(5)食育の推進

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 社会情勢の変化に伴い、食生活における新たな課題として、朝食の欠食や孤食、栄養の偏り、生活習慣の乱れなどが、生活習慣病の低年齢化や成長期のやせ、子どもの体力低下の要因となっています。また、世帯構造の変化や生活様式の多様化などにより、伝統的な食文化が失われつつあるなど、食環境を取り巻く課題が生じています。
 児童・生徒の体力調査結果(18・19ページ参照)によると、港区立小・中学校の子どもの体力は、小学生では全国平均に対して男子が低い傾向にあり、中学生では男子、女子ともに全国平均を下回っています。一方、近年、全国的に思春期のやせの増加が指摘されており、健康への影響が懸念されています。学校における児童・生徒の発育及び健康状態を明らかにするため実施されている平成28(2016)年度の学校保健統計調査の結果によると、骨や組織をつくる生涯で最も体重発育の著しい成長期の小中学生において、「やせ傾向」の出現率は、港区立小学校、中学校いずれも男子、女子ともに全国平均より高めで、とりわけ中学生男子で高くなっています。
 平成29(2017)年度に実施したアンケート調査では、子どもがどのように育ってほしいかという問いに対して、「健康で活発な人」との回答が上位を占めています(14ページ参照)。また、区立小学校に期待することは何かという問いに対し、「正しい生活指導や食育、スポーツ指導などによる健康な体づくり」との回答が上位につけており、子どもの健やかな成長とその成長を支える健康教育への保護者の高い期待があると言えます。
 港区の子どもが望ましい食習慣を身に付け、体力・運動能力を向上させるためには、子どもたちが心身の成長や生涯を通じた健康を保持増進していく上で望ましい栄養や食事のとり方、食品の安全性を理解し、自らの食生活を適切に判断する自己管理能力を育成することが必要です。理科、社会科、家庭科等の知識・技能の習得を通じて、健全な食生活を送るための基礎となる知識を学び、我が国の伝統的食文化である和食、郷土料理、伝統食材、食事の作法などを継承するとともに、食の生産に携わる人や自然環境の恵みに感謝する気持ちを育み、理解を深める教育に、家庭や地域と連携して取り組むことが求められています。
 
<現状>
 ○港区立小・中学校の子どもの体力は、小学生では全国平均に対して男子が低い傾向にあり、中学生では男子・女子とも全国平均を下回っている。
 ○骨や組織をつくる体重発育の著しい成長期において、港区立小学校、中学校での「やせ傾向」の出現率が、全国平均と比較して高い傾向にある。
 ○アンケート調査では、子どもの健やかな成長と健康教育に対する保護者の期待が高い。
<課題>
 ○健全な食生活を実践し、運動・スポーツ活動を支え心身の発達を促すため、成長期に特有な体づくりと栄養や食事のとり方に関する正しい知識と理解を深める教育が必要。
 ○望ましい食生活を送るための基礎となる知識・技能の習得のため、教材としての学校給食の活用や授業と連携した食育の推進が求められている。
 ○我が国の伝統的食文化を継承し、食の生産に携わる人や自然環境の恵みに感謝する気持ちを育む取組が必要。
 
■平成28(2016)年度 肥満傾向児・やせ傾向児の出現率の比較
 出典:「港区の学校保健統計 平成28年度」

<男子>


<女子>

■平成28(2016)年10月 和食器を使った授業後の保護者アンケート結果
 平成28(2016)年10月、赤坂小学校の5・6学年の児童と保護者が、和食器について学ぶ授業を実施しました。給食時間には、正座をして御膳の和食器セットに盛り付けた給食を食べました。

 

【質問】学校ではどのような和食の文化を発信または伝えてほしいですか
【回答】
・魚中心で、緑、野菜が多い食事だと有難い。
・和食器で食べる機会を増やしてほしい。
・地方料理をメニューに取り入れ子どもたちに理解してもらう。
・四季折々の料理、様々な和食、地域の料理、和食の食材等を提供してほしい。
・箸の正しい持ち方、正しい食べ方等、和食給食の時に伝えてほしい。
・和食の本当の味を伝えてほしい。
・日頃から食器にこだわって食事と日本の美的感覚をやしなってほしい。
・季節ごとの食事、七草、おはぎ、さくらもち、ぎんなん、新米、ひなあられ、ちまき、梅等、普段ならあまり食べようとしないが、給食なら季節を学びやすいのではと思う。
・食器、マナー、作法の意味など伝えてほしい。
・せっかくの和食器給食の日にはカルシウム源を牛乳ではなく小魚や緑黄色野菜等の献立にしてほしい。
・野菜や魚でこの時期に頂くのが旬であり典型的な和の文化であることを給食の日にアナウンスしてはどうか。
<感想・意見>
・和食を和食器で食べられたら視覚からも日本の文化を味わうことができるので是非そうしてほしい。
・家庭で焼き魚やひじきの煮物等の和食を出しても残そうとするので悩むが、学校の給食はありがたく、とても美味しいと毎日楽しみにしているようだ。
・子どもたちに和食の文化を伝える事はすばらしいと思う。
・貴重な体験だと思う、これからも続けられるといいと思う。
・親子で和食について考えるよい機会になった。
・和食器を使用するとマナーなども教える事が出来て良いと思う。家では十分に教えられないので、学校の授業で一度体験するだけでも子どもの心に残ってとても良いと思う。
・和食器の取扱い方、丁寧に扱わなければ割れてしまう、和の絵柄の素晴らしさなど学ぶことができ感謝している。
・食器は重要だと思う。子どもの食に関する思いも変わる。