施された研究奨励校や研究協力校の研究主題の変遷を辿(たど)る。
 
■平成前期(平成元年~10年ごろ)
 平成元年(1989)改訂の学習指導要領が重視したのは、「豊かな心」「自ら学ぶ意欲」「個性を生かす教育」などであった。平成前期には、こうした要請に応える指導法の研究が盛んに実施された。また、パソコンの普及に伴い、中学校で最適な情報教育を実施するため、コンピュータの教育への利用の研究が行われた。それぞれの研究は[図9]の通り。

[図9] 区研究奨励校等における研究(平成前期)
出典:『港区の教育』各年度版より作成

 


 ●情報教育研究
 コンピュータ導入黎明期に実施された高陵中学校の研究では、教科別にパソコンを効果的に利用する授業を実践した。例えば、国語科ではワープロソフトを活用した漢字の読みの学習やデータベースを活用した歴史的仮名遣いの学習を試みた。また、社会科では市販の学習ソフトを活用する授業を試みている。ソフトの「問題モード」を活用すれば、生徒一人ひとりが画面の問題に解答することができ、一方的な講義になりがちな授業に双方向性が加わったことで、「授業にアクセントをつける意味でも、効果をあげている」(研究奨励指定校研究発表冊子)と成果を報告している。
 高陵中学校の研究から5年後に実施された港中学校の研究では、より進化したコンピュータを利用した教育の実践を試みた。
 例えば、国語科では詩の鑑賞の課題で、コンピュータの通信機能を活用して、匿名での感想のやり取りを試みた。生徒はパソコンの操作を学ぶとともに、誰のものかわからない感想を読むことで、先入観を排してさまざまな考えに触れ、自身の考えを深めることができた。
 また、理科では天体の学習にコンピュータソフトを活用し、月の満ち欠けや日食、月食、星や太陽の動きを調べるなど、さまざまな場面でパソコンを活用し、技術科では、グラフィック機能と文字入力機能を使ってカレンダーの制作などに取り組んだ。
 
■平成中期(平成10年ごろ~20年ごろ)
 平成10年(1998)に告示された学習指導要領は、平成元年告示の改訂を踏襲し、「豊かな人間性」「基礎・基本」「個性」「自ら学び自ら考える力」を重視しつつ、それらを新たに「生きる力」と位置づけた。改訂を受け、平成中期には、前期に引き続き「個性」や「自ら学ぶ力」を主題とする研究が多く見られた。また、「基礎・基本」の指導の研究や、新しい試みとして、小学校同様にコミュニケーション能力の涵養(かんよう)の研究や総合的な学習の時間の創設を見据えた研究も行われた。それぞれの研究は[図10]の通り。

[図10] 区研究奨励校等における研究(平成中期)
出典:『港区の教育』各年度版より作成

 
■平成後期(平成20年ごろ~31年まで)
 平成20年(2008)の学習指導要領改訂では、改善事項に「言語活動の充実」「理数教育の充実」「伝統や文化に関する教育の充実」「道徳教育の充実」「体験活動の充実」「外国語教育の充実」が挙げられた。平成後期には、改善事項のうち「言語活動の充実」に関連する研究が多く実施された。
 また、港区においても平成18年度から、国の構造改革特区制度を活用して「国際人育成を目指す教育特区」を実現するために、英語科国際の授業を新設するなどの施策で英語教育に注力する方針を打ち出し、外国語教育や国際理解教育の研究が行われた。また、平成19年度の港区教育委員会教育目標基本方針に「キャリア教育の充実」が新たに盛り込まれ、キャリア教育に関する研究が盛んに実施された。加えて、平成22年度に小中一貫教育校お台場学園が開校、平成27年度には小中一貫教育校白金の丘学園が開校したことに関連し、その前後に小中一貫教育に関する研究も行われた。それぞれの研究は[図11]の通り。

[図11] 区研究奨励校等における研究(平成後期)
出典:『港区の教育』各年度版より作成

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関連資料:【文書】教育行政 東京都港区教育委員会の教育目標(平成17~23年度)
関連資料:【文書】教育行政 港区教育委員会の教育目標(平成24~27年度)
関連資料:【文書】小学校教育 コンピュータによる教育
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