■年齢の異なる子どもたちへの多角的な対応

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●児童図書・ヤングアダルト図書の所蔵の充実
 港区立図書館はオフィス街に位置するものが多く、児童ら低年齢層の図書館利用がなかなか進まなかった。みなと図書館に設置されていた児童コーナーの存在もほとんど知られていない状況だった。そこで、平成期に入ってから、区立図書館は全館を挙げ、児童ならびにヤングアダルトコーナーの充実に取り組んでいった。平成3年度(1992年度)には麻布図書館内におはなし会の部屋(ピーターのおへや)を、平成6年度には、みなと図書館にヤングアダルトコーナーを設置した。
 全区立図書館の児童コーナーには、児童のみが利用できるオンライン百科事典ポプラディアネットを設置した。港区や東京都に関する図書もあり、子どもたちの学習に役立てられている。こうした努力により、児童図書の所蔵数は、統計を取り始めた平成3年度と比べて、平成28年度は約3.4倍となった(紙芝居は約3倍)。
 中学生・高校生を対象としたヤングアダルトコーナーには、主に読み物・知識の本・外国語の読み物・外国語の知識の本が置かれている。ヤングアダルトコーナーを平成23年度から開催している中高生懇談会の議題とし、中学生・高校生の声を反映した図書館運営を行っている。
 ヤングアダルトコーナーの蔵書数は、ヤングアダルトの所蔵数の統計を取り始めた平成16年度と比較すると、約3.5倍となった。平成23年12月の高輪図書館分室の開設も、ヤングアダルトの蔵書が増加した理由の一つである。
 また、児童およびヤングアダルトコーナーでは、季節などのテーマで定期的に特設コーナーを作るなど、利用する児童・生徒がより本に親しめるような工夫がなされている。
 こうした取り組みと、年齢に応じた推薦図書紹介冊子の配布、中高生懇談会をはじめとする学校図書館運営の支援、外国語の絵本や児童書の充実、さらには駐日大使館やボランティアと連携した地域の特色を生かした取り組みが評価され、平成29年度子どもの読書活動優秀実践図書館として、みなと図書館が文部科学大臣表彰を受けた。
 
●子どもの読書活動推進
 港区では、未就学児に対する読書推進活動にも取り組んでいる。
 「ブックスタート」は、赤ちゃんの心健やかな成長を願い、読み聞かせの喜びと大切さを伝えるため、親子に絵本を手渡す事業で、平成17年度(2005年度)から実施されている。港区に居住する1歳の誕生日までの乳児が対象で、区立図書館全6館と高輪図書館分室で月1回程度、また、みなと保健所で開催する赤ちゃんと保護者の集い「うさちゃんくらぶ」でも実施されている。また、各図書館では推薦本のブックリスト「えほんがいっぱい」も配布している。
 プレママおはなし会は、妊婦およびその家族を対象に、平成24年度に開始され、現在はみなと図書館(偶数月)、麻布図書館(奇数月)で開催されている。絵本の読み聞かせが行われ、子ども向け絵本や出産、育児に関する書籍の紹介に加え、関連本100冊を掲載したブックリストも配布されている。
 「みなと子ども読書まつり」は、区立図書館全館事業として、子どもの読書活動を推進するために、平成25年から年1回実施されている。第1回から第5回までは、区内1カ所で開催していたが、平成30年度の第6回からは、子どもの読書週間を含む1カ月間に区立図書館各館、高輪図書館分室の7カ所で開催した。乳幼児から小学生の子どもを対象としており、おはなし会、英語のおはなし会、語り部による民話・昔話のおはなし会、人形劇など、子どもが保護者とともに楽しむプログラムや、「調べ学習講座」などのプログラムを実施している。
 カナダ大使館職員(第2回、平成26年11月)やリトアニア共和国大使夫人(第3回、平成27年11月)による「英語のおはなし会」の他、第3回から私立広尾学園ボランティア部の「英語のおはなし会」も実施されている。
 昭和63年度(1988年度)には小学生向けのブックリスト「よんでみない?」、平成7年に中高生向けのブックリスト「やんぐたいむず」の編集が開始された。「やんぐたいむず」は、平成16年に「よいっしょ(良書)」に改題している。両誌ともに毎年夏休み前に発行され、区立小・中学校の全児童・生徒に配布するだけでなく、区内の私立小・中学校、公私立高等学校にも送付している(※34)。