服装を巡る学校と家庭のやりとり

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ここまで見てきたように、学校における子どもの服装は、学校教育が普及するにつれて関心が持たれるようになり、運動に適した衣服の着用など、学校の考えも示されるようになった。この項では、学校通信を手がかりに、児童の服装に関する学校の方針や保護者との関係性をさらに明らかにしていこう。
赤坂区青山北町へ移転してきた東京府師範学校附属小学校(明治41年11月より東京府青山師範学校附属小学校、現・東京学芸大学附属世田谷小学校)は、明治36年(1903)から『学校家庭通信』を毎月発行し、保護者に配布した。当時、学校教育の普及を妨げているのは家庭教育の不十分さであり、学校は家庭を啓蒙(けいもう)すべきとの見方があった。教育熱心な保護者が多かった同小学校でも、懇話会や家庭訪問、通知簿などを用いて、家庭の理解を深めようとした。『学校家庭通信』も、そうした手段の一つとして、学校の教育方針や家庭が守るべき注意事項、家庭からの質問や意見が掲載され、服装についての方針や注意も多く含まれていた。