(ア)「教育活動」における現状と課題
区立学校における教育活動へのICT活用は、「パソコン教室用パソコン」「電子黒板用パソコン」「教室用パソコン」「電子黒板」「電子教材」などを用いて行われています。
小中学校には1フロアにつき1台を目安に電子黒板が導入され、その上で動作する電子教材(デジタル教科書)も全校に配備されていますが、更なる追加配備や支援を求める声も高くあがっています。
一方で、配備されたパソコンが老朽化し、現在では性能が不足していることや、インターネット接続速度が遅いことなどの要因から、一部パソコンの利用頻度が低くなっているという側面もあります。
【学校アンケートの結果】

【図:電子黒板の1教室1台配備の必要性】
「とても必要」「必要」と回答している教員は75%以上あり、多くの教員が電子黒板の追加配備を希望しています。

【図:パソコン教室への追加要望】
「生徒用PCの環境復元」「電子教材」「授業支援システム」への要望が高くなっています。環境復元の要望が高いのは、学校現場において環境復旧や保守作業を行うにあたり、教員に対して作業負荷がかかっているためです。また、電子教材について要望が高いのは、現在配備されているデジタル教科書では足りない部分に対する要望があるためです。

【図:教室用パソコンの利用状況】
利用しているとの回答は半数強にとどまっており、不満点としてはパソコンの遅さを指摘する意見が多くあげられています。
教育活動に活用するパソコンについては、統廃合を含めた適正配備を今後検討していく必要があります。
(イ)「校務の情報化」における現状と課題
区立学校における校務の処理は、「事務用パソコン」「教務用パソコン」「研究用パソコン」などを用いて行われています。事務用パソコンは「行政事務」、教務用パソコンは「教員事務」、研究用パソコンは、「研究」「教材作成」「情報収集」に主に使用されています。
各パソコンはそれぞれ別のネットワークに所属しているため、パソコン間の情報のやりとりはフロッピーディスク等記録媒体を用いて行っており、教員(特に区との情報やりとりを代表して行う副校長)の負荷が高い状況となっています。また、校外との情報やりとりにおいても施設間を繋ぐネットワークや情報共有のための場所(ファイルサーバなど)が存在しないため、全体として情報のやりとりに柔軟性を欠いた状態となっています。
また、校務処理の方法が学校毎にバラバラで統一されていない、ホームページ更新の難易度が高く地域への情報発信が十分にできていないなどの課題もあります。
【学校アンケートの結果】

【図:パソコン間の情報連携の必要性】
「とても必要」「必要」と回答している教員は85%以上となり、ほとんどの教員が情報共有を行える環境を希望しています。特に管理職における「とても必要」の回答率が高く、管理職にかかっている負荷の軽減を希望しています。

【図:校務支援システム導入の必要性】
「とても必要」「必要」と回答している教員は85%以上となり、ほとんどの教員が校務支援システムの導入を希望しています。すでにシステムを個別に導入している学校もありますが、そのような学校で「必要ない」と回答している教員はおらず、現行システムよりもメリットがあれば、統一された校務支援システムを導入しても良いと考えられています。

【図:ホームページを容易に作成するソフトの必要性】
「とても必要」「必要」と回答している教員は90%以上となり、全ての項目の中で最も要望が高いという結果になりました。特に管理職における要望が高くなっており、保護者や地域への情報公開に対する意識の高さがあらわれています。また、ソフトを導入することで、ICT支援員をホームページ更新以外の作業(授業支援など)に活用することが可能となります。
(ウ)「安全・安心な利用環境/体制」における現状と課題
各学校には各個人が利用するパソコンだけでなく、利用用途毎にサーバも設置されていますが、それらのシステム障害や故障による管理負荷が高いとの声が高くあがっています。
また、セキュリティポリシー等に基づいた組織的なセキュリティ対策としては、区が策定した「港区情報安全対策基本方針」を基に、教育委員会としてのセキュリティポリシーである「港区学校情報安全対策基準」を策定し、更にはその内容を踏まえて各学校において「港区学校情報安全対策実施手順」を定め、セキュリティ遵守に努めています。しかし、その内容には学校現場には適用が難しいもの※も一部含まれており、定期的な見直し等も含めた組織的かつ継続的な改善活動が望まれます。
「いつでも安全・安心に利用できる環境」の一例として、校外から安全に校内の情報にアクセスしたい、という要望も多くあげられていますが、まずはシステムの安定稼働や信頼性・セキュリティの向上を下支えする、環境整備と運用保守体制の確立が課題となります。
※適用が難しいものの例・・・サーバ設置場所への監視カメラ設置、入退室管理など
【学校アンケートの結果】

【図:システム管理負荷を下げる取組みの必要性】
「とても必要」「必要」と回答している教員が90%以上あり、教員が現在のシステム環境の管理に対し、大きな負担感を感じています。パソコンの性能不足によるトラブル対応やサーバ(NAS)の障害、その他情報機器のトラブルに対する業者対応等が原因となっています。

【図:校外から安全に情報アクセスする環境の必要性】
「とても必要」「必要」と回答している教員が80%以上あり、多くの教員が校外から安全に校務処理が行える環境を希望しています。特に一般教諭において「とても必要」と回答している割合が高くなっています。