児童の安全を第一に考え、児童が安心して学習、生活できる場を構築します。
震災時の区民避難所としての役割を担うため、新設校舎の安全性を合理的に追及するとともに、敷地条件、地盤条件に留意した構造計画を行い、経済的かつ耐久性に優れた建物を計画します。
将来的な施設用途の変化や児童数の変化に柔軟に対応できるように、構造計画上支障のない範囲でロングスパンを採用し、柔軟性、融通性を確保します。
階段室やトイレの横など、将来にわたり間仕切り変更がない部分に耐力要素をバランスよく配置し、地震力を負担させる合理的な構造計画とします。
構造種別、架構形式は要求される機能を満足し、建物の高さ、規模、形状、用途等に対応した最も適切な方式を採用します。
隣接するみなとパーク芝浦との耐震性能の連続性を考慮して計画します。
(2)要求性能
計画建物の耐震安全性の区分は、「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」による耐震安全性の分類に準拠して設定します。
小学校校舎は、不特定多数のものが利用する公共施設に該当するため、耐震性能の分類は構造体Ⅱ類以上、耐震安全性の分類は、建築非構造部材A類の性能が求められます。
隣接するみなとパーク芝浦と同様に新設校舎の体育館等を避難所として利用します。新設校舎と災害対策本部代替機能を持つみなとパーク芝浦は、災害時に地域の防災拠点として連携を図るため、みなとパーク芝浦と同様に耐震性能の分類をⅠ類として計画します。

(3)地震活動度
東京都に大きな被害を及ぼす地震として、主に関東地震、東海地震などの海溝型の地震と立川断層等を起源とした陸域の浅い地震があります。
国立研究開発法人防災科学研究所によると、計画地において今後30年間で震度6強以上の地震に見舞われる確率は、27.5%と予測されています。(今後50年では39%以上。)

東京都の活断層

50年間に一定の揺れに見舞われる計測震度の領域図
(国立研究開発法人防災科学研究所「J-SHIS」)
東京都では、平成18年5月に公表した「首都直下地震による東京都の被害想定」を全面的に見直し、平成24年4月に公表しました。
計画地においては、下図の通り、震度5弱~6強が想定されております。

想定震度分布図
また、平成25年5月に「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定」を公表しています。その報告書に示された想定震度分布図を示します。
計画地においては、震度5強が想定されております。

南海トラフ巨大地震による東京の被害想定
平成28年6月24日国住指第1111号「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動対策について(技術的助言)」により、平成29年4月1日以降に申請する性能評価に基づき超高層建築物等を新築する際の大臣認定では長周期地震動の検討が必要になります。
計画地は長周期地震動の対象エリアとなっているため、高さが60mを超える建築物及び地上4階建て以上の免震建築物の場合は、長周期地震に対する検討が必要になります。

長周期地震動対策の対象エリア
※緑色で着色されたエリアが対象となります。
(4)耐震計画について
本計画は敷地面積約2,680m2と他の学校に比べ狭小な敷地であるため、建物規模は8階建となり、6階プール、7階体育館、屋上校庭と上階に大きな荷重を支える構造となります。耐震構造を採用する場合はSRC造か高強度コンクリートや通常より強度の高い鉄筋を使用するRC造となります。
そのため、本計画は一般的な耐震構造の建物に比べ鉄筋及びコンクリート打設量が多くなり、また、柱・梁の断面が大きくなり、教室等の室内空間に影響がでます。
免震構造を採用することにより柱・梁の断面が標準的なサイズとなり、地震力も大幅に低減することができます。コスト面は本計画で検討している耐震構造と同等程度になります。

(5)構造種別の考え方
将来的な施設用途の変化や児童数の変化に柔軟に対応できるように、1~5階の教室群等は13m程度のロングスパン、体育館・プールは23m程度の大空間で計画します。
学校施設としてロングスパンの適応性、振動・遮音性能を考慮し、PC造で検討します。
また、みなとパーク芝浦や近隣住民への施工時の騒音、振動や工期短縮、品質向上を考慮した計画を検討します。
(6)施工上の留意事項
東京モノレールの橋脚付近で掘削を行うため、近接協議が必要になります。近接協議の内容を確実に施工計画に反映し、施工する必要があります。
新設校舎は、北側に東京モノレールとJR架線があり、東側はみなとパーク芝浦に隣接します。工事中はPC部材や鉄骨等の重量物の揚重が必要となることから、揚重機選定、躯体建て方に当たり、十分な配慮が必要です。
工事中には大型部材を搬入するため、トレーラー等の大型車両を使用します。そのため、施工時の安全性を十分に考慮する必要があり、工事車両搬入ルートと利用者動線の交差部等は交通誘導員を配置する等の適切な配慮が必要となります。
(7)工事施工計画(案)
本計画は東京モノレール及びみなとパーク芝浦に囲まれた敷地での施工となります。工事作業エリアが限定的となる為、エネルギー棟北側の外構部分を工事範囲として利用することで、みなとパーク芝浦、愛育病院、芝浦公園の利用者の安全を確保し、近隣の方々への影響を最小限にした工事施工計画とします。

(8)地盤概要と基礎計画
港区が平成21年に実施した田町駅東口北地区公共公益施設の地盤調査報告書によると、現状地盤レベルより表層から20m程度までは埋め土、有楽町層粘土層で構成されており、軟弱な地盤が堆積しています。
表層から22~23m付近以深は硬質な固結シルト層となっており、本建物の支持層となります。
基礎はこの深さを支持層とした杭基礎として計画します。表層が液状化する可能性があるため、場所打ち鋼管コンクリート杭などの耐震性の高い杭の採用が必要となります。

地質層表

推定地層断面図