赤坂小学校と檜町小学校の統合(平3)

  協議経過
1 区立学校適正規模への取組み
 港区は、都心区としての特性から業務地化の影響を強く受けるとともに、少子化傾向の中で定住人口とりわけ年少人口の減少が顕著となっている。
 教育委員会は、昭和五十九年三月に「港区における生涯教育の施策の方向づけについて」の課題を設定して「学校の統廃合」及び「社会教育の施策」について協議を重ねてきた。
 このような取組みの中から昭和六十年に「区立学校適正規模等調査会」を、更に事務局の組織整備を行った後、昭和六十二年に「区立学校適正規模等審議会」を設置し「区立学校の適正規模、適正配置及び通学区域についての基本的考え方並びに具体的方策について」を諮問した。
 教育委員会は、上記「調査会」の報告及び「審議会」からの答申を受けて、極端に小規模な学校については、一定の規模による集団教育効果の確保等、望ましい教育環境を目指すとの「基本的方向づけ」をした。
 これを踏まえ教育委員会は、関係者の理解と協力を得ながら桜田、鞆絵及び竹芝幼稚園の園児募集停止そして廃止、平成元年四月に竹芝小学校と芝小学校との統合を行った。
 次いで、桜田、桜及び鞆絵の三小学校の統合による御成門小学校を平成三年四月に新設した。
 これらの対応は、次代を担う子供たちにとってより良い教育を願うためのやむを得ない選択であった。
 
2 赤坂地区の小学校の現状と将来展望
 赤坂小学校の小規模化の傾向は近年顕著となっており、教育委員会はその動向に注目し、学校間交流の推進等、教育効果の維持に努めてきた。
 しかしながら、平成三年度において新一年生の就学児童が無く、児童の転出等により三年生及び五年生が欠学年となるとともに、全校児童数が三十五名という事態に立ち至った。
 赤坂幼稚園においても、平成三年度から、新入園児が無く、年長児も転園し、実質的な休園状態となった。
 氷川小学校は、学齢人口の減少に伴い小規模化の傾向をたどり、現在は全学年単学級で全校児童数七十七名という状況となっている。学区域内の未就学児童数とその就学率を考慮すると、この傾向は今後も続くことが予測される。
 檜町小学校は、これまで比較的安定した児童数を確保してきたが、近年在籍児童数の漸減傾向が見られ、近い将来には全学年が単学級の学校となることが推測される。
 赤坂地区における業務地化の傾向は今後も予測され、年少人口の増加は見込みがたいと言える。
 また、学齢人口に対する就学率の推移を見ると、大幅な児童数の増加を期待する方途を見いだすことは困難である。
 一方、赤坂小学校や氷川小学校の児童数を確保するために檜町小学校の学区域を変更しても、三小学校が共に小規模化することになり、適切な対応策とは言いがたい。
 
3 赤坂地区への対応
 教育委員会は、このような赤坂地区の現状と将来展望を踏まえ、赤坂地区全体の児童にとってのより良い教育環境の確保について保護者等学校関係者と共に考えて行くとの立場を基本とした。
 この観点から教育委員会を挙げて地域に出向き、赤坂小学校のみならず氷川小学校及び檜町小学校の保護者等に対して必要な資料を提供し、説明を行うとともに意見交換を重ねるなど、赤坂地区の状況について共通認識を持つことや、地域の意向を掌握することに努めた。
 この中で、三校関係者ともに「将来的に赤坂地区の小学校は一校とならざるを得ない状況にある。」また「三小学校統合に当たっては、その時期、学校名及び学校の位置が重要な課題である。」との認識を持つに至った。
 以上の経過にもとづき教育委員会は、これまで重ねてきた話し合いを次のABCの三案に集約して三校の保護者代表に対して、この旨を説明するとともに、各校での検討を依頼した。
 
