1 区立学校適正規模への取組みについて
港区は、都心区としての特性から業務地化が進行し、定住人口とりわけ年少人口(〇~十四歳)の減少が著しい。また、その地域的偏在も顕著になっている。
このような状況に対して、教育委員会は、次代を担う子どもたちのより良い教育環境の確保を目指し、昭和六十二年に港区立学校適正規模等審議会を設置し、平成元年に「港区立学校の適正規模、適正配置及び通学区域についての基本的考え方並びに具体的方策について」の答申を受けた。
教育委員会はこの答申に基づき、「区立学校においては、望ましい規模による集団教育効果を確保するための教育環境の整備を目指す必要がある。しかし、併せて本区の地域特性を踏まえた幼稚園、小学校、中学校それぞれについての『港区としての小規模校』の考え方により、教育効果を維持していくための諸条件を考慮する中で、少人数の学校の存置も考えざるを得ない。」との趣旨の基本的方向づけをおこなった。
しかし、欠学年や複式学級が生ずるなど極端な小規模化により、やむを得ず学校を廃止・統合する場合は、幼児・児童・生徒の不安解消のため最大限の配慮をするとともに、学校関係者及び地域の理解と協力が得られるよう努めてきた。
平成元年の竹芝小学校と芝小学校の統合並びに平成三年の桜田小学校、桜小学校及び鞆絵小学校の統合による御成門小学校の新設は、次代を担う子どもたちにとってのより良い教育環境の確保を目指すとともに、将来にわたり芝地区及び御成門地区のそれぞれの核となる学校として存置すべきものとして位置づけたものである。
2 「赤坂地区の学校教育について」の基本的方向づけ
平成三年度の学級編制において。赤坂地区の小学校の就学状況は次のとおりであった。
学校名 | 学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 合計 |
赤坂小学校 | 児童数 | 〇人 | 八人 | 〇人 | 八人 | 〇人 | 一九人 | 三五人 |
学級数 | ― | 一 | ― | 一 | ― | 一 | 三学級 | |
氷川小学校 | 児童数 | 六人 | 八人 | 一五人 | 一三人 | 二〇人 | 一五人 | 七七人 |
学級数 | 一 | 一 | 一 | 一 | 一 | 一 | 六学級 | |
檜町小学校 | 児童数 | 五一人 | 四二人 | 五二人 | 四四人 | 五四人 | 五〇人 | 二九三人 |
学級数 | 二 | 二 | 二 | 二 | 二 | 二 | 一二学級 |
平成三年五月一日現在 学校基本調査 |
教育委員会は、とくに赤坂小学校の状況を緊急かつ重大な事態とうけとめるとともに、赤坂地区の年少人口の将来動向を踏まえるならば赤坂地区全体の観点に立った教育環境の整備が必要であると認識し、このことについて赤坂、氷川及び檜町の三小学校の保護者など学校関係者とともに考えていくとの立場を基本として、意見交換を重ねてきた。
また、地域においても三小学校の保護者を中心として赤坂地区全体の教育環境の整備について考える気運が醸成され、主体的な取り組みがはじめられた。
その中で、三校関係者は「将来的に赤坂地区の小学校は一校とならざるを得ない状況にある。」との共通認識をもつに至った。しかし、「平成四年四月の三校同時統合は困難である。三校関係者が共通の基盤に立つには、なお話し合いの期間が必要である。しかし、赤坂小学校は当面の緊急対応として平成四年四月一日に檜町小学校と統合する。」との共通認識が得られたので、教育委員会は平成三年八月十三日に次の「赤坂地区の学校教育について」の基本的方向づけをおこなった。
基本的方向づけ
(1) 赤坂地区の三小学校について
赤坂地区における年少人口の将来動向等を踏まえ、氷川、赤坂及び檜町の三小学校を可能な限り早期に
