(1)国や都の状況

1 ~ 2 / 111ページ
 社会、経済、文化など様々な分野におけるグローバル化の進展とICT(情報通信技術)の発達により、世界各国との距離が急速に縮まっています。大人だけではなく、子どももICTを活用して外国人とコミュニケーションを深めるなど、家庭や学校、地域など従来の子どもの活動範囲を超えて、容易に自身の世界を広げることが可能となっています。
 一方、核家族化や共働き世帯の増加等、家庭状況の多様化に伴い、家庭内でのコミュニケーションや地域とのつながりが減少し、子どもの孤立感が増大しているほか、家庭や地域で社会性が育まれにくくなったことにより、子どもの規範意識の低下も招いています。
 学校においては、暴力行為やいじめの増加が深刻な問題となっている一方、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)等を使ったインターネット上でのいじめや誹謗中傷など、いじめの質も大きく変化しており、発見や対応の難しさが指摘されています。
 
 国は、社会の変化に伴う教育を取り巻く状況に対応するため、平成25年6月に「第2期教育振興基本計画」を策定し、4つの基本的方向性として「社会を生き抜く力」「未来への飛躍を実現する人材の養成」「学びのセーフティネットの構築」「絆づくりと活力あるコミュニティの形成」を打ち出しています。
 平成25年9月には「いじめ防止対策推進法」が施行され、学校でのいじめ防止にかかる実効的な対策について、国及び地方自治体の責務が明らかにされました。自分と他者の生命を尊重し、他者を思いやる心の育成や規範意識、社会のルールやマナーの習得などを目的とした道徳教育については、中央教育審議会が学校教育の中核に位置付けるものとして答申を行い、教科化の動きが具体化している状況にあります。
 平成25年12月には「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が公表されるなど、社会環境、教育環境の変化に対応した法整備や計画の策定が着実に進められています。
 
 また、近年深刻化している子どもの貧困問題に対応するため、平成26年1月に施行された「子どもの貧困対策の推進に関する法律」において、国及び地方自治体で教育の機会均等を図る施策を講じることとされています。
 平成28年度には、急速に進むグローバル化に対応し、国際社会で活躍できる人材の育成を目的として、学習指導要領を全面改訂し、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される平成32年度からの全面実施を目指すとしています。
 平成27年4月から、教育行政の責任の明確化、迅速な危機管理体制の構築、首長との連携の強化等を目的とした、新たな地方教育行政制度が始まります。教育委員会組織の見直し、首長による総合教育会議の設置、教育の振興に関する施策の大綱の策定など、教育行政の枠組みが変わります。
 さらに、平成26年7月に政府の教育再生実行会議が示した学制改革に関する提言を踏まえ、国では、平成28年度に小中一貫校の制度化を検討しています。
 
 東京都教育委員会では、平成25年4月に「東京都教育ビジョン(第三次)」を策定し、「基礎学力の定着」や「豊かな人間性の育成」など、子どもの教育にかかわる取組を唱えています。平成25年度から、基礎的な学力の確実な習得を目指し、「東京方式習熟度別指導ガイドライン」を定め、習熟度別指導の推進に向けた取組を強化しています。
 東京都が平成26年7月に制定・策定した「東京都いじめ防止対策推進条例」「東京都いじめ防止対策推進基本方針」においては、いじめがどの学校でも起こり得るという認識のもと、未然防止と早期発見・早期対応の取組について、都や学校の責務だけではなく、子どもに規範意識を養うための指導を行うことや、いじめを受けた児童の保護など、保護者の責務についても規定しています。