平成6年(1994)にスペインのサラマンカで開催された「特別なニーズ教育に関する世界会議」において「サラマンカ宣言」が採択された。
障害のある子どもを含むすべての子どもが教育を受ける権利を有しており、その一人ひとりの特性や関心、能力およびニーズを考慮して教育計画が立案され、実施されるべきであるとして、すべての子どもの教育を受ける権利と教育的ニーズに対するアプローチの改善の方向が確認された。この国際的な動向の影響を受け、日本では従来行われてきた特殊教育が、インクルージョンの理念に基づいて見直されることとなった。
その先駆けの一つとして、平成10年12月の新しい小学校学習指導要領および中学校学習指導要領の総則の中に、障害のある生徒の実態に応じた指導として、特殊学級および通級による指導が記載された。平成11年3月には、「盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校小学部・中学部学習指導要領」に「個別の指導計画」を作成する基本的な方針が出された。
平成13年には「21世紀の特殊教育の在り方について~一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について~(最終報告)」が発表され、個々の特別なニーズに応じたきめ細かな支援を行うための基本的な方針が示された。この報告の中で、従来の特殊教育の中では対象とされてこなかった、学習障害児(LD)や注意欠陥多動性障害児(ADHD)、高機能自閉症児ら、特別な支援を必要とする児童・生徒にも支援を充実させるべきことが明示された。
平成15年3月には、文部科学省の特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議から「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」が出され、障害の種別や程度に応じて特別な場での指導を行う従来の「特殊教育」から、発達障害も含めた障害のある児童・生徒の個々の教育的ニーズに応じた適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換が図られることとなった。