港区教育委員会発足1周年

     港区教育委員会発足一周年に際して
                                 港区教育委員会
 昨年十一月一日 区民の皆様により選出された教育委員をもつて組織される港区教育委員会が発足以来こゝに満一ヶ年を迎えましたので、この機会に教育委員会一年の歩みを皆様に報告し、教育に対する御理解の御参考に供したいと思います。
 御承知のように区の教育委員会は、教育が公正な住民の意志により、地方の実情に即して行われることを目的として設けられたもので区民から選出された四名の委員と、区議会から選出された一名の委員、即ち五名の委員の合議によつて、学校施設の整備拡充や、教育に関する諸計画、並びに図書館、成人学校その他一般社会教育に関することなどいわゆる教育行政についてこれを計画し、実施する機関であります。
 委員会は、昨年十一月一日中西区長の招集によつて、第一回臨時会を開き、正副委員長の選挙、事務局の設置等について審議を行いましたが、委員の氏名は次の通りであります。
 委員長  多久 安信
 副委員長 川瀬  潔
 委員   小寺 為吉
 〃    吉田 芳雄
 〃    奈良岡 一
 以来一年間に定例会八回、臨時会十五回、連絡協議会二十六回を開催し、議案六十三件、請願五件、陳情十五件、その他四十八件について愼重に審議して、職責の完遂を期している次第であります。
 
 学 校 教 育
(1)方 針
 戦後学校教育行政の重点を六三制整備による戦災焼失の小学校々舎の復旧、新増築並びに中学校独立校舎の新増築及び危険校舎の改築等に意を注ぎ昭和二十六年度は二部授業を解消し、中学校は現在までに五校の独立校舎新増築を実施しており、長い間の懸案であつた赤坂中学校は元赤坂歩兵一聯隊跡地二、四一三坪余りの払下げを得て、目下登坂道路及び整地工事を実施中で、近日独立校舎の建設に着手することになつております。又この間本年四月一日には飯倉小学校が復旧し、開校致しました。
(2)昭和二十八年度学校建築と危険校舎改築計画
 学校建築については児童生徒の収容対策として、飯倉小学校六教室、神応小学校四教室、青山小学校六教室、港中学校四教室、高松中学校四教室、城南中学校四教室、赤坂中学校十二教室を新増築する予定であり、青山中学校については元陸軍大学校跡建物を候補として既に払下申請中で、近く接収解除が予定され、北芝中学校については芝公園四号地所在現在郵政省分室で使用中の都有建物を、同校々舎として移譲されるよう交渉中であります。
 芝浜中学校についても早急に用地の解決を図るべく、鋭意これに努力している状況であります。
 危険校舎の改築については現在芝浦小学校を改築実施中であり、南海小学校についても、数年前から危険老朽校舎として指定されており、これを移転改築するため、元聖坂、御高両小学校用地に存在する都営住宅の移転について早急に解決を図り、改築の実現を期したいと思つております。
 御田小学校並びに神応小学校については、昭和二十一、二年度建築に係るバラツク建であるので、都から補助金の交付があり次第、改築することが出来る見透しとなつております。
その他
 なお青山小学校、御田小学校、芝小学校の校庭舗装及び高松中学校、城南中学校、港中学校、赤坂小学校、御田小学校、芝小学校、神応小学校の水洗便所改装工事も終りましたので、区立小中学校三十六校は全部水洗式に改造完了しました。
(4)沼津養護学園
 沼津市我入道蔓陀ヶ原五〇九番地にある区立沼津養護学園は、本区小学校の身体虚弱児童を収容し、学習と健康増進を目的に開設していますが、本年度も第一学期三十二名、第二学期三十六名の児童が入園しております。なお今回隣地一、〇二〇坪六四の借地権を川村学園から購入し、学園施設の拡充や教職員住宅の建設地に当てることになりました。
(5)夏季学園
 夏季休業中本年も七月二十日から八月二十九日まで二泊三日で夏季学園を開設しました。
 沼津夏季学園 小学校二四校、中学校八校 計三十二校参加、児童生徒数二、七九四名、職員二四三名、計三、〇三七名参加、
 箱根夏季学園 小学校二三校、中学校一〇校、計三十三校参加、児童生徒一、五九四名、職員一七三名、計一、七六七名参加
(6)教育研究
 教育研究は殊に活発な活動を続け、文部省から実験学校として、図書館教育の氷川小学校、産業教育の朝日中学校及び城南中学校、都研究指定校としては体育の本村小学校、科学教室の高輪台小学校、教科研究協議会指定校として英語の城南中学校があり、その他の小中学校もそれ/゛\特色ある研究を競つております。なお本区教職員をもつて、港区教育研究会が組織され、中学校十六部会、小学校十五部会、幼稚園四部会がそれ/゛\設けられ、活発な研究並びに発表を行つております。
 
 社 会 教 育
(1)基本方針
 民主々義を基調とする国民道義の昂揚と、平和条約発効に伴い、国家の自立経済計画を達成し、独立国民としての自覚を新たにして社会道徳の樹立を図るために職業(生産)教育、生活改善、家庭及び社会における人間関係の民主化等に重点をおいた科学技術及び体育の振興を目途として、成人、婦人、PTA、青少年諸団体の指導者の育成を図り、その自主的活動を助長して生活の合理化、青少年の不良化防止に努めるほか、図書館、体育館等施設の整備増強を行い、文化講座、研究会、成人学校等の拡充と相俟つて区民一般があらゆる機会、あらゆる場所を利用して自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するため、各種の事業を行い並びに施設を経営しております。
(2)社会教育事業
 成人教育のための成人学校の開設、時局講座を始め婦人教育のための生活改善講習会、社会教育講座、青少年教育のための青少年指導者講習会、緑蔭子供会、映画会、社会体育振興のための各種競技会の開催、レクリエーシヨンの普及その他各種事業を実施して、活発な活動を続けております。
 
 む す び
 以上が本区教育委員会発足一ヶ年の主なる動きでありますが、最近における委員会の重要問題として、地方制度調査会行政部会の内閣に対する答申案が、とり上げられております。これには「市町村の教育委員会はこれを廃止するものとすること」と答申されておりますが、教育委員会は教育行政の民主化、地方分権化、自主性確保のために設置されたものであつて、その必要性は申すまでもありません。更にまた十六国会において審議未了となつた一部都府県に対する義務教育費国庫負担打切りの問題も再燃せんとしつゝあるとき、今後六三制の整備その他教育行政運営のため将来なお前途に解決を迫られている幾多の諸問題に対し、区理事者、区議会その他関係各方面と渾然一体となつて本区教育伸展のため、努力する覚悟でございますから、今後共区民各位の御支援をお願いする次第であります。

(『港区政ニュース』昭二八・一一)