港区立学校適正規模等調査会の報告

六〇港教学第三四号
 港区立学校適正規模等調査会長 殿
   港区立学校適正規模等港区立学校適正規模等の調査について
 区立学校における望ましい集団規模による充実した学校教育の実現に資するため、下記の事項について調査・検討をお願いします。
  昭和六十年四月十八日
                               東京都港区教育委員会
     記
一 港区立学校における適正規模について
二 港区立学校の通学区域について
      ――――――――――――――――――――
 
昭和六十一年三月二十八日
 港区教育委員会殿
                           港区立学校適正規模等調査会
                              会 長 高 倉   翔
   港区立学校における適正規模等について(報告)
 昭和六十年四月十八日に依頼をうけた調査・検討事項について、九月十四日に中間報告をいたしましたが、調査・検討を終えましたので下記のとおり報告します。
     記
一 調査・検討にあたっての基本的考え方
  次の時代を担う心身ともに健康な幼児、児童、生徒を育成するという教育の基本的な目標を実現するため
 に、教育の機会の実質的な均等化をはかる必要がある。
  港区としても地域の変貌や家族構成、家庭の機能の変化等を考慮しつつ、教育効果の向上をめざし区立学
 校の規模条件の均質化と望ましい集団規模による充実した学校教育の実現に努めなければならない。
  この基本的考え方にもとづき適正規模、通学区域について調査・検討をした。
二 港区の幼稚園、小・中学校の現状と課題
  港区は、都心区として中枢管理機能の拡大などにより業務立地化がすすみ、生活環境に大きな変化が生
 じ、夜間人口の減少と昼間人口の増大傾向がみられる。
  このような状況のなかで、港区は定住人口の確保に努めているが、戦後の人口は、昭和三十五年の二十六
 万七千人をピークに年々減少し、現在十九万四千余人である。
  幼児、児童数は一部の地域で増加もみられるが、全体として減少傾向にあり、しかも地域によっては著し
 く減少し、学校の規模が小さくなってきている。一方、大規模校も存在している。
  そのため、教育効果や学校運営上種々の問題が起こってきている。
(一) 港区の公立幼稚園は、明治二十三年の中之町幼稚園設立にはじまるが、昭和三十年代後半までの幼稚園
  教育は、ほとんど私立幼稚園に依存していた。その後、住民の区立幼稚園増設の要望にこたえ、一小学校
  区一園を原則として各小学校に併設した。併設の余地がない場合においては、小学校に近い場所に独立園
  舎を設置することで整備をすすめてきた。
   昭和六十年度現在、区立幼稚園は二十五園設置されており、専任園長を配置した独立園は二園、園舎だ
  け独立し園長が小学校長と幼稚園長を兼任している園は五園、小学校に併設し園長が小学校長と幼稚園長
  を兼任している園は十八園である。
   幼稚園の規則別では、五学級園は一園、四学級園は八園、二学級園は十六園である。
   一学級の幼児数については、文部省の幼稚園設置基準によれば四十人以下を原則としているが、港区は
  幼児数の減少等により四十人定員を昭和五十二年度から五か年計画で逐次定員減をはかり、現在三十人
  (一部例外として三十二人)となっている。
   なお、二十三区平均一学級の定員は三十五人である。
   区内在住幼児の状況をみると幼稚園、保育園にほとんど就園している。昭和六十年度の園児数の割合は
  区立幼稚園二十五園で四十三・三%、私立幼稚園二十園で三十二・五%、公私立保育園十九園で十九・九
  %、その他は四・三%である。これらの就園割合については、近年著しい変化はみられない。
   しかし、幼児人口の減少に伴って私立幼稚園においては休園せざるをえない園が出現している状況で
  ある。
   区立幼稚園についても園児数が著しく少ない園が出現しており、昭和六十年度に四歳児の園児数が定員
  に満たしていない園は二十一園、十人未満の園は四園である。
