昭和63年度(1988年度)の『港区の教育』では、成人教育の課題が「情報化社会を生きるための情報処理能力」「高齢化・国際化社会に適応するための人間関係調整能力」「変化の時代を主体的に生きる自己決定能力」などと説明されている。この説明にあるように、平成期の成人教育の展開には、情報化・高齢化・国際化という社会の変化に対応した学習課題の設定が求められていた。
港区では、昭和期より続いていた「成人学級」「高齢者大学」「婦人学級」といった事業を平成期にも継続して実施している。それぞれの事業は、「成人セミナー」や「さくらだ学校」「女性セミナー」と社会の状況に合わせて名称を変え、また内容や運営方法についても、時代に即した内容にしたり、企画を区民参加で行うなど工夫を加えながら展開した。
生涯学習振興の流れの中で、区の家庭教育支援は、それまで中心的な役割を担っていた社会教育行政だけでなく、区長部局においても行われるようになった。平成18年度(2006年度)の区役所・支所改革を経て、それまで教育委員会事務局の生涯学習推進課が担っていた事業は子ども支援部、さらに子ども家庭支援部子ども家庭課に所管を移し、区の子ども家庭支援センターとも役割分担をしながら、各地域の実情に対応した内容で展開するようになった。
区では、成人対象の社会教育事業を実施する際に、参加者からなる企画運営委員会を設置して、区民が事業の企画段階から参加できる仕組みをつくってきた。婦人学級や高齢者教室(寿大学)では事業参加者が、事業終了後にも自主的な事業を展開する様子が見られ、社会教育行政は、そうした自主講座の支援を積極的に行ってきた。平成29年に開始した「みなと学びの循環事業(まなマルシェ)」では、学びを通して社会に参加したい人や、自らの学びの成果を生かしたい人が集い、人と人とがつながる学びの循環の仕組みをつくるなど、世代を超えたつながり・生きがいを創出し、地域での居場所づくりや地域コミュニティの活性化を図る事業も積極的に行われた。
関連資料:【図表および統計資料】生涯学習 成人セミナー・生涯学習センター講座実績一覧