はじめに

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くらしと教育の関係を見ていく上で、人々の生活環境がどのように変化し、そのことがどのように教育へ影響を及ぼしたかを捉える必要があるだろう。くらしの変化を導く要因としては、経済・産業構造の変化や人口変動、災害の他、戦争などの政治情勢も関係してくる。そしてそのことが、子どもたちの生活の場である学校にも影響を及ぼす。特に港区域は、近代国家の建設、産業革命、震災と戦災、高度経済成長、バブル経済といった社会経済変動の影響を全国に先駆けて経験することとなった。そうした先駆性を特徴として持つ港区の社会変化は、人口変動とともに、学校の設置・廃止にも直結し、地域と学校との関係が鋭く問われる。
港区の地域的特徴は、先駆性だけでなく地域的多様性にもある。坂の町である港区は、地形に起因する山の手と下町とで社会経済環境が異なる。しかしそれだけではなく、区内を古川が横切ることで、山の手と下町が入り組んだ学区内多様性にもつながっている。このように港区の地域性を大枠で整理した上で、本章では、近代以降の港区域における地域社会の移り変わりと学校教育の関係を描いていく。