インターネットの普及に伴い、現代の若者は、メールやブログなどを使いこなしており、過去に例がないほど多くの文字情報に接しています。この傾向は、スマートフォンなどの普及により、さらに加速していくと予想されます。若者の「活字離れ」が社会で喧伝される中、実はこれまでになく多くの文字情報と日常的に接しているのが現代の子どもなのかもしれません。
読書についてはどうでしょうか。読書についても、最近まで若者の読書離れが指摘されてきました。全国的な読書調査(毎日新聞社と全国学校図書館協議会による「読書調査」)でもそうした傾向を示すデータが示されてきました。
しかし近年は以前に比べて児童生徒の読書量が増えていることがデータから示されるようになっています。平成23年の毎日新聞社等の調査によれば、ここ10年ほどは平均読書冊数が増加し、不読者の比率が低下する傾向にあることがわかります。このことは、国・都道府県、市区町村をはじめとした子どもの読書活動にかかわる関係者の努力の成果があらわれているとも考えられます。
このような中、近年、読書と学力や問題解決能力との関係が注目されるようになっています。その背景のひとつに、OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に3年ごとに実施される学習到達度調査(PISA調査1)があります。このテストは、子どもの知識や技能を実生活のさまざまな場面でどの程度活用できるかを評価するものです。その平成12年の読解力テストにおいて、「趣味として読書をする時間」と成績とのあいだに関連性が見られました。具体的には「趣味として読書をする時間」が増えるほど、テスト結果がよいという傾向が示されました(毎日2時間以上読書をするものをのぞく)。読書量が増えることで、文字を素早く認識し、それを正しく解釈できるようになったこと、さらに批判的に読解できる力がこうした結果をもたらしたと考えられます。
また、このテストでは、「趣味として読書をすることはない」と答えた者の比率でも注目を集めました。OECD加盟国全体ではこの設問に対する「はい」の回答は31.7%でしたが、日本では55%と、加盟国中最も高い値でした。このことは、自らのために自立的に楽しんで読書をする子どもが少なく、外部から強制されて読書をしている日本の実態をあらわしたものととらえることができます。しかし、この割合は、平成21年の同様の調査で低下し、逆に、楽しみで読書をする生徒の割合が、約10ポイント増加していたのです。
港区の状況を見てみましょう。平成21年度に行われた全国学力・学習状況調査(文部科学省実施)には、「家や図書館で普段(月曜日~金曜日)1日どれぐらいの時間読書をしていますか」という質問があります。結果、港区では小学生、中学生ともに、東京都(公立学校)、全国(公立学校)の児童生徒と比較して多く読書をする傾向にあることが分かりました。
また、今回「港区子ども読書活動推進計画(第2次)」策定時に実施した「読書に関するアンケート調査」(平成23年10月実施)でも、読書量が増えている傾向が示されました。
これらの変化は、港区の学校等を含む子ども関係施設や地域のボランティアの方々による読書活動への支援によるものです。
高度情報化社会の中で、子ども達を取り巻く読書環境は今後も変化し続けます。新たな情報メディアを活用しつつ、「本を読む」ことの大切さを、未来をになう子どもに伝えるために今後も継続して読書活動を推進していくことが求められます。
1 OECD生徒の学習到達度調査:PISA(Programme for International Student Assessment)調査とも呼ばれ、読解リテラシー(読解力)、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野の各分野に関し、概念の理解度、思考プロセスの習熟度、様々な状況に臨機応変に対処する能力を評価するテストです。