統合し、この地域の核となる小学校を新設する。
新たに設置する小学校は、現檜町小学校の校舎を活用する。
(2) 三小学校統合にかかわる協議について
教育委員会と氷川、赤坂及び檜町の三小学校関係者が、早急に協議組織を設置し、本年度末を目途に新
校名等統合にかかわる必要事項について協議を進める。
(3) 赤坂小学校について
赤坂小学校はその現状にかんがみ、緊急な対応が必要なことから平成四年四月一日をもって檜町小学校
と統合し、赤坂小学校の在籍児童は檜町小学校へ就学する。
なお、新校名が決まるまでの間、校名は檜町小学校とする。
(4) 赤坂幼稚園について
休園状態にある赤坂幼稚園は、平成三年度末をもって廃止する。
この「基本的方向づけ」に基づき教育委員会は、平成四年三月三十一日をもって赤坂小学校及び赤坂幼稚
園を廃止し、平成四年四月一日に赤坂小学校と檜町小学校の学区域を統合した。
それとともに、三校の関係者と教育委員会事務局職員により構成された「赤坂地区の教育環境を考える協
議会」において、二校統合にかかわる教育環境整備についての協議が続けられた。
3 氷川小学校及び檜町小学校の統合について
教育委員会は、「赤坂地区の学校教育について」の基本的方向づけにおける「三小学校を可能な限り早期に統合」の趣旨を踏まえ、各校の保護者及び学校関係者との意見交換を重ねるとともに、教育委員会を挙げて地域に出向き地域の意向を掌握することに努めた。
そのような中で、氷川小学校と、先に赤坂小学校との統合を経た檜町小学校とが平成五年四月一日をもって統合することについて、保護者や学校関係者の共通理解が得られるにいたった。
平成三年当初からの教育委員会の取り組み及び平成三年八月十三日の「基本的方向づけ」を踏まえるならば、この氷川小学校と檜町小学校の統合は名目的には二校の統合であるが、赤坂地区の赤坂小学校、氷川小学校及び檜町小学校の三小学校の段階的統合の完結といえよう。
歴史と伝統のあるそれぞれの学校が、これまで地域に果たしてきた役割に思いをいだきつつも、次代を担う子どもたちのためのやむを得ない選択である。
また、各学年二学級の規模をもつ檜町小学校をはじめ氷川及び赤坂小学校の関係者が、赤坂地区の教育環境整備の将来的展望と地域的連帯感をもって、赤坂地区の核となる新小学校設置に向けて取り組んだ労については特記すべきである。
平成四年度赤坂地区の小学校の児童数は左記のとおりである。
学校名 | 学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 合計 |
氷川小学校 | 児童数 | 〇人 | 四人 | 七人 | 一一人 | 一三人 | 一九人 | 五四人 |
学級数 | ― | 一 | 一 | 一 | 一 | 一 | 五学級 | |
檜町小学校 | 児童数 | 四八人 | 五二人 | 四三人 | 五四人 | 四九人 | 五五人 | 三〇一人 |
学級数 | 二 | 二 | 二 | 二 | 二 | 二 | 一二学級 |
平成四年五月一日現在 学校基本調査 |
新小学校の校名及び教育環境整備にかかわる問題については、すでに設置されている「赤坂地区の教育環境を考える協議会」において協議してきた。
とくに、新校の校名案については左記の「協議会」として「赤坂小学校」及び「新赤坂小学校」の二案にまとめ教育委員会あて報告があった。
また、新小学校の教育環境の整備にかかわる諸問題については、引き続き「協議会」で協議することとなった。
教育委員会は、「協議会」の協議結果を尊重し慎重に検討した結果、校名を「赤坂小学校」とすることに決定した。新生「赤坂小学校」は、地域の象徴としての「赤坂」の名称に根ざすものであるが、この際、従前の赤坂小学校とは異なることを明記しておく。
