しかし、バブル経済が崩壊すると、都政でも行政施策全体の再構築が求められ、それまでの生涯学習振興施策が停滞し、施策の新たな方向性を模索する時期を迎えた。平成11年(1999)から平成12年にかけて財政再建のための計画が立て続けに打ち出されると、都の生涯学習振興施策・社会教育行政施策の早急な再構築と施策・事業等の見直しが進められた。平成13年度末までに、東京都生涯学習センターの廃止をはじめ、都民カレッジの事業終了、青年の家や東京都近代文学博物館の閉館が行われ、東京文化会館、東京芸術劇場、東京都美術館、東京都現代美術館が生活文化局に移管された。
生涯学習推進計画が大幅に見直され、またそれまで教育庁が所管していた文化振興行政が生活文化局に移管されることで、東京都教育委員会の役割も新たに模索された。都教育委員会は、生涯学習審議会審の答申を受けつつ、学校・家庭・地域の連携・協働と、学校教育を基本軸にした社会教育行政の展開を目指すこととなった。平成17年に提出された、第5期東京都生涯学習審議会答申では、これからの都教育委員会が実施する施策の方向性を「学校・家庭・地域が協働するしくみづくり」として設定した。答申は、子ども・若者を中心に据えた社会教育施策の方向性を提示し、「家庭教育支援施策」、「学校教育支援施策」、「学校外教育(支援)施策」の3方向から実施することを提言した。さらに、地域を舞台に学校・家庭・地域の教育力を再構築する取り組みを進めるため、①「地域教育プラットフォーム」の構想、②区市町村教育委員会レベルにおける「地域教育総合計画」の策定、③都レベルでの「東京都地域教育推進ネットワーク協議会」の設置とモデル事業の実施、を提案した。
都教育委員会は、答申の内容を平成17年度から「地域教育連携推進事業」として具体化し、平成17年度の東京都の重点事業に位置づけて展開していった。社会教育行政は、学校教育制度を支援・補完するものとして、企業やNPO等の社会資源のネットワークを通じて、子ども・若者の育ちを支えるという固有の役割を新たに担うようになった(※1)。
関連資料:【文書】教育行政 港区生涯学習推進計画 学びのあるまち・いきるまち 港区プラン[平成12年3月刊]