「もうすぐ小学生だね。学校に行くのは楽しみ?」「来年から中学生になるのか。早いものだね」。私たちの身の回りで交わされる何気ない言葉は、子どもたちの成長に対する驚きや喜びを表現している。そしてこうした言葉は、学校に通うことを当然のこととして受け入れる意識から発せられていることにも気づくことができるのではないだろうか。では、改めて考えてみると、小学校や中学校はどのような学校で、何を学ぶところなのだろうか。
現在私たちが通う小学校、中学校は、戦後の新学制によって誕生した。本章は、誕生の背景にある教育理念と学校制度、さらに新設間もない港区の学校の様子を描きたい。戦争後の新しい日本を作るために、教育に期待された役割は何だったのだろうか。そして、子どもたちを育てる学校はどのような取り組みを行ったのだろうか。第1節では、戦後新学制の成立過程、また戦前の旧学制との比較から「新しさ」の内実を確認する。第2節では、港区の小学校と中学校の様子について、桜田小学校が戦後新学制に果たした役割、人々にとっての中学校の意味、中学校の具体的な実践という三つの視点から描く。