1-2-2.子どもの読書の意義

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 子どもにとって読書は楽しいものです。読書を通して知らないことを知ったり、物語を読むことは純粋に楽しいものです。このように楽しんで読書をすることは、精神的・身体的な健やかな成長に寄与すると考えられます。
 また、読書は子どもの経験を拡張します。ひとりの人間が経験できることは限られます。しかし本には多様な世界が描かれています。文字によって構築されたそうした本の世界によって、子どもは擬似的ではありますが、様々な経験をすることができます。こうした知識は、子どもにとって興味深いものでしょうし、子どもが世界をとらえる方法を相対化し、読書がなければ知らなかったような角度から世界をみることを可能にします。こうして拡張された経験は、子どもたちが成長していく上で大きな力となるはずです。
 さらに、読書によってことばを知ることができます。ことばを多く知ることは、世界を広く、そして深く認識することを助けます。また、表現する力を高めるでしょう。
 また、読書は子どもに深い思考をうながします。本というメディアは、他のメディアに比べ、抽象的で複雑な知識・情報を伝えることができます。そうした知識・情報を読み解くことは負荷のかかる作業ですが、その負荷は悪いものではなく、知的な訓練になります。
 そして、読書は言語力に代表される記号を操作する力を向上させるともいわれています。そして、その力は学力の基盤でもあるため、結果として学力向上につながるとも考えられています。このことは、さきほど述べたOECD生徒の学習到達度調査(PISA)や全国学力・学習状況調査の結果からも示唆されています。これらのほかにも、多くの研究から、楽しんで読書をしている子どもが、就学後の学習において積極的な取組をしていることが示されています。
 以上は、子ども個人にとっての読書の意義ですが、読書には社会全体にとっての意義もあります。本は時間、空間を超えて知識、知恵を伝えることのできるメディアです。そうした本に表現された著者の思考は、長い人間の歴史の中で育まれてきたものです。したがって、本を読むことは、社会全体にとって、知識、知恵の継承につながることになります。
 最後に、本計画では「読書活動」という言葉をつかっていますが、このことばを「読書」と「読書をうながすさまざまな試み」を表す言葉としてつかっていきます。したがって、「子どもの読書活動推進」とは、子どもの読書、そして、読み聞かせやブックトークなどの読書をうながす試みを推進するという意味になります。
 子どもの読書活動推進計画では、上記に掲げたような読書の意義を踏まえ環境の整備を行なっていきたいと考えます。