① 新しい校舎・屋内運動場・屋内プール・多目的小講堂では、校地と周辺の状況及び法規制等への対応の結果として地下の建築物が大きな割合を占め、比較的大きな空間である体育室・プール室・多目的小講堂と校舎部分とが一体的に構成されています。
このような建築物については、高い総合的耐久性を持つ堅固な構造体として計画・設計することが重要であり、今後の計画・設計において検討することが望まれます。
② 運動場の面積を確保し、校地と周辺の状況及び法規制に対応しつつ校地の計画上の可能性を追求した帰結として、校舎については2つの棟を直交させ、2方向に対して基本スパンを8.4mとします。また校舎部分と一体化し比較的大きな空間を含む屋内プール及び多目的小講堂に対しては、8.4mから導かれる4.2mを想定します。
屋内運動場については、日影を従来よりも基本的に増大させないで必要な広さの体育室等を配置・計画するために、校舎等とは異なるスパンを想定します。
③ 階高は3.6mを基本としますが、日影規制への対応又は日影の抑制のために、多くの外周部で階高(軒高)を3.0m~3.5m程度とし、十分な高さのパラペットを伴う陸屋根とすることができないため、勾配がある屋根とします。
④ 構造形式は鉄筋コンクリート及び鉄骨鉄筋コンクリート・ラーメン構造とし、地震力に対して耐震壁をバランスよく配置します。教室群や校務諸室群のまとまりのなかで将来の平面(間取り)変更に対しある程度の可能性を持たせるために、耐震壁の配置について今後の計画・設計において検討・調整することが必要です。
体育室の屋根について、軒先を水平化し成を小さくするため面トラスを検討します。
また、屋内プール及び多目的小講堂の屋根梁については、梁成をなるべく小さくするために、PSコンクリート梁とすることを検討します。
⑤ 制震構造については、地震時における建築部位の損傷の抑制・軽減、居住安全性の向上、校具・備品・機器の損傷の抑制・軽減に有効な方法として有効であり、とり入れるかどうかを、基本設計の初期段階に解析に基づいて検討することが望まれます。
この検討に当たっては、次の諸点について評価することが大切です。
a 将来の間仕切り変更の可能性に対する制約。
b 屋内各空間の利用性に対する影響。(特に、教室の利用性を低下させない観点からの評価は重要です。)
c 屋内各空間の日常の安全性。(衝突防止、生徒の落下防止など。)
d 外観への影響。
e 工事費、工期への影響。
なお免震構造は、地震による建築各部位の損傷を抑制・軽減し、地震時の居住安全性の向上、校具・備品・機器の損傷の抑制・軽減に有効ですが、免震層の設定が困難なため、想定していません。
[理由]
a 基礎免震を考える場合
イ) ドライエリヤ擁壁の校地北西側の隣地境界線に対するクリヤランス確保のためにドライエリヤの奥行きを小さくする、あるいは校舎を運動場側に寄せることが必要となり、いずれも厳しい敷地条件のもとでは困難です。
北東側の狭隘部においてもクリヤランスを設けることが困難です。
ロ) クリヤランス沿いに地震時に危険な挙動をする可能性を否定できない部位が生じることに対し、人が立ち入らないゾーンを設ける余裕がありません。
ハ) イ、ロの問題に対応するためには、施設又は運動場・グリーン、あるいは、これらのすべてについて規模の縮小が必要となります。
ニ) 屋内プール及び多目的小講堂の外壁の外側に、クリヤランス(免震ピット)をとりながら擁壁を設けることが必要となりますが、運動場の下部にあるため成立しにくく、運動場表層の連続性を阻害します。
b 中間層免震を考える場合
イ) 中間層への免震層設定は建築物の高さを増します。日影規制に対応し周辺への日影の影響を現在よりも基本的に増加させないためには、既に外周部で階高(軒高)を3.0m~3.5m程度としている基本計画の建築物の高さを増すことは考えられません。
ロ) エレベーターシャフトの周囲にクリヤランスを設けるためのスペースが必要となります。このことと地震時の安全のためにデッドスペースが生じ、多くの部屋について規模の確保ができなくなり、廊下幅の縮小も避けられません。
⑥ 比較的長大な建築物と考えられますが、エキスパンションジョイントで起こりうる外壁等(特に地下部分の)の漏水、低地部分での異常出水時の水の浸入などを未然に防止するため、不同沈下防止の徹底や異なる形態の空間の接合部補強などにより、構造的なエキスパンションジョイントがない一体的な建築物とすることが望まれます。
⑦ 校舎のテラス部分に、植込を設けるための加重を設計荷重条件として考慮します。
[木構造の可能性について]
校舎、屋内運動場、屋内プール、多目的小講堂を合わせた延べ面積が2,000m2以上、階数3以上のため、建築基準法により耐火建築物でなければなりません。
もしも、例えば屋内運動場又は多目的小講堂を地上に床面積2,000m2未満、階数2以下で計画することができて、校舎等との関係について法令に定められる条件を満足することができれば木構造とすることができますが、このような計画は成立しませんので、木構造の施設は建築基準法により不可能です。