通級による指導とは、小・中学校の通常の学級に在籍している軽度の障害のある児童・生徒に対して、各教科等の指導を通常の学級で行いながら、当該児童・生徒の障害に応じた特別の指導を行う教育形態である。
対象となる児童・生徒は学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)によって定められ、心身の障害の程度が比較的軽度な児童・生徒とされていた。児童・生徒は週1回程度、在籍校から通級指導学級のある学校に赴き、それぞれの障害に応じた学習を行う。
平成期に入るまで、通級指導は教育課程上の位置づけや対象児童・生徒の障害の種類や程度、指導内容や方法が明確にされていなかった。ただし、従来の学級編制基準にも当てはめにくい状況もあり、こうした問題の解決が求められていた。
平成2年(1990)に文部省(当時)が「通級問題に関する調査研究」の取り組みを開始した。研究協力者会議の「通級による指導に関する充実方策について(審議のまとめ)」の中で、いわゆる「学習障害児(LD)」の問題が重要な課題となっており、それには「通級」による指導が効果的との指摘があることを明らかにしている。
平成5年1月、学校教育法施行規則の一部が改正され、第73条の21が加わった。これにより、対象となる児童・生徒は言語障害者、情緒障害者、弱視者、難聴者、その他心身に故障のある者で、特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの、とされた。ここにはまだ「学習障害」の文字は見られない。
平成18年、「通級による指導の対象とすることが適当な自閉症者、情緒障害者、学習障害者又は注意欠陥多動性障害者に該当する児童生徒について」(同年3月通知)により、「通級による指導の対象となる者として、学習障害者及び注意欠陥多動性障害者を加え、これらに該当する児童生徒についても通級による指導を行うことができることとする」ことが示された。指導を実施する場合、LDまたはADHDのある児童・生徒であっても通級による指導が必ずしも必要とは限らないことや、通級指導が児童・生徒の負担となる可能性を踏まえる必要があるとしている(※3)。
平成19年12月、学校教育法施行規則の改正により、条文番号旧第73条の21が第140条となった。対象となる児童・生徒は言語障害者、自閉症者、情緒障害者、弱視者、難聴者、学習障害者、注意欠陥多動性障害者、その他の障害のある者で、特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの、であると規定された(特別支援学級の児童・生徒を除く)。