   このような状況のなかで、区立幼稚園整備の基本的な考え方であった一小学校区一園の設置についても、
  適正な規模の視点から独立園整備構想をふくめて見直す時期にきている。
   住民の幼児教育への多様な要望をふまえて、公私立幼稚園相互の円滑な運営及び幼児教育の振興をはか
  るため、昭和四十八年から港区公私立幼稚園調整審議会が設置されている。
(二) 港区にはじめて公立小学校が開設されたのは、明治三年の鞆絵小学校にさかのぼる。その後、明治五年
  の学制発布に伴い、順次開校され、歴史的に古い学校が多い。
   小学校の規模については、学校教育法施行規則によれば、十二~十八学級を標準としている。
   昭和六十年度現在、区立小学校二十七校のうち、全学年が単学級である学校は八校、学年に単学級のあ
  る学校は四校ある。
   また、十九学級以上の学校は五校ある。
   一学級の児童数については、現行基準一学級四十五人であるが順次移行しつつある四十人学級の基準を
  大きく下まわる二十人以下の学校は四校ある。
   今後の人口動向をみると、二十人以下の単学級が出現する小学校は、さらに増加する状況にある。近い
  将来、制度上複式学級編成にせざるを得ない状況も想定される。
(三) 区立中学校は、昭和二十二年の学制改革により港区においても順次整備されてきた。
   昭和六十年度現在、区立中学校十一校のうち、八学級以下の学校は一校、十九学級以上の学校は一校あ
  る。
   生徒数は、近年において昭和五十九年度までは増加傾向にあったが、昭和六十年度は減少しており、人
  口動向からみて今後も減少する傾向にある。中学校では、教科担任制のため、規模が小さくなると組織編
  成及び教科経営上問題が生じてくる。
(四) 現行の通学区域については、昭和四十四年に東京都港区立中学校の通学区域に関する規則で定めてい
  る。
   小学校の通学区域をみると、おおよそその面積は最小〇・一六k㎡、最大二・七四k㎡、また通学距離は
  直線で最小三百七十mから最大千四百六十mである。
   中学校の通学区域の面積も最小〇・九〇k㎡、最大四・三三k㎡であり、通学距離は最小八百六十mから
  最大二千二百mとなっている。
   港区においては、近年土地利用の変化や業務立地化等により住居の移転があり、各学校の児童生徒数に
  不均衡が生じている。また、校地や施設等についても使用上種々の問題が起きている。
   地理的理由や児童、生徒の身体的理由によるもののほか、地域や学校に対する愛着心等を理由として、
  指定した学校以外への通学や他区から通学を望むものも少なくない。
三 意見
 (一) 適正規模について
  ① 幼稚園については、一学級の規模は四・五歳児とも各々二十五~三十人とし、各歳ごとに少なくとも
   二学級編制が望ましい。
    各歳一学級園を存置する場合でも、幼児数が著しく少なく、かつ増加が見込みがたい園については、
   今後もなんらかの対応策を講ずることが望まれる。
  ② 小学校については、十二~十八学級を標準とすることが望ましい。
    港区の実態を考慮しても、全学年が単学級または一学年が二十人未満になるなど児童数が著しく少な
   く、かつ増加が見込みがたい小学校については、なんらかの対応策を講ずることが望まれ、十九学級以
   上の小学校についても配慮が必要である。
  ③ 中学校については、十二~十八学級を標準とするが、全学年で九学級以上は確保することが望ましい。
    港区の実態を考慮しても、一学年で二学級以下になるなど生徒数が著しく少なく、かつ増加が見込み
   がたい中学校については、なんらかの対応策を講ずることが望まれ、十九学級以上の中学校についても
   配慮が必要である。
 (二) 通学区域について
  通学区域は、地理的条件のみならず社会的諸条件、交通事情等も配慮し、適正な学校規模の確保を要件と
 して設定することが望まれる。
  主に地理的理由または児童、生徒の身体的理由による指定校変更や区域外就学については、適正規模の確
 保及び通学区域維持の観点からも、慎重に対処する必要がある。

(港区教育委員会資料 昭六一)