港区は「国際人育成事業」として、小・中学校で新たな事業を展開している。その一つが「国際科」の新設である。
区立小学校では、平成14年度(2002年度)から、国際理解教育の一環として英語活動を実施していたが、平成18年度から小学校8校で、翌19年度からは全校で教育課程に「国際科」を位置づけるとともに、外国人講師(NT:ネイティブ・ティーチャー)を各校に配置し、英語による実践的コミュニケーション能力の基礎を培っている。また、区立中学校においても、平成18年度から週1時間の「英語科国際」を加えて週5時間の英語教育を実施し、英語コミュニケーション能力の向上を目指している。
その他にも、同事業の一環として、「小中学生海外派遣(夏休みにオーストラリアの現地校へ体験入学)」、「国内留学プログラム」や「異文化体験授業の実施」といったテンプル大学ジャパンキャンパスと提携したプログラム、「日本語適応指導(帰国児童・生徒や外国人児童・生徒のための日本語習得指導)」が展開されている。
また、港区は、外国人住民が人口の約8パーセントを占め、国際化が進展していたことを受け、区内の外国人児童を対象とした国際学級も始められた。まず平成24年度から東町小学校において国際学級が開設され、平成29年度からは、南山小学校の1年生にも開設されることとなった(10)。
国際学級とは「外国人児童に多様な教育の機会を提供するため、通常学級に外国人児童を受け入れるESC(English Support Course)を設置し、ESC児童に対して英語で授業等を行う学級のこと」である。「日本人児童が英語を話せるようになることを目的とするものでは」なく、あくまでも「外国人児童に多様な教育の機会を提供」することと、「日本人、外国人どちらの児童にとっても、多様な文化や価値観に触れる機会とし、国際理解教育を推進」することが目的とされた。入学児童数は1学年に10人以内と定められた。あくまでも英語能力を有する児童が対象であるが、英語以外の母語の児童への対応はどうなるのか、今後の検討課題であろう。
ESC児童は国語、算数、社会の授業を独自クラスで受け、その他の授業および学級の時間や給食は日本人児童と同じクラスで受けることになる。クラスでの国際交流が日常的なことになっていくことが期待される。