教收第八〇八二號
昭和九年十二月十七日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市長　牛　塚　虎太郎　印
　東京府知事　香坂　昌康殿
　　　芝區内尋常小學校校數減少並位置指定ノ件
標記ノ件御指定相成度左記事項具申候也
　　　　　記
一、現在校數及廢止セントスル校數
　1　現在尋常小學校校數　　　　　　　十八校
　2　廢止セントスル尋常小學校校數　　　二校
二、廢止セントスル小學校名及位置
　1　廢止セントスル小學校名
　　　東京市臺町尋常小學校
　　　東京市高輪尋常小學校
　　右ノ二尋常小學校ヲ併合シテ一尋常小學校トス
三、右小學校ノ位置

四．市町村ノ地圖　　　別紙ノ通
五、校地ノ平面圖　　　別紙ノ通
六、校地ノ地質ト飮料水、附近ノ狀況現在及設置後ノ土地所有者
　イ　校地ノ地質　　　　高燥
　ロ　飮料水　　　　　　市水道
　ハ　附近ノ狀況　　　　樹木多ク高燥、閑靜ナル住宅地ニシテ校地トシテ最モ適當ナル地ナリ
現在及併合後ノ土地所有者

七、戸數、人口、學齡兒童數、就學兒童數
　(イ)　戸數　四〇、四七七(昭和八年十二月末日現在)
　(ロ)　人　口　二〇〇、〇七三(右　仝)
　(ハ)　學齡兒童數及就學兒童數　　別紙ノ通
八、現在及減少後ノ小學校別、學年別、學級數就學兒童數
　　　　　　　　　　　　　　　　　別紙ノ通
　　指定ヲ受ケントスル小學校ニ收容見込ノ學年別學級數、就學兒童數
　　　　　　　　　　　　　　　　　別紙ノ通
九、事　由
　　本市立臺町及高輪兩尋常小學校ハ何レモ木造建ニシテ二十年以上ヲ經過シ腐朽甚シク教育上遺憾ノ點多々
　　有り且兩校ハ他校ニ比シ兒童數少ク通學區域モ亦大ナラズ相接スル關係上昭和八年三月二十五日東京府告
　　示第一八六號ヲ以テ位置變更ノ指定ヲ受ケ更ニ昭和八年十一月十四日酉學第一〇九七八號ヲ以テ併合改築
　　ノ認可ヲ受ケ目下建築中ニシテ之ガ竣工ノ上兩校ヲ併合セシムルハ學校經營並教育上一層適切ナリト認ム
　　ルニ依リ之ヲ併合シ一校トセントスルモノナリ
　
戌學第一〇三九九號
昭和九年十二月二十日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　學　務　課
　　　東京市芝區内尋常小學校々數減少並東京市臺町尋常小學校ト東京市高輪尋常小學校合併・位置指定ノ件
　　　諮問並告示ニ關シ伺
標記ノ件左案ノ通東京市ニ諮問相成可然哉
　追而右諮問ニ對シ異議ナキ旨答申アリタルトキハ別案ニ依リ告示相成可然哉
　　　諮　問　案
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東　　京　　市
其市芝區内ニ設置スヘキ尋常小學校々數十ハヲ十七トシ、東京市臺町尋常小學校ト東京市高輪尋常小學校トヲ合併シテ一校トシ其位置ヲ左ノ土地ニ定メントス
右小學校令第九條ニ依リ其市ノ意見ヲ諮フ
　　　　年　月　日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　知　　事
一、東京市芝區二本榎一丁目十八番地ノ内、十九番地、二十番地、三十六番地、三十七番地ノ一　二、
　　三十八番地ノ内、十八番地先道路敷
(備考)
本件ニ關シテハ昭和八年三月二十五日告示第一八六號ヲ以テ前記ノ土地ニ、臺町、高輪兩小學校ノ位置ヲ後記ノ通變更指定シタルモ、當時區内、校數減少、兩小學校合併ノ手續ヲ了セサリシ爲本件ニ依リ之等ノ形式ヲ整ヘ、曩ニ合併スヘキ兩小學校ノ爲メニセラレタル位置指定ヲ合併ニ依リテ新設セラルヽ小學校ノ位置ノ指定ニ引直スモノニシテ實質上現狀ヲ變更スルコト、ナラサルモノナリ
一、昭和八年三月二十五日東京府告示第一八六號
　東京市高輪尋常小學校並臺町尋常小學校ノ位置ヲ左ノ土地ニ變更ス
　　昭和八年三月二十五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　知　　事
　一、東京市芝區二本榎一丁目十八番地ノ内、十九番地、二十番地、三十六番地、三十七番地ノ一　二、
　　　三十八番地ノ内、十八番地先道路敷
　
教收第八〇八二號
昭和十年三月十九日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市長　牛　塚　虎太郎　印
　東京府知事　横山　助成殿
　　　芝區内尋常小學校數減少並位置指定ニ關スル諮問ニ答申ノ件
昭和十年一月七日戌學第一〇、三九九號ヲ以テ芝區内尋常小學校校數減少並位置指定ニ關シ御諮問ノ處右ハ異議無之候也

