国のスポーツ政策は、平成期に大きな変化を迎えた。平成元年(1989)の保健体育審議会答申、平成9年の保健体育審議会答申などは、いずれも「生涯スポーツ」を本格的に取り上げ、生涯スポーツ社会実現の必要性を指摘するものであった。
平成12年9月、スポーツ振興に関わる国家計画として「スポーツ振興基本計画」が文部大臣(当時)告示として策定された。同基本計画は生涯スポーツ、競技スポーツ、学校体育・スポーツの三つから構成されており、生涯スポーツについては「生涯スポーツ社会の実現に向けた、地域におけるスポーツ環境の整備充実」として、総合型地域スポーツクラブの設置など、具体的な政策目標を示した。
平成23年8月、スポーツ振興法が50年ぶりに全部改正され、新たに「スポーツ基本法」(平成23年法律第78号)が施行された。同基本法はスポーツに関する基本理念を定めるとともに、スポーツ基本計画、スポーツ推進のための条件や環境の整備などの基本的施策、スポーツ推進にかかる体制の整備について定めた。
スポーツは、(中略)国民が生涯にわたりあらゆる機会とあらゆる場所において、自主的かつ自律的にその適性及び健康状態に応じて行うことができるようにすることを旨として、推進されなければならない。
スポーツ基本法 第2条 基本理念
こうして、啓発的な性格を持っていたかつての「社会体育」は、生涯学習振興の一環としての「生涯スポーツ」へと転換していった。こうした変化の前景化が平成期の大きな動きであった。