(A) ①平成四年度に三小学校を同時統合し、新校を設置する。
  ②統合後の校舎は、檜町小学校の校舎を活用する。
  ③新校名は、三校の関係者と教育委員会で検討する。
(B) ①平成四年度に赤坂小学校と氷川小学校を統合し。新校を設置する。
  ②統合後の校舎は、氷川小学校の校舎を活用する。
  ③新校名は、二校の関係者と教育委員会で検討する。
  ④赤坂地区の小学校が一校となる時期は、檜町小学校が単学級校となった時、新校が複式学級または欠学
   年となった時、あるいは、新校・檜町小学校関係者と教育委員会の協議が整った時。
(C) ①平成四年度に赤坂小学校と檜町小学校を統合し、新校を設置する。
  ②統合後の校舎は、檜町小学校の校舎を活用する。
  ③新校名は、二校の関係者と教育委員会で検討する。
  ④赤坂地区の小学校が一校となる時期は、氷川小学校が複式学級または欠学年となった時、あるいは、新
   校・氷川小学校関係者と教育委員会の協議が整った時。
 
 このことを踏まえて行われた保護者代表との話し合いにおいて、「平成四年四月一日の三小学校同時統合は困難である。三校関係者が共通の基盤に立つためには、なおしばらくの話し合いの期間が必要である。しかし、赤坂小学校は緊急対応として平成四年度に檜町小学校と統合する」との合意を得るとともに、三小学校統合にかかわる具体的対応については引き続き話し合いを継続していくこととなった。
 
4 赤坂地区の学校教育にかかわる「基本的方向づけ」について教育委員会は、以上の意見交換の経過を踏まえた次の趣旨による「基本的方向づけ」を示し、保護者、同窓会、地域住民等関係者に対して早期に理解と協力が得られるよう努めていくことを確認した。
 (1) 赤坂地区の三小学校について
 氷川、赤坂及び檜町の三小学校それぞれが輝かしい歴史と伝統を持つ学校であることを尊重しつつも、在籍する児童及び将来就学する児童を考えるとき、三小学校を早期に統合し、新たな小学校を設置することが望ましい。
 三小学校統合に当たっては、これまで地域関係者が培ってきた赤坂地区の地域的連帯性をそこなうことなく、また、三小学校が相互にそれぞれの主体性を尊重する立場での統合であることが肝要である。
 また、学校規模の推移等を考えると、可能な限り早期に統合することが望ましく、そのための協議を進めていく必要がある。
 なお、檜町小学校の校舎は、二十一世紀を見据えた新しい学校教育に対応する施設として平成二年に改築されたものであり、また、位置的にも児童が通学可能な距離にあること等から、新たに設置する学校は檜町小学校の校舎を活用していくこととする。
 (2) 三小学校統合にかかわる協議について
 保護者等学校関係者と意見交換を進める中で「基本的方向づけ」を協議してきた経緯にかんがみ、「赤坂地区の小学校はその現状から可能な限り早期に一校とせざるを得ない。」また「赤坂小学校は平成四年度をもって檜町小学校と統合を行うべきである。」との認識を前提としつつも、各校それぞれの現況等に十分に配慮し、共通認識を得るための慎重な対応が必要である。
 したがって、新校名等三小学校統合に関する事項について関係者の合意を得るための協議組織を早期に設置し、赤坂小学校が檜町小学校と統合する平成三年度末を目途に、意見を調整していく必要がある。
 (3) 赤坂小学校について
 赤坂小学校は、近年の都市化の影響を大きく受け児童数の減少が著しい。
 同校がこれまで果たしてきた役割を考えるとき、極めて残念なことではあるが、より良い教育環境を確保するとの観点から、平成四年四月一日をもって檜町小学校と統合せざるを得ないと判断する。
 なお、両校統合後の校名は、協議組織において新校名が決まるまでの間、檜町小学校とする。
 (4) 赤坂幼稚園について
 赤坂幼稚園は現在休園状態にあり、対象人口の現状と将来動向、幼児の通園距離などを考慮し、平成三年度末をもって廃止することとする。

(『港区教育委員会会議録』平三)


      ――――――――――――――――――――
 議案第十三号 東京都港区立赤坂小学校の廃止について
   学務課長が、議案の提案理由について次のとおり説明した。
   赤坂地区の区立学校問題については、平成三年第一回教育委員会定例会から継続して協議を重ね、第八
  回教育委員会定例会において「基本的方向づけ」が決定された。その後八月二十九日、三十一日と赤坂小
  学校同窓会役員及び保護者に対し、「基本的方向づけ」についての説明会を開催し、理解と協力を得るよ
  う努めてきたが、大方の理解を得ることができたものと考え、本議案を提案するものである。
   なお、本案議決後は、港区立学校設置条例の改正を、第三回定例区議会に提案することとなる。
   採決の結果、出席委員全員の賛成をもって原案どおり可決した。
 
