「弁当しらべ」を行った校医の高井は、大日本学校衛生協会の理事を務めた人物である。「学校衛生」とは、児童の健康を管理し、発育発達を増進するための活動を指す。佐伯は「成長といふことは栄養とは非常に密接の関係がある。栄養の適不適によって直接的にあるいは間接的に成長が左右せらるゝ」として食生活改善を説き、「栄養献立」を立案しているが(佐伯「子供の栄養」)、そうした知識が広がるにつれ、弁当や学校給食は「学校衛生」の領域となっていった。大正12年の文部次官通牒(つうちょう)「小学校児童の衛生に関する件」では、児童の栄養改善のために学校給食が奨励されている。高井の「弁当しらべ」も、学校衛生の管理者として、「何(ど)んな御弁当がよいか」を材料や調理法を交えて示し、家庭の食生活改善を促す、栄養指導だったのである。