「生涯教育」という考え方は、昭和40年にユネスコ(国連の教育科学文化機関)第3回成人教育推進国際委員会における生涯教育局長ポール・ラングランが、「生涯教育」の必要性を基調報告したことから始まりました。
我が国では、すでに教育基本法や社会教育法によって社会教育を奨励するためのさまざまな施策が講じられていましたが、昭和42年、波多野完治氏がラングランの論文を日本語に訳して紹介し、「生涯教育」という概念が形成されたことで、「生涯教育」ないし「生涯学習」という用語が広く定着しました。
港区では、「いつでも、だれでも、どこでも、いつからでも」の視点をもとに、人々のライフステージにあわせた多様な事業を行い、生涯学習施策の充実を図り、今日に至っています。
◆国の最近の動向
平成20年6月に、教育基本法の改正を踏まえ、社会教育行政の体制の整備等を図るため、社会教育法、図書館法及び博物館法が改正されました。
社会教育法の改正では、社会教育施設の運営能力の向上や、専門職員の資質向上を図るための規定などが定められ、地域の教育力の向上が図られました。
図書館法においては、平成24年4月に図書館法施行規則が施行されることとなっており、図書館を支える司書の養成課程の改善・充実を図ることとしています。
また、博物館法においても、学芸員が高い専門性と実践力を備えた質の高い人材として育成されるよう、平成24年4月から学芸員養成課程における養成科目の改善・充実が図られます。
文部科学省の放課後子ども教室推進事業と厚生労働省の放課後児童健全育成事業が連携した、総合的な放課後対策「放課後子どもプラン」を平成19年度から実施してきました。さらに、平成23年度からは、子どもの教育を支援する教育支援活動を総合的に推進していくため、「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」を創設し、地域全体で子どもを育む環境づくりの支援に努めています。
◆東京都の最近の動向
東京都教育委員会は、区市町村が主体となって、放課後や週末等に、安全・安心な子供の活動拠点をもうける取組を推進するため「放課後子供教室推進事業」を実施しています。平成19年度に475か所で始まった取組は、平成22年度には、958か所で実施されました。
平成19年12月に生涯学習審議会は、「乳幼児からの子供の発達を地域で支えるための教育環境づくりの在り方について(第一次答申)」を出しました。
平成20年12月には、「東京都における「地域教育」を振興するための教育行政の在り方について―社会教育行政の役割を中心に―(第二次答申)」を出しました。(諮問:平成19年5月東京都教育委員会「新しい教育基本法の下で東京都が取り組むべき社会教育施策の在り方について」)
【第一次答申概要】
乳幼児期からの発達の重要性に触れるとともに、家庭教育支援策の現状と課題を踏まえ、乳幼児期から子どもの発達を軸に据えた地域における多様な主体の参加によるネットワークの形成を具現化するため、「乳幼児からの子供の教育支援プロジェクト」実施について提案しています。
【第二次答申概要】
社会全体で教育力を向上させるために、「地域教育」の必要性を提示し、学校教育と社会教育といった従来の教育行政の枠組みを乗り越え、「地域」を舞台に横断的な施策展開を図る必要性の提案と、取り組むべき教育課題を提示し、そのための東京都教育委員会の具体的な役割を提案しています。
◆港区民世論調査の結果
第27回港区民世論調査(平成21年8月実施)の結果によると、「学習・スポーツ活動について区に最も望むこと」は、「身近な学習・スポーツ施設の整備」(33.8%)が最も多く、以下「講座やスポーツ教室などプログラム内容の充実」(22.5%)、「講座やスポーツ教室に関する情報提供の充実」(14.5%)と続いています。
今後、国や東京都の動向と港区民世論調査の結果を踏まえ、現在実施している港区放課後児童育成事業「放課GO→」及び区民の生涯学習活動の一層の充実を図ることが必要です。