平成期の生涯学習振興の先駆けとなったのは、昭和56年(1981)に出された「マイタウン東京'81東京都総合実施計画」、および昭和57年8月に東京都社会教育委員の会議(第15期)が提出した助言「ともに生きるための生涯学習をめざして」であった。これらの文書において、生涯教育・生涯学習がテーマに据えられた。
これらの動きを背景に、東京都は昭和58年7月に東京都生涯教育推進懇談会を設置した。懇談会は、「東京都における生涯教育の推進について、広い視野から検討し、長期的展望に立った提言を得る」ため、知事の諮問機関として設置されたものであった。この懇談会は、「東京における生涯教育の推進について:学習社会の形成を目指して」(昭和59年)や、「東京都における生涯教育推進のための学校教育:21世紀への学校教育」(昭和61年)という報告書を提出し、東京都の生涯教育を推進する方向を示した。
さらに、東京都生涯教育推進懇談会の報告(昭和59年10月)を受け、東京都は昭和60年1月に都知事を本部長とする「東京都生涯教育推進本部」を設置する。所掌事項は、「生涯教育施策に係る基本方針の策定」と「生涯教育に係る諸施策の協議、推進」であり、全庁的な生涯学習推進の体制が整えられていった。この組織のもと、都知事のリーダーシップの下で生涯教育施策が強力に推進されることになる。
また、教育庁の組織改正も行われ、平成2年(1990)8月には社会教育部が生涯学習部に改組された。さらに、平成4年には東京都生涯学習審議会が設置された。この審議会の建議を受け、平成10年度から3年間にわたり、環境、高齢社会、子どもの三つのテーマに関して「研究開発プロジェクト事業」が展開された。主な活動は、教育庁(東京都では教育委員会事務局を「教育庁」と称している)を中心とした、都庁内の生涯学習に関係する多様な機関によるネットワークづくりと学習プログラム開発であり、この二つを並行して進めていった。