  (原案)
   東京都港区立赤坂小学校の廃止について
 東京都港区立赤坂小学校を左記のとおり廃止する。
     記
一、名称    東京都港区立赤坂小学校
一、位置    東京都港区赤坂四丁目一番二十六号
一、廃止期日  平成四年三月三十一日
   平成三年九月三日
                               東京都港区教育委員会
 
 議案第十四号 東京都港区立赤坂幼稚園の廃止について
   学務課長が、議案の提案理由について次のとおり説明した。
   港区立赤坂幼稚園は園児が在園せず、また、同園を併設している港区立赤坂小学校が廃止されることに
  伴い、本議案を提案するものである。
   なお、本案議決後は、港区立学校設置条例の改正を、第三回定例区議会に提案することとなる。
   採決の結果、出席委員全員の賛成をもって原案どおり可決した。
 
  (原案)
   東京都港区立赤坂幼稚園の廃止について
 東京都港区立赤坂幼稚園を左記のとおり廃止する。
     記
一、名称    東京都港区立赤坂幼稚園
一、位置    東京都港区赤坂四丁目一番二十六号
一、廃止期日  平成四年三月三十一日
   平成三年九月三日
                               東京都港区教育委員会

(『港区教育委員会会議録』平三)


三港教学第九八七号
平成四年二月十三日
 東京都教育委員会殿
                               東京都港区教育委員会
   公立学校の廃止について(届出)
 このことについて、下記のとおり港区立赤坂小学校を廃止しますので、学校教育法施行令第二十五条一号の規定により、関係書類を添えてお届けいたします。
     記
一 事由
 近年港区は、都心区としての特性から業務地化が進行し、またその地域的偏在が見られる。
 このような中で、定住人口とりわけ年少人口の減少が著しく、極端に小規模な区立小学校が出現した。
 このことに対応するため港区は、平成元年に竹芝小学校を廃止し芝小学校へ統合、平成三年には桜田・桜・鞆絵の三小学校を廃止して新たに御成門小学校を設置するなど、港区の次代を担う児童に良好な教育環境を確保するとの観点から学校統廃合を実施してきた。
 赤坂小学校においても小規模化の傾向は近年顕著となり、港区教育委員会はその動向に注視し、学校間交流の推進等、教育効果の維持に努めてきた。
 しかし、平成三年度の学級編成において新一年生の入学が無く、児童の転出等により三年生及び五年生の学年が欠けるとともに、全学年で三十五名という状況に立ち至った。
 赤坂小学校の状況は、赤坂地域全体におよぶ地域教育環境整備の問題であるとの認識から、赤坂地区に設置されている赤坂・氷川及び檜町小学校の関係者と協議を行い、別添「赤坂地区の学校教育について」の基本的方向づけを行った。
 このことに基づき、平成三年九月三日開催の第十回教育委員会臨時会において赤坂小学校を平成四年三月三十一日をもって廃止することを決定し、平成三年九月二十七日開催の第三回定例区議会において赤坂小学校の廃止を内容とする「東京都港区立学校設置条例」の一部改正が議決された。
 さらに、平成三年十月八日開催の第十回教育委員会定例会において、平成四年四月一日から赤坂小学校の学区域を檜町小学校の学区域と統合することを内容とした「東京都港区立学校の通学区域に関する規則」の改正を議決した。
二 名称
 東京都港区立赤坂小学校
三 所在地
 東京都港区赤坂四丁目一番二十六号
四 廃止の時期
 平成四年三月三十一日
五 児童の処置
 現在、赤坂小学校に在籍する児童は、隣接する港区立檜町小学校(赤坂八丁目十三番二十九号)に平成四年四
 月一日をもって就学する。
六 平成四年度港区立檜町小学校の児童数予測〔略〕

(港区教育委員会資料 平四)