〔(2) 行政が把握できない子ども〕

59 ~ 61 / 321ページ
後の時期になるが、大正15年(1926)に東京市直営小学校(「特殊小学校」を大正8年に改称した)の廃止を決定する際、東京府内務部長が東京市長と各区長に「細民子弟ノ就学督励」に関する具体的計画の提出を求めた。芝区長からの回答に以下のようにある。
(一)督励方面
一、児童収容方法
1 指定ニ依ルモノ/戸籍簿寄留簿ニヨリ指定スルモノ
2 勧誘ニ依ルモノ/イ 勧誘ニヨルモノ/ロ 寄留漏レノ捜査勧誘/ハ 水上児童ノ仝上/ニ 無頼者ノ仝上 (仝は同の俗字―引用者注)
      右ノ細則左ノ如シ
1 毎学期二回以上ノ家庭訪問並家庭情況調査/2 入学等ニ関シ印刷物ノ配布並会社工場商店等ノ訪問/3 区役所警察署トノ連絡/4 府市社会局方面委員トノ提携/5 戸口調査学童調査/6 幼稚園托(ママ)児所トノ連絡/7 水上児童ノ調査収容方/8 母ノ会父兄会修養会(卒業生指導)ノ開催/9 卒業生保護者ノ職業紹介/10 特志家 東京市特殊小学校後援会ノ後援/11 済生会市施療病院産院トノ連絡/12 東京病院慈恵病院東京府医師会芝区私立□生会田中医院太田眼科医院産婆トノ連絡/13 保護者貯金、児童貯金ノ指導/14 各新聞社事業部社会部トノ連絡/15 健康相談(22)
「児童収容方法」について、指定によるもの、勧誘によるものを区別し、前者の方法として戸籍簿寄留簿を挙げ、後者の方法として寄留漏れの捜査勧誘、水上児童の捜査勧誘、「無頼者」の捜査勧誘を挙げる。そして、「細則」では子どもを把握し就学を勧誘するあらゆるルートを挙げている(23)。
住所・居所を移動する子ども、水上生活者や「無頼者」のもとにいる子どもについて、行政が把握するのが難しい部分もあった。