昭和六十年九月十四日
港区教育委員会殿
港区立学校適正規模等調査会
会 長 高 倉 翔
区立学校における適正規模等について(中間報告)
港区立学校適正規模等調査会は、本年四月十八日、港区教育委員会から、区立学校における望ましい集団規模による充実した学校教育の実現に資するため、次の事項について調査・検討を依頼された。
一 港区立学校における適正規模について
二 港区立学校の通学区域について
本調査会は、通学区域を考慮しつつ、まず港区立学校における適正規模について六回の調査会を開催して基本的、基礎的問題から調査・検討を重ねてきた。
この間、分科会を設置し、第一分科会は幼稚園問題、第二分科会は小・中学校問題について、延八回の分科会を開催して広範囲にわたる資料の分析を行ってきた。
調査会として、とりあえず調査・検討したものについて集約し、下記のとおり報告する。
記
一 本年度の区立学校の現状をみると、幼稚園(現在二十五園)については、四歳児の園児数が定数を満たして
いない園は二十一園あり、なかでも十名未満の園が四園ある。
小学校(現在二十七校)については、普通学級が各学年とも単学級の学校は八校を数え、そのなかでも学年
の児童数が二十名以下の学校が四校ある。一方、十九学級以上の学校は五校である。
中学校(現在十一校)については、八学級以下の学校が一校あり、十九学級以上の学校も一校ある。
二 港区における幼児、児童、生徒数については減少傾向にあり、地域によっては、特に幼児、児童数の減少
が顕著である。
その地域においては、四歳児未満の幼児数をみても、今後増加は見込みがたい状況にある。さらに小学校
については、近い将来、制度上複式学級編制にせざるを得ない状況も考えられる。
三 幼稚園における適正規模については、なお調査・検討をすべきであるが、「幼児数が著しく少なく、かつ
増加が見込みがたい園については、指導上の集団効果や他の園との均衡等からみて、当面なんらかの適切な
対応策を講ずることが望ましいと」考える。
四 区立学校の適正規模については、文献研究・実態調査等を行ってきたが、今後も教育効果、施設、通学区
域及び幼・小併設等との関連を考え、引き続き慎重に調査・検討する。
○ 陳 情 書
陳情の趣旨
桜田幼稚園の昭和六十二年度の園児募集をして下さい。
(昭和六十二年度、四歳児)
陳情の理由
桜田幼稚園の子ども達は、歴史ある桜田小学校内に併設された環境の中で、小規模園の良さを生かした教育を受けています。親は先生方の意欲的な御指導に満足して、安心して、子どもをあずけています。そのため
○子ども達は、先生とのあたたかいふれ合いの中で、一人ひとりの可能性を伸ばし、元気に明るく育っています。
○ビルに囲まれた商業地域にもかかわらず、広々とした環境の中で、伸び伸びと遊ぶことができます。
○少人数のため、親同士、親と先生の交流が密にできます。
○小学生からの刺激を受け、遊びが盛り上ります。又、兄弟で同じ小学校、幼稚園に通うことができます。
○新橋駅の近くにあり、交通が便利なため、区民であれば、桜田幼稚園周辺に勤める親は、地域外からも親子
で安心して通園できます。
ところが「少人数が問題」というだけの理由で、親の気持ちも考えず、来春の募集を停止しようとしています。これから入園しようとしている親子は来年の募集をこころまちにしています。
幼稚園の募集停止は、新橋の今後の発展に大きな問題として響きます事は必至と思われます。地域にとり、桜田の生活は、やがて成人し、町作りの中心になる人々を作り育てる事と思います。
以上のことから、桜田幼稚園の来年の募集をして下さいますように陳情いたします。
桜田幼稚園を守る会
代表 稲 葉 啓 子
萱 森 春 枝
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拝 啓
残暑厳しい折、ご健勝のことと存じます。
平素は、港区の教育行政に特段のご高配をいただき厚くお礼申しあげます。
さて、七月五日に提出されました「桜田幼稚園の昭和六十二年度園児募集」の陳情についてご回答いたします。
ご案内のとおり教育委員会は、昭和五十九年四月以来「港区における生涯教育の施策の方向づけについて」協議・検討をしてきております。
その一環として、昭和六十年四月 区立学校における望ましい集団規模による充実した学校教育の実現を図るため「港区立学校適正規模等調査会」を設置し、適正規模等についての調査・検討を依頼しました。
昭和六十年九月に当調査会から「幼児数が著しく少なく、かつ増加が見込みがたい園については、指導上の集団効果や他の園との均衡からみて、当面なんらかの適切な対応策を講ずることが望ましい。」との中間報告が出されました。
教育委員会は、この報告をふまえ幼稚園の対応策について、様々な角度から協議しました。
その結果、昭和六十年十月二十二日開催の教育委員会(第十二回臨時会)において、昭和六十一年度 区立幼稚園の四歳児募集にあたり、望ましい幼稚園の教育経営かの観点から、桜田、鞆絵、竹芝の三幼稚園について募集停止をすることを基本的方向として、保護者および関係者の理解と協力を得るべく対応することが決定されました。
この基本的方向に対し、保護者および関係者から、募集時期を目前にして突然の決定であるとの意見等が出されましたので、このことも十分勘案し、昭和六十年十一月二十六日開催の教育委員会(第十三回臨時会)において、昭和六十一年度の四歳児の募集停止を一年先送りし、昭和六十二年度において四歳児の募集停止を行うことが決定されました。
また、昭和六十一年三月二十八日には、上記調査会の最終報告が出され、区立幼稚園については「一学級の規模は四・五歳児とも各々二十五~三十人とし、各歳ごとに少なくとも二学級編成が望ましい。
各歳一学級園を存置する場合でも、幼児数が著しく少なく、かつ増加が見込みがたい園については、今後もなんらかの対応策を講ずることが望まれる。」と、重ねて提言がなされております。
何とぞ、これらの経過等をご賢察のうえ、昭和六十二年度四歳児募集停止につきまして、ご理解とご協力を賜わりたくお願いいたします。
敬 具
昭和六十一年八月二十二日
陳情代表者
稲葉 啓子殿
東京都港区教育委員会
教育長 川 口 正 司
(桜田幼稚園資料)
【付記】港区立学校適正規模審査会は、その中間報告の中で、幼稚園における適正規模についてふれている。そのことを受け教育委員会は、特に減少傾向にあると判断した桜田、鞆絵、竹芝の三園に募集停止を打出した。各園の地域はこの措置に対して動揺した。特に地元の願いが強かった桜田幼稚園では陳情書を出して存続を訴えたが、しかし昭和六十二年度募集停止、同六十三年度より休園、その後平成二年度の併設小学校の閉校に伴い閉園となった。