家庭・地域での生活

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■学習時間
 区立中学校生徒の、学校以外での学習時間の推移を[図22]に示した。昭和58年度(1983年度)の調査では、「ほとんどしない」の選択肢はないため、「ほとんどしない」生徒も含まれると推察される「30分」と回答した生徒の割合は13・1パーセントであった。それに対し、平成14年度(2002年度)の調査では、「ほとんどしない」と「30分」を合わせた生徒の割合は37・6パーセントにまで増え、平成18年度には多少減少したとはいえ29・7パーセントで、3割近くの中学生が学校以外ではほとんど勉強していないことになる。
 中学生の学校以外での学習時間で最も多かったのは、昭和58年度は2時間だったが、平成18年度は1時間となった。このように、昭和後期に比べ、平成期の中学生の学校外での学習時間は顕著に減少した。

[図22] 港区立中学校生徒の学校以外の学習時間
出典:『港区子ども生活実態調査報告書』平成18年より作成

 これは港区だけの特徴ではなく、全国的に見られる傾向である。[図23]に、NHK放送文化研究所の調査によるデータを示した。学校以外でほとんど学習しない生徒の割合は昭和57年の10・3パーセントから平成14年には16・6パーセントに増加する一方、3時間以上(3時間、4時間、5時間以上の合計)勉強する生徒の割合は昭和57年の24・8パーセントから平成14年には11・7パーセントに減少している。

[図23] 全国中学校生徒の学校以外の学習時間
出典:NHK放送文化研究所『NHK中学生・高校生の生活と意識調査2012』NHK出版(2013年)より作成

 データからは、中学生の学習時間に影響を与える大きな環境の変化があったのは、平成4年から平成14年の間であると推察される。この間には、平成10年に学習指導要領が改訂され、平成14年度から学習内容を3割削減する「ゆとり教育」が開始された。同時に、学校週5日制もスタートした。
 中学生が勉強しなくなった要因は、「ゆとり教育」だけではない。NHK放送文化研究所は、その理由について興味深い分析を提示している。
 同研究所の調査では、子どもに大学・大学院への進学を望む保護者は平成14年の調査までは増加していたが、その後は横ばいとなっている。また、学歴社会が今後も続くと考える保護者の割合は同年以降減少し、「一生懸命勉強すれば将来よい暮らしができるようになる」と思う保護者の割合は「思わない」割合を大きく下回っている。
 そうした調査結果を踏まえ、同研究所は中学生の学習時間が減少したのは「勉強に束縛されなくなった」からだと分析し、「有名大学から大企業のサラリーマンという価値観が崩れ、親も勉強しろとうるさく言わなくなっている。スポーツや趣味に打ち込んでいて、将来の夢も自分なりに持っている(※3)」と指摘している。
 
■テレビの視聴時間
 区立中学校生徒の1日のテレビ視聴時間を[図24]に示した。昭和58年(1983)の調査では5時間以上(5時間と5時間以上の合計)テレビを見るとした回答は9・7パーセントだったが、平成14年(2002)には29・9パーセントで約20ポイント増加した。前述の通り、学校以外での生徒の学習時間は同じ期間に大幅に減少しており、学習時間の減少がテレビの視聴時間の増加に影響していると推察される。
 区立中学校生徒を調査対象としたデータは平成18年で途絶えているが、平成24年までの調査があるNHK放送文化研究所のデータを見ると、1日4時間以上(4時間ぐらいと5時間以上の合計)テレビを視聴する中学生の割合は、平成14年と比して大幅に減少した[図25]。テレビ視聴時間の多くがゲーム機やパソコン、スマートフォンを利用する時間に代わったと推察される。

[図24] 港区立中学校生徒のテレビの視聴時間
出典:『港区子ども生活実態調査報告書』平成18年より作成


[図25] 全国中学校生徒のテレビの視聴時間
出典:NHK放送文化研究所『NHK中学生・高校生の生活と意識調査2012』NHK出版(2013年)より作成

 
■起床時間・就寝時間
 区立中学校生徒の平均的な起床時間は午前7時ごろであり、昭和後期と平成期を比較しても相違は見られない。[図26]に就寝時間の変化を示した。
 昭和58年(1983)の調査では午後11時から午前0時に就寝する生徒の割合が最も高く、平成14年(2002)の調査でも同様に午後11時から午前0時に就寝する生徒が最多となり、さらに、午前0時過ぎに就寝するという回答が大きく増加した。つまり、平成期は昭和期と比して、中学生の就寝時間がやや遅くなっていることがわかる。起床時間に大きな変化はないことや平成18年調査の「決まっていない」が14・3パーセントに達していることからも、睡眠時間自体が不規則になっていることは容易に推察できる。
 なお、平成18年調査で「決まっていない」の選択肢が増えたため、数字を単純に比較することはできない。

[図26]港区立中学校生徒の就寝時間
出典:『港区子ども生活実態調査報告書』平成18年より作成

 

