港区立学校適正規模等審議会の中間答申

六二港教学第四六九号
東京都港区立学校適正規模等審議会
 
 港区立学校においては、心の交流と自然や文化とのふれあいを通じて自主性・創造性並びに社会連帯意識に富んだ気品と知性と実践力のある幼児・児童・生徒の育成を目指した教育を推進している。
 近年、区立学校をめぐる環境には、急激な業務立地化の影響を受け定住人口とりわけ年少人口(十五歳未満)が著しく減少し、また、その地域的差異もみられるなど大きな変化が生じている。
 このような状況と生涯学習社会及び国際化社会などを展望し充実した学校教育の実現に資するため、「区立学校の適正規模、適正配置及び通学区域について」の基本的考え方並びに具体的方策を諮問する。
  昭和六十二年十月六日
                               東京都港区教育委員会
 
昭和六十三年七月十八日
 東京都港区教育委員会
  委員長  上田 健一殿
                        東京都港区立学校適正規模等審議会
                             会 長  高 倉   翔
 港区立学校の適正規模、適正配置及び通学区域についての基本的考え方及び具体的方策について(中間答申)
 昭和六十二年十月六日に諮問のあった標記の事項について、中間のとりまとめをおこなったので、別紙のとおり答申をいたします。
一 はじめに
 東京都港区立学校適正規模等審議会は、昭和六十二年十月六日に東京都港区教育委員会から、
   「近年、区立学校をめぐる環境には、急激な業務立地化の影響を受け定住人口とりわけ年少人口(十五
   歳未満)が著しく減少し、また、その地域的差異もみられるなど大きな変化が生じている。
   このような状況と生涯学習社会及び国際化社会などを展望し充実した学校教育の実現に資するため
   『区立学校の適正規模、適正配置及び通学区域について』
   の基本的考え方並びに具体的方策を」
との諮問を受けた。
 諮問に際し、港区教育委員会委員長から、「昭和六十四年九月を目途に答申を受けたいが、なお、港区の状況の変化に対応して適宜、意見を戴きたい。」旨の要請があった。
 本審議会は、審議にあたって区立学校(幼稚園・小学校・中学校)の現状を認識し、審議の内容をより深めるとともに効率的な運営を図るため、第一部会(幼稚園・小学校)、第二部会(中学校)及び、第三部会(第一・第二部会の調整)を設置し、審議会九回、部会を延べ二十七回開催し、審議を進めてきた。
 その間、港区の将来動向について理解を深めるため区長部局より「街づくり及び定住人口の確保の施策」について説明を受けるとともに、区立学校が現実に抱えている問題やその対応につき、学校教育や地域活動等に常時携わっている人々から卒直な意見を戴くほか、各委員がその立場から得た情報の提供をはじめ各方面の意見等を参考とするなど慎重な審議に努めてきた。
 本年四月に「昭和六十三年度、区立学校の幼児・児童・生徒数について」が報告された。それによると区立学校の幼児・児童・生徒数は前年に比較し大幅に減っており、それはほとんどの学校でみられる現象である。
 また、学級減も顕著であり、昭和六十二年度と比べると、小学校では十九学級、中学校においても十四学級の減少があった。
 とりわけ、小学校では、学年の欠ける学校が一校から二校になり、各学年が一学級の学校が九校から十校になっている。
 このような状況は予測を上回るものであり、教育上極めて憂慮するものがある。
 そこで、昭和六十四年九月に向けて長期的展望に立ちつつ審議を深める一方、早急な対応が求められる課題につき中間答申を行うこととした。
二 審議会の基本的視点
  教育は教育基本法にあるように、究極的には人格の完成を目指すものであり、この目的を実現するために
 は知育・徳育・体育の調和のとれた教育が重要である。
  この観点に立ち、次代を担う幼児・児童・生徒がひとしく適切な教育を受け、その個性と創造性の伸長が
 図られるための教育の諸条件の充実が肝要である。
  本審議会は、このことを基本的視点に据え、港区の特性及び区立学校をめぐる今日的状況及び将来動向を
 踏まえ、次の事項について審議を進める。
  なお、審議に際しては学校教育に係わる現行の諸制度を前提としつつ、将来的展望にも配慮していくこと
 とする。
 ① 適正規模による集団教育効果など、よりよい教育環境の確保
 ② 通学圏、地域性を配慮した学校配置と通学区域の見直し
 ③ 個性と創造性を育むための学校環境の整備
 ④ 国際化、情報化、高齢化社会をむかえての対応
 ⑤ 伝統や長い歴史を尊重するなかで新しいコミュニティの核としての位置付け
三 審議経過
   〔略〕
四 緊急課題
 (一) 幼稚園の学級定員は、幼児期における集団教育を通じて社会性の育成をはかりつつ、個々の幼児の発
   達に対応したより充実した教育を進めるために、これまでの三十~三十二人定員を見直し、将来は二十
   人定員を目指し当面二十五人定員の実現に向けて対応する必要がある。
    このことは、全園の実施可能な時期を待つことなく段階的実施を検討するなど、弾力的な対応が必要
   である。
 (二) 小学校の現状を見ると、新橋・虎ノ門・愛宕、芝、赤坂地区に小規模校が集中している。これらの地
   域においては、年少人口が減少し、今後も増加が見込みがたい状況にある。また、年少人口の減少にと
   もない他の地区においても、児童数の減少が進んでいる学校が見られる。
    そのため、望ましい教育環境を確保し、充実した学校教育を推進していく観点から、特に年少人口が
   著しく減少し、今後も増加が見込みがたい上記の地区に存在する小学校については、学校の規模及び通
   学区域の均衡を総合的に勘案しながら、その配置についての考え方及び具体策について今後も審議して
   いくことが必要である。
    しかしながら、芝地区における竹芝小学校においては、二年間連続して一年生が入学せず欠学年が生
   じ、学校の全児童数が、四十一人で四学級という状況となった。
    竹芝小学校の輝かしい歴史と伝統に深い想いをいだきつつも、かかる状況のまま存置しておくこと
   は、本審議会の基本的視点に鑑みて、容認しがたいものといわざるをえない。
    したがって、隣接する地域の学校との通学区域などを勘案し、是正のための具体的方策を講ずること
   が強く望まれる。
 (三) 学級規模については、年少人口の急激な減少を反映し四十一人以上の学級は小学校においては八・四
   %、中学校においては四十三・七%であり、昭和六十四年度には小学校でわずか五%中学校で二十%と
   なる見通しである。
    このような実態を踏まえるならば、学校教育の充実を求める保護者・住民の強い願いを勘案し、関係
   機関に対し四十人学級の実現に向けて早急に働きかける必要がある。
   以上が、緊急に対応すべき課題であり、特に急激な状況の変化による早急な対応が迫られている下記の
  事項について提言を行うものである。
 
一 幼稚園の二十五人学級につき弾力的対応を図ること。
一 竹芝小学校について早急に適切な対応をすること。
一 小学校・中学校の四十人学級の早期実現に努めること。

(港区教育委員会資料 昭六三)