■学校教育中心の考え方からの脱却

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 教育は、人生の早い時期にだけ受けられるものでも、学校という限られた場所だけで受けられるものでもない。科学技術の発展などにより加速度的に変化する社会に適応するためには、より統合的な視点で考えるべきだという生涯教育の考え方が示されたのは、昭和40年(1965)、ユネスコの成人教育に関する会議でのことであった。
 日本では、昭和46年に社会教育審議会が示した答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」の中で、生涯教育の観点に立った社会教育行政の役割が示された。これを受け、社会教育行政を中心に生涯教育への関心が高まった。
 生涯教育という考え方は、学歴偏重の社会を改めるという文脈でも注目されていた。昭和56年に中央教育審議会が示した答申「生涯教育について」では、人生の初期に得た学歴に対する過度な評価がさまざまなひずみを生んでいることが問題視されている。この答申では、学歴偏重という傾向を改める上でも、人々が自発的意思に基づいて生涯学習に正面から向き合うためにも、学校教育を含めた教育制度全体が、生涯教育の観点で打ち立てられるべきであると強調された。