●廃止の経緯
伊豆健康学園(港区立)は、区立小学校に在籍する3~6年生の中で、病弱・虚弱のため教育上、生活指導上特別な配慮を必要とする児童を対象とした全寮制の施設として、昭和54年(1979)に開園した。昭和55年度(1980年度)は66人、昭和56年度には70人と多くの児童が入園していたが、その後、入園児童は減少し、平成に入ってから入園児童がおおむね10人台で推移していた。
こうしたことから、教育委員会は、伊豆健康学園の小規模化に対応するため、平成10年(1998)に「健康学園検討会」を設置した。検討会は、伊豆健康学園に関する諸課題、今後のあり方について検討し、平成10年12月に「健康学園検討会報告」としてまとめた。
健康学園検討会報告をもとに、教育委員会は、他区、とりわけ中央区および新宿区との間で伊豆健康学園の共同運営・事務委託について協議を続けた。しかしながら、費用負担の問題や煩雑な事務処理、さらには協議相手の区が伊豆健康学園の役割は終了したと判断していることなどから、実現は困難であるとの結論に達した。
平成12年度は、伊豆健康学園の入園児童数は年度当初が10人、7月時点では7人とさらに減少し、学園が小規模化したことに伴い、児童の人間関係の固定化や切磋琢磨する機会の減少など、一定の集団規模があることによって期待できる教育効果が見込めないといった問題が生じた。
一方で、過去に転地療養が有効であった喘息(ぜんそく)等は、医療技術の進歩などにより必ずしも気候や自然環境に恵まれた郊外での療養を必要としなくなるなど、社会情勢も変化した。加えて、港区から遠隔の地にある学園への入園は、保護者と児童の関係を疎遠にする一因ともなる他、少子化に伴い、一人っ子が珍しくない家庭状況などから、学園への入園希望者が減少する傾向にあった。
こうした背景のもと、教育委員会は、施設的な対応が必要な児童に対して、東京都と密接に連携し、調整するとともに、病弱・虚弱児童に対する就学相談を充実させ、都立養護学校への入学指導を進めるなどの支援策を決定した。それらを踏まえ、施設の役割を終えた伊豆健康学園を平成12年度末(平成13年3月31日)に廃止した。
●施設の現況・活用
伊豆健康学園は、平成12年度(2000年度)末の廃止に伴い、施設の活用を図るため、さまざまな検討会で議題に上っている。
平成15年度から、旧伊豆健康学園を活用した高齢者施設整備に関する検討会が開かれ、特別養護老人ホームなどについて検討したが、区民が住み慣れた場所から遠距離で生活することになることなどを理由として、高齢者福祉施設には適さないという結論に至った。
また、平成19年4月の学識経験者、公募区民らで組織された港区土地活用方針検討委員会の報告書には、定期借地権方式を採用し、保養施設を主たる機能とした民間事業者による事業運営が有効な活用策として提言された。
その後、庁内の会議において、保養施設について協議を重ねたが、別に新たな区民保養施設を整備していることなどから必要性は低いと判断した。
平成23年に伊東市から高齢者施設整備用地としての取得要望があったため、協議を開始したが、最終的に伊東市から取得、借り受けを断念する旨の通知があった。令和元年度(2019年度)現在、活用方針については検討中のままである。
関連資料:【図表および統計資料】学校教育 沼津養護学園・伊豆健康学園の入園人数
関連資料:【図表および統計資料】学校教育 伊豆健康学園の入園理由別人数