学校教育の一環として聖火リレーや大会本番などの見学が実施され、児童の心にも残ったことがわかる。しかし、実際に足を運んだ児童は必ずしも多数派ではなく、校報や文集に掲載された児童の作文を見ても、聖火リレーや大会の見学記は少数である。オリンピック大会が間近で開催されていた港区の児童においても、大多数の児童にとってオリンピックはテレビを通じて知るものだった。飯倉(いいぐら)小学校では時間割を再編成してテレビ、ラジオを利用した(17)他、竹芝小学校では、全児童がテレビでオリンピック中継を視聴していた(18)。そうした結果、児童の作文の題材として取り上げたオリンピック大会は、家も含めたテレビで視聴したそれだった。例えば『あざぶ』51号では7人の児童によるオリンピックに関する作文と5年生9人によるコメントが載っているが、そのうち実際に観戦したと明確に判断できるものは1人のみだった(19)。児童がオリンピック関連で書く作文の内容は、世界平和やオリンピックを開催できるまでになった日本の復興に関することの他、大会については開会式、閉会式、陸上競技(100メートル走、マラソン)、女子バレーボール、体操競技、水泳、といった、メディアでも注目している競技が大半だった。