教育委員会は、新しい小学校が赤坂地域の新たなコミュニティーの核となることを願い、二十一世紀を展望した「赤坂地区に存置しつづける小学校」として位置づけ、そのための条件整備に一層努めていく必要がある。
4 氷川幼稚園の廃止について
氷川幼稚園は平成四年五月一日現在、年少園児三名、年長園児八名という極端に小規模な幼稚園であり、地域の年少人口の動向を考慮すると園児数の増加は見込みがたい。
これらのことから、平成五年三月三十一日をもって廃止することとした。
幼児人口の減少に比しても区立幼稚園児の減少は著しく、幼稚園教育のあり方及び適正配置については区全体の問題として、三歳児保育の実施や通園バスの運行等を含め、将来に向けて検討していかなければならない課題である。
5 学校跡地について〔略〕
(『港区教育委員会会議録』平四)
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議案第十三号 東京都港区立氷川及び檜町小学校の廃止並びに赤坂小学校の設置について
(原案)
東京都港区立氷川及び檜町小学校の廃止について
東京都港区立氷川及び檜町小学校を左記のとおり廃止する。
記
一、名称 東京都港区立氷川小学校
一、位置 東京都港区赤坂六丁目六番十四号
一、廃止時期 平成五年三月三十一日
一、名称 東京都港区立檜町小学校
一、位置 東京都港区赤坂八丁目十三番二十九号
一、廃止時期 平成五年三月三十一日
平成四年八月三十一日
東京都港区教育委員会
東京都港区立赤坂小学校を左記のとおり設置する。
記
一、名称 東京都港区立赤坂小学校
一、位置 東京都港区赤坂八丁目十三番二十九号
一、開設時期 平成五年四月一日
平成四年八月三十一日
東京都港区教育委員会
(『港区教育委員会会議録』平四)
四港教学第一〇一八号
平成五年三月一日
東京都教育委員会 殿
東京都港区教育委員会
公立学校の廃止について(届出)
このことについて、下記のとおり港区立氷川小学校、港区立檜町小学校を廃止しますので、学校教育法施行令第二十五条一号の規定により、関係書類を添えてお届けいたします。
記
一 事由 港区は、都心区としての特性から業務地化が進行し、定住人口とりわけ年少人口の減少が著し
い。また、その地域的偏在も顕著になっている。
港区教育委員会は地域、保護者及び学校関係者との話し合いの中で平成三年八月十三日に、「赤
坂地区における年少人口の将来動向を踏まえ氷川、赤坂及び檜町の三小学校を可能な限り早期に統
合し、この地区の核となる小学校を新設する。新たに設置する小学校は、現檜町小学校の校舎を活
用する。」との基本的方向づけを決定した。
このことに基づき、平成四年三月三十一日をもって港区立赤坂小学校を廃止し、港区立檜町小学
校に統合するとともに、話し合いを継続し、平成四年八月三十一日に、港区立氷川小学校と港区立
檜町小学校を平成五年三月三十一日をもって廃止し、新たに赤坂小学校を設置することを決定した。
二 名称 (1) 東京都港区立氷川小学校
(2) 東京都港区立檜町小学校
三 所在地 (1) 東京都港区赤坂六丁目六番十四号
(2) 東京都港区赤坂八丁目十三番二十九号
四 廃止の時期 平成五年三月三十一日
五 児童の処置 現在、港区立氷川小学校、港区立檜町小学校に在籍の全児童は、現在の港区立檜町小学校の
校舎を活用して新たに設置する港区立赤坂小学校(東京都港区赤坂八丁目十三番二十九号)に
平成五年四月一日をもって就学する。
六 添付資料 (1) 東京都港区教育委員会議決謄本(廃止)
(2) 東京都港区議会議決謄本(廃止)
(3) 東京都港区教育委員会議決謄本(通学区域)
(4) 通学区域図
七 その他 平成五年度港区立赤坂小学校の児童数予測[略]
(港区教育委員会資料 平五)