(都公文書館資料)

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教收第八〇八二號
昭和十年三月十九日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市長　牛　塚　虎太郎
　東京府知事　横山　助成殿
　　　芝區内新設小學校ノ名稱並開校豫定期日ニ關スル件認可申請
標記ノ件左ノ通御認可相成度候也
　　　　　記
一　名稱　　東京市高輪臺尋常小學校
一　開校豫定期日　昭和十年三月二十五日
　　　追而校數減少並位置指定ノ告示年月日ト開校豫定期日ト同日付ニテ相願度候
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亥學発第二六五號
昭和十年三月十九日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　學　務　課
　　　東京市芝區内新設小學校々名開校豫定期日ニ關スル件
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東　　京　　市
昭和十年三月十九日付教收第八〇八二號申請新設小學校ノ名稱開校期日ニ定ムル件認可ス
　　昭和十年三月二十五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　知　　事
備考
一　名稱　　東京市高輪臺尋常小學校
一　開校豫定期日　　昭和十年三月二十五日
一　本校ハ高輪、臺町兩尋常小學校ヲ合併シタルモノナリ
　
　　　調書
一　本件ニ關シテハ曩ニ或ハ兩校後援會、或ハ同窓會等ヨリ屢々芝區ニ於テ決定セル校名ニ反對ノ陳情アリ。
　　即チ反對ノ趣意ハ高輪尋常竝臺町尋常ノ何レニモ關係ナキ名稱ヲ附與セラレ度キ希望ナリ。
　本件ニ付東京市教育局學務課長並芝區長ニ付調査セル所大要左ノ如シ。
○芝區長ノ意見
　兩校併合ニ際シ、兩校ノ後援會ハ一致ノ歩調ヲ取リ、新設校ノ名稱ハ兩校ノ名稱ニ全ク關係ナキモノヲ附スヘキ條件ヲ以テ區長之カ選定方ヲ委セタリ、故ニ區長ハ「大成尋常小學校」トシテ學務委員會ニ諮リタルニ學務委員ハ之ニ賛意ヲ表セス。由緖アル高輪ノ名稱ヲ廢スルハ不可トナシ學務委員ト兩校後援會トノ間ニ意思ノ疏通ヲ缺キ事態紛糾ノ虞アリシヲ以テ區會議長等ノ斡旋ニ依リ、兩者共白紙狀態ニ立歸リ改メテ區長ニ一任方決定セリ、故ニ區長ハ「高輪臺尋常小學校」ト定メ學務委員會及區會ノ決議ヲ經タリ。
　然ルニ兩校後援會ハ此ノ區長ノ措置ニ據ラス、區長カ前約ヲ無視シタルノ不都合ヲ攻メ、新校名ノ反對並既定計畫ノ寄附中止等ヲ爲スニ至ケリ。
　然レドモ理事者トシテハ既ニ正式ノ決議ヲ經タルヲ一部ノ反對ヲ理由トシテ再審議ニ附スルコトハ更ニ依リ重大ナル政治問題ヲ惹起スヘク、如斯コトアランカ事態益〻紛糾シ遂ニ收拾スヘカラサルニ至ラン、而シ目下ノ狀態ハ舊臺町尋常小學校ノ父兄ノ數人カ絕對反對ノ立場ニアルモ舊高輪尋常小學校ノ父兄及臺町尋常小學校ノ父兄ノ大部分ハ事情己ム得サルモノトシ殆ト鎭靜狀態ニアリ、依ツテ原案ニ依リ進行スルモ事態ハ容易ニ平靜ニ復シ得ル見込ナリ。
○教育局學務課長ノ意見
　本件ハ既ニ區會ノ正式ノ決議ヲ經テ決定セルモノシテ市トシテモ之ニ對シ更ニ政治的工作ヲ加フルノ必要ヲ認メス、且政治的工作ヲ用フルノ餘地ナク事態ハ原案通り認可アルヲ以テ落付モノト認ム。
一　大要以上ノ如キ狀態ニ付特ニ違法ノ決議又ハ不當ノ名稱ニアラサル限リ原案通リ認可スルノ己ムヲ得サルト認ム。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　調査者　　屬　伊　坂　修　一　印

(都公文書館資料)

　
【付記】台町尋常小学校と高輪尋常小学校は、いずれも木造校舎の老朽化が進む一方、児童数も少ないところから、両校を合併することとしたが、合併後の学校の名称について、地元後援会と学務委員との間に意思疎通を欠き、一時紛糾したが、最終的に「高輪台尋常小学校」と称することで決着した。