区では、昭和39年(1964)6月に、「家庭教育学級」を開設して、家庭教育の支援を行ってきた。この家庭教育学級は、区役所・支所改革が行われた平成18年度(2006年度)に教育委員会事務局生涯学習推進課の所管から区長部局の子ども支援部子ども課(平成22年度以降、子ども家庭支援部子ども家庭課)に移り、平成22年度からは事業名を「わくわく子育てセミナー」へと変更した。その後、平成25年度には、子ども家庭課および、区の子ども家庭支援センターにおける類似事業の整理により、子ども家庭支援センターの事業として引き継がれた。この事業整理においては、育児系の事業については子ども家庭支援センターが、青少年系の事業は子ども家庭課が所管するという方針がとられた。
家庭教育学級は、事業開始後、主に「幼児コース」「小学生コース」「中学生コース」の3コースに分けて実施してきた。その後、参加者のニーズおよび参加状況などを踏まえ、平成2年度には、「小学生コース」を「小学校低学年コース」「小学校高学年・中学生コース」に、平成8年度には「小学校低学年」「小学校高学年・中学生コース」を「小学生・中学生コース」へと合併した。さらに平成11年度には、幼児期を中心に「乳・幼児コース」「0~1歳半コース」「1~2歳コース」「2~5歳コース」として実施するようになった。
平成15年度に入ると、区民企画スタッフによる企画講座を行うなど、PTAが企画運営する「家庭教育学級(自主)」とは別に、区の家庭教育学級の運営にも区民が参加できるような仕組みをつくった。平成17年度には、ビジネスマンを対象に、「ビジネスマンだからできる子育てを10倍楽しむ法」といった夜間コースの事業を行うなど、より多くの保護者が参加できるような工夫をした。
平成30年度の時点では、みなと保健所の健康推進課地域保健係や区の男女平等参画センターなどによる子育て関係の事業が行われるなど、生涯学習行政以外の行政部局による家庭教育支援の動きが見られる。
●家庭教育学級(自主)
家庭教育学級(自主)は、区立幼稚園、小・中学校の各PTA、社会教育関係団体に登録している子育てグループなどが、家庭教育に関するテーマについて学習する際、「港区家庭教育学級(自主)実施要領」に基づいて、教育委員会が講師謝礼金を負担する事業である。
家庭教育学級(自主)の実施中は、参加者に集中して講義を受講してもらうために、保育スタッフを配置(一時保育)するなどの配慮を行っている。
講座内容としては、褒め方・叱り方、遊びに関すること、食育、子どもの成長を伸ばす方法など、さまざまな視点から保護者が家庭教育について考え、知識を深めて実践につなげられる内容となっている。実施件数の推移および平成29年度(2017年度)の講座内容は[図8][図9]の通りである。
[図8] 家庭教育学級(自主)実施件数の推移
出典:『港区の教育』各年度版より作成
[図9] 平成29年度家庭教育学級(自主)の講座内容
※港区教育委員会事務局作成
●家庭教育相談
家庭教育学級に参加できない区民にも対応できるように、港区では、昭和48年度(1973年度)から家庭教育相談を実施してきた。
主な事業に、①はがきによる情報発信(区内全保護者向けの「かもめ通信」や「あじさい通信」により、家庭教育に対する情報を発信し、保護者からの相談を受ける)、②港区の区報への家庭教育情報の連載、③はがきの執筆者を講師として招いた講演会の実施(かもめ通信のスクーリングとして、区内の親子が実際に集まる機会を設けた)など、多様な方法で展開された。
「かもめ通信」は、当初、発達段階で重要な時期とされていた3歳児を育てる保護者向けのはがきによる情報提供事業であった。昭和62年度からは、保護者へ知ってもらうべき情報を提供するため、2歳児を育てる保護者向けへと変更。新たに4歳児を育てる保護者向けに「あじさい通信」の発送を開始した。「あじさい通信」は、平成14年度(2002年度)をもって終了した。その他の事業についても、平成18年の区役所・支所改革により、現子ども家庭課への事務移管後、情報通信技術の発展などに伴い終了した。その後、「わくわく子育て通信」として、「ぴよぴよ通信」(0歳児向け)、「さくらんぼ通信」(1歳児向け)、「かもめ通信」(2歳児向け)、「おひさま通信」(3歳児向け)を発行し、ホームページに掲載していたが、平成27年度をもって終了した。
港区の区報には、「家庭教育を考える」をテーマにした偶数月連載により、家庭教育情報を提供した。そこでは、子どもの発達や保護者の関わり方などについての情報を取り上げた。
昭和60年度には、それまで「家庭教育学級」の一環として行っていた「しつけ相談」を事業として独立させるなど、各家庭の実情に即した、より細やかな支援のための試みも行われた。
関連資料:【学校教育関連施設】