*平成18年調査「決まっていない」は「無回答など」に含む
*昭和58年調査のみ時間の階級設定が異なるため、平成18年調査の基準に揃えた


 
■携帯電話・スマートフォンなど情報機器の利用
 平成19年度(2007年度)、内閣府「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、中学生の情報通信機器の所有率は、平成19年度の46・8パーセントから、平成28年度には91・9パーセントに上昇した。同年度のスマートフォン所有率は42・7パーセントである。
 港区子ども生活実態調査によると、区立中学校生徒の携帯電話所有率は平成18年度には73・0パーセントで、港区保健福祉基礎調査によると、区在住中学生の平成28年度の所有率は88・7パーセントとなっている。港区の中学生の情報機器の所有率は、全国平均に先んじて上昇していたことがわかる。
 平成28年度港区保健福祉基礎調査は、中学生の情報機器の使用状況も調査している(複数回答)。インターネットでどういったことをしているかを聞いたところ、「メールのやりとり」が59・5パーセント、「ホームページの閲覧」が55・7パーセント、「メッセージをやりとりするアプリの利用」が56・4パーセントだった。また、所有者の73・5パーセントが「毎日やっている」と回答した。

[図27] 港区在住中学2年生のゲーム機などの所有率(平成25年)

 

出典:港区政策創造研究所(港区企画経営部)『港区における子どもと子育て家庭の生活と意識に関する調査報告書』平成26年



[図28] 港区在住中学2年生のテレビやゲームを見る(する)時間(平成25年)

 

出典:港区政策創造研究所(港区企画経営部)『港区における子どもと子育て家庭の生活と意識に関する調査報告書』平成26年


 
■放課後や休日
 区立中学校に通う生徒の平日の放課後の過ごし方と休日の過ごし方についての調査結果(平成14年度、17年度港区子ども生活実態調査)を[図29]に示した。両年度では若干の相違が見られるが、平日の帰宅後は「テレビを見る」「ファミコンなどのゲームをする」「音楽を聴く」「学習塾に行く」が上位を占めている。
 休日の過ごし方では、「外で遊ぶ」が上位に加わる他は、帰宅後の過ごし方と大きな相違は見られない。

[図29] 港区立中学校生徒の放課後と休日の過ごし方
出典:『港区子ども生活実態調査報告書』平成18年より作成

 

*平成17年度では三つ以上回答したものは「不明・無回答」とした。平成14年度の「その他」は非聴取


 
■地域活動への参加
 中学生は、学校の部活動の他に各種スポーツ大会やスポーツ教室などの地域活動に参加し、活動している。
 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団(Kissポート財団)では、ジュニアスポーツ大会として小・中学生サッカー大会や小・中学生野球大会などの公式試合を開催し、他チームとの交流を図っている。この他、中学生が対象に含まれているものとして、「お台場海浜マラソン」やKissポートボウリング大会などがある。また、同財団はお台場海浜公園で海浜や海底の清掃を行う「東京ベイ・クリーンアップ大作戦」を行っており、お台場学園港陽小・中学校の児童・生徒も参加している。
 一般財団法人港区体育協会では、中学生などのジュニア層に向けた活動を行っている。「スポーツ少年団の育成」では、春季・秋季野球大会をはじめ、相撲大会、なぎなた大会、空手道大会などを実施している。「ジュニア育成地域推進事業」としては、区内におけるジュニアスポーツの普及とジュニア選手の発掘・育成・強化を目的とした「ジュニア育成」事業と、全国トップレベルの指導者により、技術力の向上や戦術を習得する「強化練習」、さらに他校との交流を深める「大会」がある。東日本大震災の被災地となった岩手県をはじめとする他県との「スポーツ交流」事業も積極的に行っている。
 平成19年度(2007年度)からは、港区総合型地域スポーツ・文化クラブ設立準備委員会設置要綱に基づき、世代を超えて多種目のスポーツや文化・芸術活動を楽しむ「スポーカル」(総合型地域スポーツ・文化クラブ)が設置された。六本木中学校の他、高松中学校を拠点とした各中学校通学区域の小・中学校が活動場所となっており、多世代でスポーツに親しむ地域コミュニティの役割も果たしている。スポーカルでは、テニス、バドミントン、サッカー、太極拳、ソフトボール、卓球などのクラブが活動している。
 平成28年度に実施した「港区保健福祉基礎調査」によると、平成28年度にこれらスポーツ少年団などの地域活動に参加した経験があると回答した中学生は12・4パーセントだった。
 
■学習塾など
 区立中学校の生徒が1週間に学習塾や習い事に行く日数について、港区子ども生活実態調査のデータを示した[図30]。

[図30] 港区立中学校生徒の学習塾や習い事に行く日数
出典:『港区子ども生活実態調査報告書』平成18年より作成

 

*昭和58年度の調査の5日、6日、7日は5日以上と集計
*昭和58年度、平成14年度調査では学習塾に加え、習い事と合わせて通っている日数を聴取している


 昭和58年度(1983年度)と比較して平成14年度(2002年度)は、学習塾や習い事に「行っていない」とする生徒の割合が増え、平成18年度では減少に転じている。また、週1日通っている子どもの割合は、昭和58年度の15・5パーセントから平成18年度の3・5パーセントへと減少している。
 さらに平成13年から調査を開始し、区民から無作為抽出した世帯を調査対象とした港区保健福祉基礎調査をもとに、中学生の学習塾や習い事に通っている割合のおおむね3年ごとの推移を見ると、上昇傾向が続いている[図31]。

[図31] 港区在住の中学生の通塾率の推移
出典:『港区保健福祉基礎調査報告書』平成23年、29年より作成

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