●3・11当時の対応
平成23年(2011)3月11日に発生した東日本大震災の地震と津波の影響により、福島第一原子力発電所で電源喪失とそれに伴う炉心溶融(メルトダウン)が発生し、放射性物質が放出される事故が起きた。放射性物質の拡散および土壌沈着状況は、風向きおよび降水が影響し、福島第一原子力発電所から同じ距離でも放射線量は大きく異なり、関東地方にも影響を及ぼした。
こうしたことから、当時は、区民の中には不安を感じ、転居する人も現れた。また、幼稚園や学校の教育活動に対しても、幼児・児童・生徒の安全面に配慮するよう保護者や区民から意見が寄せられた。具体的には、「園庭や校庭の放射線量は大丈夫なのか」「給食の食材の産地を知らせてほしい」などである。
特に、幼稚園では、幼児が季節を感じるとともに、植物を育てることを目的として野菜栽培を行っている。原発事故以前は、幼児の諸感覚を育むため幼稚園でそれらを食す活動も実施していたが、保護者の意見により、一時取りやめる園もあった。
●放射線量の測定と公表
区は、福島第一原子力発電所事故以来、放射能・放射線問題を中長期的な課題としてとらえ、港区放射能・放射線対策対応方針(平成24年3月策定、平成29年4月改定)に基づき、子どもたちの安全・安心をより確かなものとし、保護者をはじめとする区民の不安を少しでも解消できるよう放射能・放射線対策に取り組んできた。
区は、子どもの安全・安心をより確かなものとするために、平成23年(2011)6月から区立保育園や幼稚園、小・中学校、公園・児童遊園などの砂場での放射能・放射線量の測定を行った。また、同年11月からは、各施設の園庭や校庭、植え込みなどの放射線量について順次測定をし、測定結果を区ホームページで公表した。この取り組みは、測定結果で特に異常な数値が検出されなかったこと、また、保護者や区民の不安が一定程度解消されたことから平成29年度に終了している。
また、学校給食においては、平成23年度から、区立小・中学校の給食・牛乳の放射能測定を実施し、結果を区ホームページで公表するとともに、食材の産地公表を行った。なお、私立幼稚園・小学校についても、設置者の了解が得られれば、給食・牛乳の放射能測定を実施していた。
6年間にわたる取り組みの中で、放射能・放射線測定数値は、いずれも基準値を大幅に下回り安定的に推移していることが確認されたため、給食・牛乳の放射能測定についても平成29年度で終了した。