もう一つ注目すべきは、貧困児童に給食を供与する際に「訓育上考慮を要する」としていた点である。これに関して、佐伯は、「欠食児童のみに対する給食は、児童に対し精神的に好ましからざる影響を与える」と指摘し(佐伯「学校給食に関する意見書」)、原も、「心なき子供の事であるから無料給食児童を虐(いじ)めつけたりする」と述べている(原『学校給食と献立の栄養学』)。貧困児童のみに給食を与えることは、経済的格差を顕在化させ、差別や偏見の原因になると警鐘を鳴らしていたのである。それらを受け、「学校給食臨時施設方法」の実施通牒(つうちょう)も、「学校給食の実施に当たりては、貧困救済として行わるるものたるがごとき感を与えることなく(中略)周到なる注意を払うこと」とし、貧困児童が負い目を感じないよう配慮を求めたのだった。
関連資料:【通史編5巻】4章1節4項 生活困窮家庭への対応