(1)国や都の状況

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 近年のIoT※1やビッグデータ※2、人口知能等の技術革新やグローバル化の一層の進展に伴い、産業構造や社会システム、国際情勢等がこれまで以上のスピードで変化し、将来を見通すことがますます困難となっています。
 
 
 また、共働き世帯の増加をはじめ、家庭の状況や個人の価値観、ライフスタイルの多様化により、家庭内でのコミュニケーションや地域とのつながり、支え合いの希薄化が指摘されており、家庭や地域社会における教育力の向上が喫緊の課題となっています。
 このような社会状況の中、子どもたちが多様な人々と協働しながら様々な変化を乗り越え、未来を創り出すための資質や能力を育むため、国は、平成29(2017)年3月、幼稚園教育要領及び小・中学校学習指導要領を改訂しました。幼稚園は平成30(2018)年度、小学校は平成32(2020)年度、中学校は平成33(2021)年度から全面実施することとしています。新要領が目指す基本的な方向性として、社会に開かれた教育課程の実現により、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創ることとされ、新しい時代にふさわしい学校教育のあり方が示されました。
 新たな幼稚園教育要領では、健康な心と体や自立心、道徳性・規範意識の芽生え、社会生活との関わりなど「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が明確にされました。幼稚園教員と小学校教員がそれを共有するなど互いに連携し、幼稚園教育と小学校教育の円滑な接続を図ることが求められています。
 新学習指導要領では、知識の理解の質を高め、新しい時代に求められる資質・能力を育むため、「主体的・対話的で深い学び※3」の実現が重要であるとされました。小学校では平成30(2018)年度から、中学校では平成31(2019)年度から「特別の教科」となる道徳授業の充実のほか、小学校5、6年の英語の正式教科化や3、4年の外国語活動など、外国語教育の充実等の教育内容の改善をはじめ、小学校段階からのプログラミング教育やキャリア教育の充実、子どもたちの発達や障害の状態に応じた指導の工夫などが明記されています。
 平成27(2015)年12月、中央教育審議会は、学校と地域の連携・協働を一層推進していくため、全ての公立学校において、地域住民や保護者等が学校運営に参画する仕組みとして、学校運営協議会制度※4を導入した学校(コミュニティ・スクール)を目指すべきとする答申をまとめました。この答申を受け、平成29(2017)年4月、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正され、学校運営協議会の設置が努力義務化されています。
 中央教育審議会はまた、平成27(2015)年12月の答申において、学校の組織としてのあり方や業務のあり方を見直し、学校の機能を強化していく「チームとしての学校」の体制を整備していくことが必要であるとしています。
 平成29(2017)年8月には、中央教育審議会の特別部会が「学校における働き方改革に係る緊急提言」をまとめ、学校における「勤務時間」を意識した働き方の推進、全教育関係者が学校・教職員の業務改善を強く推進、国としての勤務環境整備のための支援の充実の3点について改善策を指摘しています。
 東京都においては、平成28(2016)年1月に策定した「東京都オリンピック・パラリンピック教育実施方針」で、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)を契機として、国際社会に貢献し、東京、そして日本のさらなる発展の担い手となる人材を育成していくため、オリンピック・パラリンピック教育を都内の全学校で展開することとしました。
 平成29(2017)年1月には「東京都教育施策大綱」を策定し、「グローバル化の進展の中でたくましく生き抜く人間」「共生社会の中で多様性を尊重し積極的に社会的役割を果たす自立した人間」などを目指すべき子どもたちの姿として掲げ、「新しい価値を創造する力を育む教育の推進」や「世界で活躍できる人材の育成」などを教育施策における重要事項として位置付けています。東京2020大会については、同大綱の中でも体力の向上や国際理解の深化、ボランティア活動への参加意欲の醸成、障害者理解の促進等の取組を推進するとしています。


※1 IoT:Internet of Things:「モノのインターネット」の略で、機械や家電等、様々な機器を、インターネットを通じてつなぐことで、ビッグデータの収集や機器の制御等を実現する技術。
※2 ビッグデータ:情報通信技術の進展により生成・収集・集積等が可能・容易となる多種多量のデータ。
※3 主体的・対話的で深い学び:学ぶことに興味・関心を持ち自己の学習を振り返って次へとつなげる「主体的な学び」、多様な人との対話を通じて自己の考えを広げていく「対話的な学び」、習得した知識等を活用した見方・考え方を課題の解決に生かしていく「深い学び」により、「どのように学ぶか」という学びの質を高めることが重要とされた。
※4 学校運営協議会制度:保護者や地域住民の学校運営や教育活動への意見を反映させるなど、学校と保護者や地域との協働により、子どもの豊かな成長をともに支える仕組み。平成29(2017)年4月に改正された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」により、学校運営協議会の設置が努力義務化された。