竹芝・芝小学校の統合問題

   竹芝小は廃校の公算
    新入生が連続ゼロ春にも芝小と統合か
 猛烈な地上げの波にさらされて、区民の流出が相次いでいる港区で、新入生が二年連続ゼロとなった竹芝小学校が廃校となる公算が大きくなった。区の学校適正規模等審議会(会長・高倉翔筑波大学教授)が、区教育委員会に十八日に提出した中間答申で「教育の充実のために、早急に適切な対応を」としたためで、来春にも隣の芝小学校と統合されることになる。同じ人口減に悩む中央区でも小学校の統廃合の計画が進んでおり、都心の空洞化は、とうとう学校まで追い出されてしまう事態になった。
 報告書によると、竹芝小は現在三年以上の各学年に一学級ずつ計四十一人の児童が在籍。しかし、今年入学を迎えた九人は、余りに学校が小さく集団生活が十分でない、などの理由で、隣り合う別の小学校に通っている。来年以降に進学が見込まれる五歳以下の子供は、学区内に各年齢それぞれ十人しかおらず、別の学校への進学希望を考えると、複式学級になる可能性すらある。
 審議会では、複式学級について「学習内容を深めることと教員の指導の限界からして、避けるべきだ」と判断。このまま放置することは教育のために「容認しがたい」として、隣接学校との統合を強く求めている。
 竹芝小は、明治三十九年の創立。一時は千人を超す児童がいた伝統校の一つ。区教委では、八月中にも正式な態度を決定し、夏休み明けにも住民への説明活動に入ると見られる。
 同区内では、竹芝小だけでなく、桜田小も新入学児童がゼロ。さらに区立幼稚園は、両小学校に併設されている竹芝、桜田両園のほか鞆絵幼稚園も募集停止に追い込まれており、今後は竹芝小だけでなく他の小学校を含む全面的な統廃合が大きな課題となって行きそうだ。

(『朝日新聞』昭六三・七・一九)


 
竹芝小学校の私たちにご理解を
   数か月で吸収合併はやめて下さい!
 
 港区教育委員会は、来年四月から竹芝小学校を芝小学校に吸収合併する「基本的方向づけ」をきめ、竹芝小学校の保護者および地元住民へ「理解と協力」を求めて、八月はじめより九月末にかけて熱心な説明会が重ねられました。
       「本答申まで〝凍結〟」を
 説明会を開くたびに保護者の心配がひろがり、はじめは役所のきめたことだからいたし方ないのではと考えた方々も含めて、十月はじめの保護者会では来年(六十四年)九月に予定されている「港区立学校適正規模等審議会」の本答申まで「方向づけ」を凍結するよう港区教育委員会に申し入れることをきめました。
       「小さい学校の良さを活かして」
 私たちの竹芝小学校は、三・四・五・六年の四学年三十九名の小さな学校です。先生方も父兄も一人一人の子供のことをよく知っており、世間でいわれる〝小規模校の問題点〟を他校の方々より知ってきたつもりです。ですから歴代の校長先生をはじめ教職員の方々と一緒になって努力もさせていただきました。そして小さな学校ならではという素晴しい学校生活やPTA活動をしてきました。大きな学校が良いか、来年からの四・五・六年生しかいない学校を選ぶかを問われれば、どなたでも前者をとることと思います。私たちのある学年は入学当時に心配して、竹芝小学校への入学をためらったのですが、小さい学校でも立派な教育をしますという、学校側のお話でこれまでの学校生活をつづけてきたのです。新規に学校を選ぶこととそこのところが大きく違うのです。
       「廃校は覚悟していました」
 町の中には大きなビルが立ち、友だちやお仲間が次々と引越してゆき、竹芝小学校の「廃校近し」ということはみんな覚悟していたことです。ですから「方向づけ」が出されたときはこれが最後かと思う人もありました。八十年をこえる竹芝小学校の統廃合が七月十八日「中間答申」発表、七月二十六日の教育委員会の「方向づけ」と矢つぎ早やに打ち出され、三か月ほどの間に吸収合併を迫られても、心配がふえるばかりです。
 幸い私たちの心を察してくださる方々もふえておりますので、これからもよろしくおねがいいたします。
  昭和六十三年十月七日
                             港区立竹芝小学校保護者会

(港区教育委員会資料)