いちょう学級という名称は、学級が置かれていた城南中学校に植えられていた大銀杏にちなんで、昭和57年につけられた呼称である。昭和59年には、いちょう学級以外の青年セミナーが廃止されたが、いちょう学級については、平成30年度(2 0 1 8年度)時点でも継続して実施している。
昭和41年度の第5青年学級開設時は「生活教養、ペン習字、英語、手芸、レクリエーション、家庭工作」が中心だったが、いちょう学級と命名された昭和57年ごろからは「仲間づくり、日常生活のマナー、スポーツ、レクリエーション等」となり、青年セミナーが廃止された昭和59年ごろからは、「趣味やレクリエーション」が主な活動内容となっていった。また、府中青年の家での宿泊研修や、五日市青年の家での「リーダー教室」受講生との合同宿泊研修が行われ、平成2年には「雪と親しむ会」として、軽井沢でのスキー教室も実施された(※18)。
[図23] いちょう学級変遷図
『いちょう学級30周年記念誌』より作成
社会教育課の担当者一同は、「いちょう学級」への思いを次のように記している。
いちょう学級の運営については、私たちも毎回手さぐりの状態で仕事をしているのが実情です。月に1回か2回のいちょう学級ですが、役所で仕事をしている日も、家で休んでいる日も、頭からいちょう学級のことが離れる日はありません。(中略)「余暇時代」と言われ、「健常者」の目から見るとさまざまなレジャーの機会が提供されているように見えます。しかし、「家族のことば」で何人かのお母さんが書いていらっしゃるように、知的障害者の休日の過ごし方の現状を考えると、まだまだ、いちょう学級のように行政が果たさなければならない役割は大きいようです。(中略)スタッフがプログラムを考えて学級生に与えるのではなく、学級生自身が休日の楽しみ方を探すためにスタッフがお手伝いをするような関係になれば理想的だと思います。
「いちょう学級」は平成18年度の区役所・支所改革に伴い、区長部局に移管され、障害者福祉課障害者福祉係の所管事業となり、平成25年度からは民間への事業委託が行われている。
平成30年度の「いちょう学級」は、15歳以上の区内在住・在勤者で、会場まで一人で通うことができる知的障害者を対象にしており、「知的障害者が、学習、スポーツ、レクリエーション等を通じて、社会参加への適応力を高めるとともに、仲間作りの場とすることにより、豊かな人間形成向上に寄与する」ことを目的に、土曜日または日曜日を中心として、年に13回程度の活動を行っている。
活動内容は、[図24]の通りだが、スポーツ活動や調理実習などに加え、地域との交流や宿泊研修などを主な活動内容としている。その他、受講生による自主企画もある。
[図24] いちょう学級プログラム(平成30年度)
※港区教育委員会事務局作成
[図25] いちょう学級参加者数の推移
出典:『港区の教育』『港区の保健福祉』各年度版より作成