1.教育における情報化の状況

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(1)情報化の状況
 情報通信技術の進歩と通信基盤の整備等に伴い、インターネット利用者は急増しており、平成24年の1年間にインターネット利用者は推計で9,652万人と、前年に比べ42万人の増加がみられ、人口普及率は79.5%に達しています。また、年齢階層級別のインターネット利用率は6~12歳では69%、13~19歳では97.2%となっています。(総務省:平成24年通信利用動向調査)
 このように急速に情報化が進む中で、区立小中学校では平成16年から19年にかけて教育用・教務用サーバを各学校に設置するほか、平成21年度からいち早く全小中学校に電子黒板、デジタルテレビを配備しました。さらに、電子黒板の追加配備や平成24年以降全校にデジタル教科書を導入するなど、教育分野における情報化を他の自治体に先駆けて推進しています。区立小中学校では、デジタル教科書の活用や小中一貫教育の推進などにより、教育の質の向上を目指していますが、共通した電子教材の利用や統一システムによる効率的な業務展開が不十分な状況にあります。
 インターネットの活用方法も、電子メールの受発信やホームページ・ブログの閲覧が依然として高いことに加え、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)等のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用や、商取引等における利用へも広がっています。東日本大震災時には、固定電話や携帯電話がつながらない中で、安否確認や情報交換等で活躍しました。
 こうした中、子どもたちがインターネット等に関係する犯罪やトラブル等に巻き込まれる事例も増加しています。近年は子どもたちの間でプロフやLINE等、閉じられた世界の中で相互にコミュニケーションを図るツールが急速に普及しつつあることが港区独自の調査※でも明らかになっており、このようなツールによって、周囲からは実態が見えづらく発覚しにくい「ネット上でのいじめ」も多く発生し得る状況となっています。
 平成21年4月には、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(いわゆる青少年インターネット環境整備法)」が施行されたものの、有害サイトのWebフィルタリングや学校非公式サイトの監視等の対策強化が必要となっています。
 ※港区独自の調査結果・・・参考資料「港区SNSに関するアンケート結果2013」参照
 
(2)国の動向
 文部科学省では、平成23年4月、2020年度に向けた教育の情報化に関する総合的な推進方策である『教育の情報化ビジョン~21世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指して~』を取りまとめました。このビジョンでは、教育分野における情報化の取組に関して、過去に策定された国家戦略に挙げられた政府目標を十分達成するには至らず、また他の先進国に比べて進んでいるとはいえない状況にあるとし、「教育の情報化は21世紀の世界において生きていくための基礎となる力を持った子どもたちを育てる学びと学校の創造に取り組むことを可能とする。」との認識を示しています。
 「教育の情報化ビジョン」では、21世紀に生きる子どもたちに求められる力を展望しつつ、その力をはぐくむ教育を行うために、情報通信技術の特長を活かすことが重要であるとし、教育における情報化が果たす役割として、次の3つの側面を通して、教育の質の向上をめざすこととしています。
 ①情報教育
 ~子どもたちの情報活用能力の育成~
 ②教科指導における情報通信技術の活用
 ~情報通信技術を効果的に活用した分かりやすく深まる授業の実現等~
 ③校務の情報化
 ~情報通信技術を活用した教職員の情報共有によるきめ細かな指導、校務の負担軽減等~
 
 また、政府は、教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るための計画として、平成25年6月14日付けで、第2期の教育振興基本計画を閣議決定しました。教育振興基本計画では、目指す基本的方向性として「①社会を生き抜く力の養成」「②未来への飛躍を実現する人材の養成」「③学びのセーフティネットの構築」「④絆づくりと活力あるコミュニティの形成」を示しています。4つの基本的方向性において、多様で変化の激しい社会の中で個人の自立と協働を図るための主体的・能動的な力である「社会を生き抜く力」を養成するため、5年間の計画期間での具体的方策として、教育内容・方法の充実を図ることを基本施策に挙げています。そのための取組の1つとして、ICTの活用等による新たな学びの推進が掲げられています。
 この取組みを通して、確かな学力をより効果的に育成するため、言語活動の充実や、グループ学習、ICTの積極的な活用をはじめとする指導方法・指導体制の工夫改善を通じた協働型・双方向型の授業革新を推進するとしています。
 
(3)東京都の動向
 東京都教育委員会においても、平成25年4月、「東京都教育ビジョン(第3次)」が策定されました。
 『社会全体で子どもの「知」「徳」「体」を育み、グローバル化の進展など変化の激しい時代における、自ら学び考え行動する力や社会の発展に主体的に貢献する力を培う』ことを基本理念とし、平成25年度からの5年間を中心に、東京都が今後中・長期的に取り組むべき教育の基本的な方向性と主要施策を示しています。その中で、「学校の教育環境整備」として、ICT機器の活用を推進することが明記されています。
 
(4)他区の動向
 他区では、国の施策や各区の情報化計画に基づき学校の情報化を進めており、個人情報を取り扱うための信頼性や安全性、災害対策などの必要性から、高度なセキュリティ対策が施されたデータセンターにシステムサーバを設置するとともに、効果的・効率的な校務情報化の実現のために全ての学校に統一された校務支援システムを導入しています。以下に示す通り、東京23区では約75%の自治体でデータセンターや統一された校務支援システムが導入されていますが、港区ではどちらも対応できていない状況にあります。

①区立学校の情報化にあたり、データセンターを導入しているか


②区内で統一された校務支援システムを導入しているか